[サイプラススペシャル]140 見えない部分で活躍する工業用ファスナー 自動車にも欠かせない連結部品

長野県松本市

トピーファスナー工業

ファスナーというと、衣類やかばんに使われているジッパーを連想する方が多いだろう。
しかし、トピーファスナー工業が作っているのは「工業用ファスナー」と呼ばれる部品。自動車や二輪車などのパーツを締結する、工業製品に欠かせない部品だ。

車1台に約100種類も使われる部品

工業用ファスナーとは

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工業用ファスナーは、工業製品のパーツを締め付けたり繋ぎとめたりする部品。ファスナーの語源は、物を締結するという意味を持つ英語「ファスン」から来ている。工具として使われるボルトやナットなども工業用ファスナーの一種。金属板を打ち抜き曲げて加工しただけのシンプルな構造だが、部品としての機能を持つことで、特に車や家電には必要不可欠だ。

自動車の締結に欠かせない部品

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トピーファスナー工業の主力製品は、自動車用のファスナー。自動車や二輪車などの乗り物は振動するため、通常の部品では繋ぎ止めても徐々に緩んできてしまう。この振動によって緩まないのが金属バネの構造を持つ工業用ファスナーの特徴で、自動車にはエンジン・ミッション・ブレーキから内装・外装まで1台におよそ100個の工業用ファスナーが使われている。


多種多様な分野で幅広く活用

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使用されているのは自動車だけではない。パソコンではハードディスクを抑える用途のほか、プリント基板を補強する金具としても使われている。冷蔵庫などの家電製品にも使用されていて、見えない所で私たちの生活を支えている。

様々な用途に使われるファスナーを製造

シンプルなものを同条件で大量生産

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トピーファスナー工業の作るファスナーの多くは、特殊鋼で出来た鉄板をプレスで打ち抜いて曲げたり加工したりしたものに熱処理を施してバネにしたもの。金型の設計・製造からプレスで量産して検品するまでの工程を一貫して自社で行なっている。これによって同じ製品を同じ条件で大量に生産することで、競争力を高めている。

取引先の需要を見据えた生産計画

トピーファスナー工業の主要な取引先は国内外の自動車メーカー。自動車メーカーとの取引は、納期が決められているうえ発注から納入までの期間が短いケースが多い。つまりは相手先の需要を予測して生産しなければならないため、リスクも抱えている。取引には常に先を見据えた対応が求められているのだ。

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三次元構造のファスナーも製造

鉄板などの平面的なものだけではなく、立体的な工業用ファスナーも製造している。メタル・インジェクション・モールディング(通称MIM)と呼ばれる特殊加工は、金属を樹脂のように成型し、焼き固めるという特殊な製造方法だ。平面加工では難しい複雑な形状の部品を作ることが可能だ。光通信や医療器具などの用途に使われている。

松本に拠点を置くグローバル企業

グループ内で重要なポジションを占める

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トピーファスナー工業は、鋼材や自動車用ホイールを製造しているトピー工業のグループ企業で、国内外で338名の従業員が働いている。昭和31年、「ザンバー精鋼」というカミソリの刃を作る会社として東京都大田区で創業した。その後、アメリカの大手自動車メーカー向けの自動車用ファスナー工場として昭和49年に作られたのが現在本社を置く松本工場だ。当初は千葉県野田市に国内向けの工場があったが、昭和52年に国内の生産拠点を松本市に集約し、昭和55年に現在の社名となった。


国内外で工場を操業

現在国内は群馬県・海外はアメリカとタイにも工場を構えているが、主力はあくまでも本社のある松本工場だ。またベトナムに新工場を建設することも既に決まっている。ベトナム工場には、現在タイ工場で製造している二輪車向けの部品製造をシフトするほか、中国華南経済圏の工業地帯向けの自動車用部品の製造を計画するなど、グローバルな戦略を展開している。

競合他社との競争を勝ち抜く

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社長の太田盛夫氏(59歳)は、地元松本の出身。27年前トピー工業から赴任して、今年社長に就任した。太田社長のスローガンは「グローバル競争で勝ち残ること」。採用に関しても、海外展開にも耐えられるメンタル面でタフな人材を求めているという。シンプルな構造の製品ゆえ他社との競合が激しい業界だが、取引先にとってなくてはならない企業になることを常に目標としている。

【取材日:2011年09月14日】

企業データ

トピーファスナー工業株式会社
長野県松本市笹賀5652-36 TEL:0263-25-6211
http://www.topy-fas.co.jp/