長野県諏訪市
共進
通常は削り出しで加工する部品を、金属同士を組み合わせて圧力をかけて作る「カシメ接合」。強度も十分で、コストを従来の2分の1にした画期的な接合方法だ。このカシメ接合で特許を取得したのが、諏訪市にある共進。このカシメ接合のメリットを生かしつつ更に発展させた接合方法を、新たに就任した社長の下で開発している。
カシメ接合方法の詳しい内容は、前回の取材ページをご覧下さい
共進の代名詞ともいえるのが、「カシメ接合方法」。従来の切削方法になかった様々なメリットを生み出した。削るところがほとんどないため、鉄屑など捨てるものが少ない。また切削作業の短縮によって、時間やエネルギーも大幅に削減した。多くのムダをなくし大幅なコスト削減を実現したことで、取引先の信頼を得た。
カシメ接合で作られている主な製品は、ソレノイドプランジャ。自動車部品として、主にトランスミッション制御用に多く用いられている。2011年の実績では、国内外の360万台の自動車に使用された。またカシメ接合の開発と特許取得によって、売上高もカシメ接合導入前の1998年の約5億円から、現在は25億円を越えるまでになった。
削りの工程は、大型旋盤機械によっておこなわれる。旋盤機の数は本社工場だけで50台。諏訪地域の5つの工場をあわせると、およそ160台にもなるという。また製品の高い品質を維持するために重視しているのが、検査部門。全社員の約4割を検査部門に配置して、厳しい製品チェックをおこなっている。
昭和37年の創業以来社長を務めていた五味和人氏に代わって、創業50年を期に今年7月に社長に就任したのが長男の武嗣氏(44歳)。大手自動車メーカー勤務を経て、8年前に共進に入社。取締役として前社長を支えてきた。「社長として社員とその家族の生活を守っていかなければならないことに、重圧を感じる。」と口にする五味新社長だが、新たな分野への挑戦にも意欲的だ。
「この会社がなくては困るという会社にしたい。取引先や地域にとって必要とされる会社にしたい。」と語る五味社長。先代に負けないものづくりをやっていきたいと思う一方で、グローバル化が進む中で海外マーケティングを見据えたものづくりを模索している。今年に入ってアメリカに1社と中国に2社、新規の取引先を開発したという。
優れた旋盤技術を持つ共進だが、それを支えているのがものづくり企業の集積する諏訪地域だ。熱処理や表面処理などは、自社で出来ない加工処理は地元の企業に依頼している。「この地域でなければ我が社のものづくりは成り立たない」と語る五味社長。地域と連携して、諏訪地域全体として受注ができるような形にしていきたいという。
カシメ接合は材料やコストを節約する画期的な方法だが、回転方向に力が加わると回ってしまうという欠点があった。更に高性能なものを要望する取引先も多く、新たな接合方法の開発が求められていた。新しい方法のコンセプトは、「部品が少なく」「加工が簡単」というカシメ接合方法のメリットを生かしながら、機能の向上と生産のスピードアップを加えたものになるという。
共進のコアとなっているのは「削る」「磨く」「接合する」という旋盤技術。この3つの技術力を高めることで受注を広げている。技術向上のために、将来を見据えた設備投資もおこなっている。この工場に並んだ機械は、縦横以外にも斜めに自由に角度を変えて旋盤が可能な最新型。現在中心となっている自動車部品に加えて、医療などの新たな分野への進出も視野に入れている。
新しい接合方法のコンセプトを五味社長に伺った。企業秘密なので詳しくは説明できないが、聞いてみると「なるほど」と思えるほどシンプルな発想のものだった。「簡単なものでなければ大量かつ精密に作ることは出来ない。」と語る五味社長。現在は試作する中で取引先の評価を伺い、実績を積み上げた段階で市場に投入する方針だ。カシメ接合に次ぐ新たな接合方法が生まれる日も、すぐそこまで来ている。
株式会社共進
長野県諏訪市中洲4650 TEL:0266-52-5030
http://www.kyoshin-h.com/