長野県御代田町
シチズンファインテックミヨタ
シチズンファインテックミヨタは、シチズングループの一角を担うものづくり企業。シチズンというと「時計」をイメージする方が多いかもしれないが、シチズンファインテックミヨタが製造しているのは水晶などを使ったデバイス(部品)だ。中国にも2ヶ所の生産拠点を持っているが、国内の事業所は全て長野県内に構える地域に密着した企業だ。
「部品加工から製品化までを一貫して出来る体制を持っていることが、当社の最大の強み」と語るのは、昨年社長に就任した椛田茂氏(60歳)。シチズンファインテックミヨタは、2008年に合併によって新たに生まれ変わった企業だ。前身は部品加工を得意とするシチズンファインテックと、製品化と組立を主力とするシチズンミヨタ。一つの会社になることによって、それぞれの得意分野を生かせる体制が整ったことが大きなメリットになっている。
シチズンミヨタの創業は1959年、現在本社のある御代田町で「御代田精密株式会社」として設立された。創業当初は腕時計の組立が主要事業。創業の地である御代田町を中心に半世紀を越える歴史を刻んできた。1976年から、クオーツ時計の心臓部となる水晶デバイスの製造を開始。それ以降は徐々に時計組立から水晶を中心とするデバイス事業へと転換していった。一方シチズンファインテックの創業は1963年、軸受石の生産会社「シメオ精密株式会社」として設立された。現在のシチズンファインテックミヨタは、シチズングループ内における水晶・液晶などの非時計分野を担う会社となっている。
現在は水晶以外に電子デバイスや、光通信関係に使用されるセラミック製品なども生産している。従来の液晶に比べて3倍の解像度を得られる強誘電液晶のマイクロディスプレイのシェアは、世界トップクラスだ。業務用カメラのビューファインダーの世界的メーカーという一面も持っている。最近では、排ガス規制や燃費向上に大きく貢献する燃焼圧センサの開発も進めている。
水晶(クオーツ)が時計に活用され始めたのは、およそ半世紀前から。最大の特性は、電圧を加えることにより機械的な振動が発生し、電気信号に変換することで、正確な周波数を生み出すことだ。その正確な周波数を利用した水晶デバイスはクオーツ時計は勿論、デジタルカメラやビデオカメラなどの家電や携帯電話などにも使用されている。現在はパソコンやスマートフォンには必ず数個は入っている部品だ。
シチズンファインテックミヨタの製造する水晶デバイスは、我々の目に見えない部分で様々な製品に活用されている。「産業の米」と呼ばれる半導体に対して、水晶デバイスは「産業の塩」と例えられる。これがないと製品が一切動かなくなってしまうという重要な部品。小さいが、技術の粋が詰め込まれている。
パソコンや携帯電話などの新たな分野の誕生によって、水晶デバイスの小型化も進められてきた。製品の容積は製造開始当時からおよそ15分の1、中の水晶片はおよそ7分の1まで小さくなった。製造方法も機械的に削る機械加工から、半導体集積回路の製造と同様のフォトリソ加工と呼ばれる化学加工に変わってきた。それによりミクロン精度からサブミクロン精度へと、従来よりも一桁高い加工精度を実現した。
シチズンファインテックミヨタは、本社をはじめとする国内の3つの拠点を全て長野県の東信地域に構えている。御代田町には本社とやまゆり事業所、東御市には北御牧事業所があり、そこで働く750名の社員の殆どが地元出身だ。1995年に開設した北御牧事業所では、地元の天然記念物であるオオルリシジミの保護活動も行っている。
中国にも2ヶ所の生産拠点を持つグローバル企業でもあるシチズンファインテックミヨタ。国内の生産拠点と連携をとりながら、品質・技術面で互いにフォローしながら生産活動を行っている。世界市場の潮流をしっかりと受け止めて、信州の地でそれに対応するという方向性を明確に打ち出している。
「今まで培った技術を磨き上げて、更に進化させていきたい」と語る椛田社長。幅広い分野で製造を行う半面、一つ一つが散漫にならないよう努力することを常に心がけているという。目指すのは、次の半世紀を見据えた「100年企業」として在り続けること。継続性を第一に市場に対応していくことで、一歩一歩着実な発展を目指している。
シチズンファインテックミヨタ株式会社
長野県北佐久郡御代田町大字御代田4107-5 TEL.0267-32-3232
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