長野県上田市
上田日本無線
上田日本無線のコア技術は、車載無線や近距離無線などに使われる無線通信技術と、医療分野や魚群探知機などで活躍する超音波技術。現在この二本柱を融合した製品開発を積極的に進めている。その融合を可能にしているのは、創業以来長年に渡って掲げてきた開発設計も含めた「一貫生産」への取り組みだ。
現在上田日本無線では、日本無線グループを含めた自社製品とOEM供給製品を合わせておよそ2000種類の製品を製造している。この多品種少ロット生産を支えるのは、約200名の設計開発スタッフ。電気(回路)設計部門と機械設計部門及びソフトウェア設計部門のメンバーが、常に新しい製品を生み出す努力を続けている。
現在積極的な市場開拓を図っているのが、この写真に写っている昨年暮れに発売したMPPTソーラー電源装置。ソーラーパネルで発電した電力を高い効率でバッテリーに充電して電源を供給する製品で、電源がない所でも無線によって機器の遠隔操作が可能だ。上田日本無線ではダムや河川の監視制御システムも製造しており、その分野にも活用が期待されている。昨年から続く省エネ・節電需要にも応える製品で、今後事業の柱に育てる方針だ。
省エネ部門と並んで力を入れているのが、市場として安定している医療分野。従来あるエコーなどの超音波診断画像を、自社の無線通信技術を使ってワイヤレスで遠隔にあるモニターに映し出すシステムだ。自社の持つ無線通信技術と超音波技術を融合させたもので、上田日本無線ならではの製品と言えるだろう。
上田日本無線のものづくりの最大の特徴が、基礎工作から組立・調整・検査までを一貫して自社でおこなう生産体制を持っていることだ。組立ベースの切削・板金加工も、本社工場でおこなっている。超音波デバイス工場では、超音波製品に内蔵されている円形の圧電セラミックの原料入手から固形化まで自社でおこなうという徹底ぶりだ。電子回路基板製造も、熟練の従業員が一つ一つ黙々とハンダ付けをして仕上げていく。
無線通信技術を使った製品として、我々の最も身近にあるのはPHSや車載用無線機だが、上田日本無線の製品群には普段目にする機会のない製品も多い。小型・中型の船舶レーダーや、またこの工場で製造されている最先端の航空機用無線機は、マイナス55℃から70℃までという過酷な環境に耐えられるものだ。超音波技術が使われているのは、漁船の魚群探知機、医療用の超音波診断装置・・・と、その製品数は数えきれないほどだ。生産台数こそ多くはないが、ここでしか出来ないものだ。
無線技術は、専門分野だけでなく一般向けにも幅広く活用されている。こちらの製品は、大手玩具メーカーの依頼で開発したもの。一見普通のペンライトに見えるが、無線による遠隔操作で本体に内蔵したコンピューターに指示を出すことで、様々な点滅やカラーリングを可能にしている次世代型の製品だ。
「全てを自社で作るということで、お客様に安心して買っていただける。スピードと小回りがきくということも、一貫生産の大きなメリット。」と語るのは、3年前社長に就任した降旗次男氏(64歳)。入社以来一貫して製造現場を歩んできた、まさに叩き上げのリーダーだ。無線通信技術と超音波技術のコラボレーションや、省エネ環境部門への積極的な参入も降旗社長が取り組みを始めたものだ。
創業は昭和17年。当時の上田市長が、地元の雇用創出のために誘致したことがきっかけだ。無線通信分野と超音波分野の2つを柱に、医療分野や環境分野にも発展してきた。地元出身でもある降旗社長は、「大量生産なら海外進出も考えられるが、当社は少ロットの生産品が多いので移転のメリットが少ない。グローバル化が騒がれているが、市場としては海外を見据えつつ地域に根ざした企業活動を続けていきたい。」と語る。
一貫生産へのこだわりは、製品だけではない。本社屋上や工場フロアの床壁塗装も社員たちでおこなうという徹底ぶりだ。会社の正面入り口にあるこの看板も、一部を除いて全て社員たちで作り上げた。現場にこだわる降旗社長の精神は、間違いなく次の世代を担う若手社員たちにも浸透している。
上田日本無線株式会社
長野県上田市踏入2丁目10番19号 TEL:0268-26-2112
http://www.ujrc.co.jp/