長野県池田町
杉浦研究所
杉浦研究所は光学レンズをコア技術に、大企業が手を出さないニッチ市場において自社ブランド製品で勝負するものづくり企業。医療用の光学撮影装置をはじめ、V字型の書籍撮影装置や足型を判定する鑑識標本撮影装置など、一般の人の目に触れない特殊な分野で幅広く活用されている。本社は東京にあるが、主力製品である撮影装置の生産拠点は池田町にある。
「大企業が手を出さないニッチなものを、取引先のニーズをよく聞いて開発するのが当社の特徴です。」と語るのは、社長の杉浦静夫さん(66歳)。杉浦研究所は昭和33年、胃カメラの開発者として知られる杉浦社長の父・睦夫さんが会社の同僚数名とともに創業した。本社は東京にあるが、二代目社長だった柴田さんの出身地で、ものづくり企業が多い池田町に昭和54年に工場を開設。現在も主力工場として稼動している。
創業当初は社員のほとんどが光学レンズの専門家で、その特徴を生かして顕微鏡や光学カメラを製造していた。現在の主力製品は大手メーカーにOEM供給している光学機器と、光学レンズ製造のノウハウを生かした「SLマーク」の付いた自社ブランドだ。自社製品の主力は、医療用の光学撮影装置。病院や医科系大学などで、臓器などの撮影に使用されている。この分野では国内の約7割のシェアを誇る。
医療現場との取引が多いため、「医療現場にいま何が必要か」「どんなことに困っているのか」という情報を収集し、そこから新しい製品の開発が始まる。「開発は難しく苦労も多いが、出来たときの喜びは何物にも変えられない」という杉浦社長。医療現場のニーズを的確に掴み、製品化することで様々な製品を生み出してきた。
医療用撮影装置のノウハウを生かして開発されたのが、このV字型の書籍撮影装置。絶版になった本や古書などを撮影するものだ。V字型にして撮影することで、本を傷めることなく均一にページを撮影することを可能にした。国内でこのタイプの撮影装置を製造しているのは杉浦研究所だけで、まさに「オンリーワン」の製品だ。
撮影機器の技術の中で重要なのが、均一に照明を当てて均一に撮ること。使われる照明もランプから蛍光灯、そしてLEDへと時代の変遷とともに変化してきた。そのような照明技術を生かして開発されたのが、この鑑識標本撮影装置。足型を正確に撮影することでサイズやメーカーを特定できるため、警察の犯罪捜査の分野で活躍している。
光学用レンズメーカーの歴史を物語る、隠れたヒット製品がこの「SLクリーナー」だ。胃カメラの光学レンズ用クリーナーとして、年間8万本を製造している。また、光学機械の作動部に使用する特殊グリース各種も、長年に渡り製造し続けている。これ以外に歯を白くする装置をOEM製品として製造するなど、その製品アイテム数は数え切れない。
「機械・光学・物理・化学など、様々な分野の専門家が集まっている会社です。」と社員の技術力に自信を持つ杉浦社長。池田工場で働く社員の数は12名と決して多くはないが、少数精鋭で各分野のエキスパートを揃えているという。医療分野においては、取引先の病院や大学などから得る情報が、新製品開発の大きなヒントとなっている。
新製品を製造するために、時として専門以外の分野にも挑戦する。臓器の保存に使用されるホルマリン(ホルムアルデヒド)は、人体に影響を及ぼすため除去する必要がある。臓器用の光学撮影装置には、このホルマリンを吸引する除去装置が取り付けられているが、これは杉浦研究所がオリジナルで開発したもの。専門知識が全くないため、試行錯誤と創意工夫の末に生み出されたものだ。
杉浦研究所の自社ブランド製品は、大手メーカーが手掛ける何千何百という大量生産とは一線を画している。ひとつひとつ作られるまさに一品もので、新しい技術の開発とチャレンジが不可欠な領域だ。「チャレンジしていくと自然に勉強せざるを得ない。それによって自然に技術は身についていく。」という杉浦社長。今日も池田町の工場で、新たな製品開発と製造が行われている。
株式会社 杉浦研究所
(池田工場)長野県北安曇郡池田町池田2713-15 TEL:0261-62-8130
http://www.sugiken.com/