[サイプラススペシャル]195 工作機械部品と射出成形機製造から新たな分野へ 品質世界一の部品供給を目指す

長野県上田市

綿谷製作所

綿谷製作所は製造業が集中する上田市丸子地域で、昭和11年に創業。現在の主力製品は工作機械部品とプラスチックの射出成形機だ。自社ブランドこそ持たないものの、世界一質の高い部品供給メーカーになることを目標に、技術の頂に挑戦し続けている。現在の主力製品に加えて、環境や航空宇宙分野への進出も目指している。

1000分の2ミリ単位の高精度加工が可能

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丸子の地で70年以上の歴史を刻む

「自分で考えながら目標を持って進んでいくような社員を育てていきたい。そうすることによって、会社は強くなる。」と語るのは、3代目社長の綿谷憲一氏(57歳)。綿谷製作所は丸子工業という社名で戦前当時盛んだった製糸工場の機械整備会社として創業。第二次大戦終了後しばらくしてから、プラスチック加工機械や装置の製造をはじめ今日に至っている。


特定の取引先依存体質から脱却

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綿谷氏が社長に就任したのは8年前。就任直後の社長を待ち受けていたのは、ITバブルの崩壊だった。当時は特定の取引先の扱いがほとんどだったが、一部の企業との取引だけでは景気に大きく左右されることを痛感したという。その後は工作機械の部品部門を強化してきた。


他社に負けない精度を追求

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工作機械の部品製造は、精度が命。特に回転工具は、微細な加工が要求される。綿谷製作所では、1000分の2ミリ単位の微細な加工が出来ることが最大の強みだ。綿谷社長も「この部分は同業他社に対して差別化が出来ている。精度を高めることで、それが強みになっている。」と自信を覗かせる。

工作機械と射出成形機が主力製品

射出成型機は完成品として納品

プラスチックの射出成形機は、坂城町のメーカーからの委託を受けて製造している。協力工場として部品製造は勿論、組み立てて完成品になるまでを一貫して自社で行なっている。以前は油圧式が多かったが、現在は音も静かな電動式が主流だ。自社ブランドこそ持たないものの、完成品として納入を任されるまで取引先の信頼を勝ち得ている。

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精度の高い工作機械部品を製造

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綿谷社長が就任後力を入れてきた工作機械部品部門は、現在射出成形機を抜いて会社の売り上げの半分以上を占めるまでになった。ユニットとして、自動旋盤の主軸、タレット、ツーリング部分を製造している。この高い技術力をベースに、新たな分野への進出を模索している。


下請けでも「世界一」になる

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現在は自社ブランドを持たないが、ブランドメーカーの製品に欠かせない技術力を有している綿谷製作所。完成品として納入していることが、その何よりの裏付けだ。「取引先のメーカーが世界トップクラスの評価をされていることが、自分たちの評価にも繋がっている。ブランドを持たない下請けでも、世界一になれることを証明したい。」と社長は語る。

座右の銘を胸に新分野に挑む

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地域の若手育成にも取り組む

産業が盛んな丸子武石地域では、地元の24社が集まって若手経営者の育成などを目指す「次世代産業創出研究会」という組織を新たに立ち上げた。綿谷社長はこの会の会長として、地域連携の先頭に立っている。「若手経営者の不安を払拭して、自信を持たせたい。」と語る綿谷社長。地域と共同で開発した製品を、自社ブランドとして世に送り出す夢を追い求めている。


廃プラスチック油化還元装置を開発

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新たな分野として挑戦しているのが、環境省エネ分野。千曲市のメーカーと共同開発したのが、この「YUKAKI MS-50」だ。廃プラスチックを溶かして重油にする機械で、装置の組立と油を押し出す機械製造を担当した。この他信州産人工衛星の開発にも参加。信州大学工学部との産学官連携にも取り組んでいる。


技術には頂はない

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綿谷製作所の創業者・綿谷善蔵氏は、技術に対して相当なこだわりを持っていたという。それを言い表した言葉が、「峠には頂あれど、技術には技術の峰を知る人ぞなし」。会社の一室には、創業者直筆の書が飾られている。この言葉を胸に、社員一人一人がより高い技術の頂を目指して働いている。

【取材日:2012年10月11日】

企業データ

株式会社綿谷製作所
長野県上田市上丸子1082 TEL:0268-42-3114
http://www.wataya-co.jp/