[サイプラススペシャル]167 機能性セラミックスで様々な製品を開発 「焼き鳥」の遠赤外線が起業のヒント

長野県千曲市

長野セラミックス

様々な自然鉱石や酸化金属をブレンドして作られる機能性セラミックス。ボール状に焼き固められ、遠赤外線やマイナスイオンを発生する物質だ。この機能性セラミックスを活用した製品を開発しているのが長野セラミックス。会社設立当初は社長自らが試作品の開発に取り組み、様々な紆余曲折や試行錯誤を経て高機能セラミックスを開発してきた。現在の主力製品は岩盤浴マットや人工温泉装置で、海外への市場拡大も目指している。

遠赤外線との出会いからセラミックスにのめりこむ

機能性セラミックスの可能性は「無限大」

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こう語るのは、社長の佐藤義雄さん(69歳)。現在扱う機能性セラミックスは数百種類にも及ぶ。昭和46年の創業当時は「キング溶接工業」という溶接会社だったが、平成2年に現在の社名に変更し本格的に機能性セラミックス製造に取り組むようになった。現在は事業の柱となっている機能性セラミックスだが、その開発のきっかけは意外なものだった。

きっかけは焼き鳥

昭和63年、当時経営していた溶接会社の先行きに不安を感じていた佐藤社長は、新たな事業として遠赤外線に注目していた。ただ当時その遠赤外線を発生するセラミックスはほとんど普及していなかった。そんな時近所の焼き鳥屋でビールを飲んでいたところ、汗だくで焼き鳥を焼くご主人の姿が目に入った。「低温で肉を焼ける遠赤外線技術があればこんな暑い思いをせずに済むのに」と考えた社長は、その場で遠赤外線を発生させるセラミックス開発を決断する。

子供の頃のストーブからひらめいた「酸化鉄」

まず佐藤社長が取り組んだのが、ステンレス板にパウダー状の酸化物質を溶射したセラミックスプレートづくり。本業の溶接が終わった後毎晩工場で実験を続けたが、当初は全く上手くいかなかった。そんなある日ふと思い出したのが、子供の頃学校で使っていただるまストーブ。「そうだ!鉄が酸化して熱を伝えるんだ」と確信した社長は、セラミックスに酸化鉄を加えてみた。

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苦心の末生み出したセラミックス製品

鶏肉の代用品は「パン」と「チーズ」

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確信はあったが、実際にセラミックスプレートで実験するとなると、本物の肉を使うことは費用がかさむので出来ない。そこで佐藤社長が代用品として使ったのが安価な食パンとチーズ。細かく切ったパンの上にチーズを乗せて、酸化物質の調合によるチーズの溶け方の違いを実験し続けた。続けること一年、待望の試作プレートが出来上がった。


工業試験場の「お墨付き」が自信に

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遠赤外線セラミックスの開発にあたっては、当初長野県工業試験場に相談したがなかなか取り合ってもらえなかったという。その後2回試作プレートで測定してもらったが、内容は芳しいものではなかった。その後1年間をかけて実験を繰り返し、「三度目の正直」と満を持して持ち込んだプレート。その遠赤外線放射率を測定したところ、指導員が驚くほど今までになかった高い数値を記録したのだ。この試作プレートを元にして、製品の開発が本格的にスタートした。

厨房器具から「水」へ

平成2年に「長野セラミックス」と社名を変えて、本格的に遠赤外線セラミックス分野に進出。記念すべき商品化第一号は、開発のきっかけとなった「自動焼き鳥機」だった。続いて一度に4枚のハンバーグをわずか3分で焼く「自動ハンバーグロボット」などの業務用厨房器具を次々に開発製造。しかし業務用機器は販路が限られているうえに、アフターメンテナンスにも手間がかかるという難点があった。そこで社長が次に興味を持ったのが、生活に最も身近な存在である「水」の機能性をセラミックスによって高めることだった。


人工温泉装置で海外展開を目指す

セラミックスの力で作られる温泉

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「温泉を家庭のお風呂で楽しめるようにしよう」と考えた佐藤社長が開発したのが、家庭用温浴器。遠赤外線、マイナスイオン、ゲルマニウムなどを発するセラミックスボールを組み合わせることによって、お風呂のお湯を温泉化する仕組みだ。この温浴器を更に進化発展させたものが、人工温泉装置。現在全国各地のホテル、入浴施設、リゾートマンションなどに導入されている。

セラミックスメーカーだからこそ可能な製品開発

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長野セラミックスの特徴は、セラミックスボールの調合から試作までを全て自社で行なえること。本社内の研究室で実験を繰り返し、より高い機能を持つセラミックスの研究開発に日夜取り組んでいる。最終的な製品の製造は契約メーカーに委託しているが、新製品の開発は社長をはじめとする20名の社員の発想から生み出される。ヒット商品となった岩盤浴マットは、遠赤外線・マイナスイオンを発生するセラミックスで出来ているうえに、折りたたんで持ち運ぶことも可能だ。

海外に積極的に打って出る

現在は首都圏を中心に全国に販売網を持つ長野セラミックスだが、次の目標は「海外」。現在特に力を入れているのは、中国への人工温泉装置の輸出だ。中国南西部にある南寧市から直接要請を受けて昨年秋に大型の温泉装置を2台設置したのをきっかけに、北京市内の販売店と代理店契約を結んで受注を始めている。「天然温泉の少ない中国では、人工温泉装置の需要は必ずある。」と意気込む佐藤社長。自作ではじめたセラミックス技術で、海外市場の獲得を目指す。

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【取材日:2012年3月22日】

企業データ

株式会社長野セラミックス
長野県千曲市大字内川25-1 TEL:026-261-4000
http://www.nagacera.com/