[サイプラススペシャル]213 凍り豆腐の新提案「こうやオムレツ」 おいしいは、やさしい。

長野県長野市

みすずコーポレーション

レンジで3分!カンタンおいしい!!
老舗凍り豆腐メーカーの新たな挑戦

 「カンタン!おいしい!!」「こうや豆腐の新提案です!!!」
 湯気が立ち上る出来たてのオムレツ。中には、一口大の凍り豆腐が入っていて栄養もボリュームも満点だ。この春新発売の料理の素「こうやオムレツ」を使えば、誰でも簡単にアイデアレシピを食べられる。

 今回ご紹介するのは、長野市のみすずコーポレーション。年配の方なら「凍り豆腐=みすず豆腐」をイメージする方も多いだろう。明治35年創業で、凍り豆腐の全国ブランド。平成4年に「みすず豆腐」から「みすずコーポレーション」に社名変更し、さらに飛躍を続ける、老舗食品加工メーカーの新たな挑戦を取材した。

開発の主役は20代女性

「朝専用」ターゲットは若い女性

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 「子育てやお仕事で忙しい若い女性にむけて、とくに朝食に食べていただきたい商品ということで開発しました。」と、みすずコーポレーション商品開発部北澤梓さん。20代の彼女が提案し開発した春の新商品が「こうやオムレツ」だ。

 ターゲットは、忙しい女性。しかも忙しい朝に食べてもらいたいというコンセプト通り、作り方も簡単だ。袋の中には、乾燥野菜と調味液と凍り豆腐が入っており、あとは卵と混ぜて、レンジでチンするだけ。およそ3分であつあつオムレツが完成する。
 ご飯だけでなくパン食派にも支持されるよう、「すき焼き風味」と「バター風味」の2種類の味があり、実際に食べてみると凍り豆腐に味がしみていて、やわらかな食感がたのしめる。レトルトとは全く別の、ひと手間加えたちゃんとした料理の味だ。

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こだわりの「女性目線」

 「商品のパッケージから調理方法まで、すべて女性目線でつくった商品です。」商品開発部・持田明美部長がこだわったのは女性目線だ。持田部長率いる開発スタッフ10人のうち、男性はわずか3人。平均年齢も27歳と、開発の主役は若い女性たちだ。


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 「こうやオムレツ」は凍り豆腐の新しい食べ方の提案であると同時に、営業スタッフからも期待される。
 「こうや豆腐は乾物コーナーに置かれるのが普通ですけども、こちらはレトルト売場やたまご売り場の近くに置いていただきたい商品です」と話す営業担当・花岡真紀さんは、自社商品をスーパーなどの小売店で扱ってもらうのが仕事だ。
 「今まで凍り豆腐をあまり食べなかった若い人に食べてもらいたい」「スーパーの新しい売り場に置いてもらいたい。」新商品には、ターゲットと同世代の女性たちの想いが込められていた。


もっと多くの方に「簡便に」凍り豆腐

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 「簡単で、本物がおいしく食べられる。この3つをテーマに、新商品の開発を続けている」と、塚田裕一社長。
 煮物の具材などでおなじみの凍り豆腐は、日本の伝統食品だ。冬の厳しい寒さを利用して作られる保存食で、長野県内では農家の副業として古くから作られてきた。現在では、国内出荷量9405t(2011年)のほぼ全量を県内メーカー産が占める。
 おいしく、食べやすく、体にもやさしい、と3拍子揃った凍り豆腐だが、ここ10年の消費量は微減傾向だ。「どうしても『煮物の具』というように高年齢層のイメージがありますが、もっと多くの方々に食べてもらえるよう簡単にできなければ商品としての価値はないと思っています。これからの商品は電子レンジでできるような、とくに簡便さをキーワードにしていきたい」と、塚田社長は続ける。


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 「電子レンジを持ち込んで、スーパーで試食販売をしたらどうか?」「女性向けに特化するなら『バター風味』一本を全面に出していけば?」「加工食品という括りで、ぜひレトルト食品売り場に置いてもらえ!」など本社会議室で行われた、開発、営業スタッフを交えた新商品プレゼンでも、塚田社長は檄を飛ばす。
 社内の若い力、女性の力を活用して生まれた新商品「こうやオムレツ」は、様々な時代の変化を乗り越えてきたみすずコーポレーションの、次の時代の食の提案になるだろう。

世紀を超えて歩みをとめないみすずの進化

豆腐づくりは、水が命。

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 長野駅から南へ徒歩15分の長野市若里。長野オリンピックの会場にもなったビッグハットの近くにみすずコーポレーション本社工場がある。まず目に飛び込んでくるのは、15階建ほどの白い建物に描かれた赤が基調のシンボルマーク。こどもが大きな口を開け笑う姿をイメージしている。この建物、最大600tもの大豆が入る大型のサイロで、「みすず豆腐」時代から変わらないシンボル的な存在だ。
 昨年12月に創業110周年をむかえたみすずコーポレーションは、凍り豆腐で全国2位、家庭用市販味付けいなり揚げで全国1位のシェアを誇る長野県を代表する食品加工メーカーだ。


 1日に使用される大豆は、実に50t以上。長野市内の工場では毎日、64万枚の凍り豆腐、 300万枚の油揚げ、560万枚の味付けいなりがつくられ、全国の食卓に届けられている。

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 「こうや豆腐づくりの命は、水。ここでつくらないとこの豆腐の色が出ない」と、上席執行役員凍豆腐事業部長の飯島久さん。案内された凍り豆腐の製造ラインは圧巻だった。「畳6畳サイズの豆腐です。」超巨大豆腐が、ラインにのって次々と自動で切断されていく。つくっている途中、レンガのような豆腐をちょっと味見させていただくと、ぎゅっと濃縮した大豆の味がした。凍り豆腐づくりは、大豆から豆腐を作り、凍らせ、乾燥させて出来上がる。この一連の作業が、工場内で行われていた。
 「工場内の作業はできるだけ自動化が進んでいます。そうはいっても検品作業などは人の目が一番信頼性があるんです。」サイコロ大で出来上がった凍り豆腐は、X線検査機や人の目による選別がおこなれ、包装・梱包され全国へと出荷される。


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「豆腐」が取れて、大きく飛躍

 明治35年創業のみすずコーポレーションの原点は、天然製造の凍り豆腐。昭和6年に新製法「アンモニア膨軟加工」を開発し、みすず豆腐は関西圏を中心に市場を拡大していく。中原ひとみ、漫才トリオ、うつみ宮土里、八名信夫...いずれもみすず豆腐のTVコマーシャルを彩った懐かしの顔ぶれだ。
 昭和60年におよそ35億円だった売り上げは、平成10年70億円、平成24年100億円と、大きく伸長する。凍り豆腐国内市場はほぼ横ばいで推移する中、なぜみすずは急成長できたのか?
 その答えの一つが、「みすず豆腐」から「みすずコーポレーション」への社名変更に隠されていた。

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 「こうや豆腐のピークは昭和53年でした。こうや豆腐というのは、豆腐づくり、冷凍、乾燥と大豆加加工食品の中ではもっとも難しい技術があると言われている。その加工技術と、これまで築いた流通網を生かして作ったのが、油揚げ、味付けいなり」と、塚田社長。平成4年の社名変更は「豆腐」から「大豆加工食品」への飛躍のターニングポイントでもあった。
 「現在、売り上げの4分の3を占める、経営の柱が油揚げと味付けいなりです」と、塚田社長。昭和60年からの売り上げ増は、ちょうどこの油揚げと味付けいなり分に相当する。


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顧客ニーズに応える「一貫生産」

 「先ほどまではこのサイズでつくっていて、今はこの大きなサイズ。いなりの厚さや大きさは、使い方によっていろいろなんです。そんなお客様のご要望にあわせて、いろいろなサイズの油あげをつくれるのが、この製造ラインの強みです」と、執行役員油揚加工事業部長の塩野崎正和さん。みすずでは、毎日合計300万枚もの油あげがつくられている。
 業務用いなりとしては後発メーカーとなるみすずコーポレーションは、顧客であるいなり寿司加工現場の細かなニーズに応えることでシェアを拡大してきた。その原動力となっているのは、油揚げ自動化ラインだ。


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 油揚げの質は、豆腐の中に含まれる空気の量によって決まるという。また、同じラインで違う大きさの油揚げをつくるために、新しい機器を自社で開発した。原料の油揚げから調味液の調合・味付け加工などすべての工程を自社で一貫生産できるのもみすずの強みだ。
 「殺菌温度も、常温で流通できるレトルト殺菌のほか、チルド用、冷凍用と同じラインで3つの温度設定の商品をつくることができます。これからも、便利さと、おいしさと安心をとどけていきたいです」と塩野崎さん。


移り変わる「食」を捉える

 「おいしいは、やさしい。」人々の心に微笑みが浮かぶ食生活を提案していきたいと願う、みすずコーポレーションのキャッチフレーズだ。
 「日本の食文化は、想像以上のスピードで形を変え、同時に世界へも普及している。国内需要が頭打ちの中、必然的に海外へという思いもあります」と、塚田社長。平成15年には中国大連に新工場を建設し、世界市場で提供する基盤も整った。
 自然のめぐみを生かす伝統の味を守りながら、移り変わる「食」のニーズにマッチした新提案で便利で豊かな食生活を創造していく、みすずコーポレーションの挑戦は続く。

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【取材日:2013年2月26日】

企業データ

株式会社みすずコーポレーション
長野県長野市若里1606 TEL:026-226-1671
http://www.misuzu-co.co.jp/