[サイプラススペシャル]193 地下工場で「超精密」プレス加工 ついに完成!その名も「夢工場」

長野県塩尻市

サイベックコーポレーション

「新しいものづくり」が生まれる工場
長野でつくった部品を「世界に売る」

 「ついに完成!夢工場!!」
 塩尻市のものづくり企業・サイベックコーポレーション。広さおよそ9000平方メートルの新工場が完成した。その名も“夢工場”。環境への配慮はもちろん、ここから「新しいものづくり」が生まれるという。
 いったいどんな秘密が隠されているのだろうか?今回は、今年9月に完成したばかりの最新鋭の工場を取材した。

夢工場は「ものづくりの楽園」

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「笑顔をつくる」ものづくりのパラダイス

 「目指したのは、ものづくりの楽園、ものづくりのパラダイスです。」さわやかに笑う平林巧造社長は33歳。新工場の構想を考えた張本人であり、サイベックコーポレーション全社員74人の「家族」を引っ張るリーダーだ。

 「日ごろから社員は『家族』だといっています。その家族が、ものづくりの楽しさを感じて仕事ができる工場、喜ばれる工場をつくりました。」


こだわりの「地下」工場

 新工場のいちばんの特徴は、地下。地表の社屋は一部で、工場の主要部分は地面の下にある。

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 「金型づくりは、温度変化が絶対あってはいけない。超精密金型部品をつくるために地下工場にした。」地下工場は、1年を通して気温23℃±0.3℃、湿度45%±0.5%をキープ。さらに、振動を抑制する特殊な基礎工事を施す徹底ぶりだ。


「喜ばれる」工場

 真っ白な床と壁を照らすのはLED照明。案内された地下工場は、まるで美術館のような雰囲気だ。

 「プレスや金型工場は、どうしても油で汚れる。白い床はNGなんですが、ここにもこだわりたかった。」あえて汚れが目立つ白い床は、きれいに使おうという意識が高まると、平林社長。働くスタッフだけでなく、「ここで作られた部品なら安心」とエンジンメーカーなどの顧客にも喜ばれる工場にしたい、そんなこだわりが随所にみられる。

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新しい価値をつくったプレス技術

「夢のような機械」を導入

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  地下工場の1室では、大型機器の最終調整が行われていた。マイクロバスほどの大きさの白い機体は、金属を削り金型をつくるための最新鋭のマシンだ。
 平林社長も「夢のような機械」と胸を張る。

 それもそのはず、このマシンはサイベックコーポレーションのオリジナル。「機械メーカーにさんざん注文を付け、これ以上の精度はでない、というくらいまでに仕上げた」という。1000分の1ミリの加工精度を誇り、3次元測定機並みの測定が可能...と、とにかくスゴイ機械なのだ。「これだけの機械が入れば、金型設計者も言い訳できませんよ」と、平林社長は笑う。

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「1000分の1ミリ」単位でプレス加工

 なぜそこまで金型作りにこだわるのか?
 エンジン部品など自動車関連部品加工のサイベックコーポレーションは、とくに「プレスでは不可能」といわれるほどの微細な加工を得意とする。

 自動車部品づくりの工程を少し説明しよう。「プレス加工」というのは、金属の板に型(かた)を押し付け打ち抜いて部品をつるく方法だ。パンチ穴の原理で、低コストで大量の部品を作るのに向いている。
 一方、金属素材を1000分の1ミリ単位で、しかも複雑な立体形状に仕上げるのは、時間もコストもかかる旋盤での切削加工が主流だった。

独自のプレス「CFP工法」

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 「高精度の部品を効率よく製造する」ことこそ、サイベックの企業価値だ。
 たとえば電気自動車に使われる減速ギアも、プレス加工で作り上げた。根幹となるのは、金属素材を熱することなく常温で、しかも複雑で精密な加工が可能な"CFP工法"(冷間鍛造順送プレス)と呼ばれる独自技術だ。

 ここで大事なのが、部品づくりのおおもと「金型」づくり。寸分の狂いなく金型をつくるために、温度管理まで徹底した新しい工場が必要だった。

世界で戦うための新工場

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「高い付加価値」を生む独自のプレス

 サイベックコーポレーションは毎期高い収益を残している。

 プレス部品の単価は10円以下のものが多いが、切削加工となればおよそ20倍のコストがかかる。「たとえば切削なら200円だった部品も、私たちのプレスなら100円で作れる。お客様にとってはコスト半減、私たちにとっては10倍の値段で売れる。」独自の技術が、高い付加価値(=利益)を生んでいる。


日本のものづくりのすばらしさを「世界へ発信」

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 「我々の夢は、日本のものづくりのすばらしさをどんどん世界へ発信していくこと。」部品だけでなく、クルマづくりそのものが人件費の安いタイや中国など海外に移る中、「この地(塩尻)でつくった部品を世界に売っていきたい。新工場完成で、世界と戦える精度とコストが可能になった」と平林社長も自信を示す。


「夢工場」から広がる可能性

 「大好きな仕事で家族が幸せになり、お客様・地域社会に貢献する」新工場の入口に掲げられたパネルのコメントだ。大きな「夢」の文字の周りに、全社員の名前が書かれている。

 最新鋭の「夢工場」から、新しいものづくりの可能性が広がっていく。

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【取材日:2012年09月26日】

企業データ

株式会社サイベックコーポレーション
長野県塩尻市広丘郷原南原1000-15 TEL:0263-51-1800
http://www.syvec.co.jp/