[サイプラススペシャル]200 こだわりはゴムの「配合技術」 付加価値の高い製品を

長野県茅野市

宮坂ゴム

自動車用ゴム製品というと真っ先にタイヤが思い浮かぶ。しかし、自動車には現在30種類以上のゴム材料が使われているという。工業用ゴム製品メーカー宮坂ゴムの主力製品も、自動車内部の電気配線などで使われているハーネス(組み配線)関係の製品だ。原料の「ゴム」に様々な配合剤を混合し「伸縮性」「弾性」「絶縁性」「可変性」などを付加して製品を作り上げる技術を追求して40有余年、今、新たな分野での製品作りが始まっている。

工業用ゴムを作る

「配合技術」のミヤサカ

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宮坂ゴム株式会社は1970年、宮坂孝雄現社長が設立。現在、本社工場を含め、6拠点(国内3、海外3)を有している。7割を占める自動車用ゴム製品を作る他、家電・産業機器など、様々な用途に使われるゴム製品を手がける。

原料はもちろん「ゴム」。といっても宮坂ゴムで主に使用されているのはゴムの木の樹液を原料とする天然ゴムではない。天然ゴムとほとんど同じ性質を持つ石油から作られたゴム材料に、使用目的に合わせて「配合剤」を混合した合成ゴムである。

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ゴム材料の強度や耐熱性を高めたり、劣化を防ぐなどの機能は混ぜ合わせる配合剤で決まる。社内で使用されている配合剤の数は500種類以上。ゴム製品を作る上で、どの薬品とどの薬品をどのくらいの割合で混ぜ合わせるかという加工技術が製品の性能を左右する。宮坂社長は「最後は経験と勘です。」というが、宮坂ゴムの強みは、ゴム材料と配合材を混ぜ合わせる配合の技術。40年の蓄積が"「配合技術」のミヤサカ"と評価される製品を作り出している。

ゴム材料から製品づくりまで

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横120m奥行40mの細長い建屋の工場の内部には、想像していた生産ラインはない。部門ごとに仕切られたスペースで、作業が進む。まずは、製品の用途や使用条件に応じて用意された原料ゴムと各種配合剤を混ぜ合わせる工程だ。ニーダーとロール機の2種類の機械が動き、まさに混ぜる・練るという混練(こんねり)と呼ばれる作業、この工程を経てようやくゴム材料ができる。

続いて一定の厚さに伸ばされ、裁断されたゴム材料を金型に入れ熱と圧力を加える成形の工程だ。ずらりと並んだプレス機は、保温のためカバーで覆われている。プレスの時間は製品にもよるが170~190℃で5~10分程度、1人で2台のプレス機を操作し、成形する。プラスチックや金属と異なり、ゴム材料は金属にくっつきやすく、金型から取り外すのは、人が手でエアーをかけながら行う。1つ1つに手をかける製品作りが進んでいる。

そして、検査。X軸Y軸の寸法を非接触方式で測定顕微鏡を使って測定する測定検査とすべての製品を手にとって目視で検査する全品検査の2つの方法を取り入れている。製品の誤差は内径でプラス・マイナス0.05ミリ、外径でもプラス・マイナス0.1ミリ。弾力ある素材を使って確度の高い製品を作り出す技術、ニーズに応える高い品質のものづくりの現場である。

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独自製品を開発する

国内での生産維持を

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エンジンがコンピュータで制御され、エアバッグやABSの装備が標準化し、自動車の電装化が進んでいる。これに比例して、自動車1台に使用されるゴム製品の数や種類も格段に増加、それとともに部品の精度は安全性に直結し、求められる性能や確度も高度になっている。しかし、自動車関連の量産する部品の製造は海外移管が進むグローバル化が進む。宮坂社長は「ゴムという可能性がある材料で更に付加価値の高い製品を作っていきたい。」と顧客ニーズに応えた独自の製品を研究開発してきた。

ミヤ"を冠した製品も

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その一例が、自動車エンジンの振動を吸収するために開発されたミヤフリークという振動吸収ゴムや、鉛の代わりにレントゲン撮影時に体を防御する放射線シールドゴム(ミヤトロン)・軽量化ゴム(ミヤライト)・軽くて薄い熱伝導材・電磁波シールド吸収材などの高機能製品。どれも宮坂ゴムが5年10年と独自に開発してきた製品で、付加価値の高い製品群として、今後の活用が期待される。

目指す事業分野は医療

更に「今、力を入れているのは医療関係の部品です。」宮坂社長は2011年に医療機器製造業の許可を取得し、商品化した製品を新たな事業の柱に据える。「先進国は高齢化が 進み、また、これからは発展途上国も医療にお金をかけるようになって来ると思いま す。」

開発したのは肩や首などの凝った部分に貼ると凝りを和らげる効果が期待できる「ヘリカール」という商品だ。長野県出身の元島岐阜大名誉教授が開発した炭素素材「カーボ ンマイクロコイル」をシリコーンゴムに配合し、粒状に成形、円形の絆創膏で貼り付け る。磁気を使わないためペースメーカーを入れている人でも安心して使える製品だ。宮 坂ゴムの配合剤の技術が活用されている。
(「カーボンマイクロコイル」についてはhttps://saiplus.jp/news6/2011/10/post-70.phpを参照)
また、ヘリカールを使用した健康サポートグッズ「腰ベルト」や「リストバンド」、「パ ッド」も商品化、通販での販売をスタートさせた。

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3つの柱を

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本社入口にあるショーケースに中には、自動車部品はもちろんだが、鉄道関係で使用されているカバー類・金属接着部品などの宮坂ゴムの製品が並んでいる。工業用ゴム製品 は私たちの暮らしに欠かせない。用途、応用分野が多岐にわたり、また材料の種類が多 く、代替えできる材料はないとまでいわれているゴム材料。「材料技術の開発には時 間がかかりますが、会社の基盤は自動車の部品、2つ目は医療関係、あとは航空機・イ ンフラ整備。せめて3つくらいの分野にしっかり軸足を移していきたい。」と宮坂社長 は、会社の将来像を見据える。どの分野でも「お客さんの要望をいかに満足させるかどうか。それに対して配合を作り上げていくということが大事。」
どこまでも「配合技術のミヤサカ」の姿勢、挑戦が続く。

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【取材日:2012年11月19日】

企業データ

宮坂ゴム株式会社
長野県茅野市豊平5350 TEL:0266-73-7100
http://www.miyasaka.co.jp/