[サイプラススペシャル]229 断熱効果抜群の「あんみつガラス」の秘密とは? 信州の自然環境から生まれた独自商品

長野県上田市

あけぼの通商

 内陸性気候の信州は、冬は寒く、夏は暑い。厳しい自然環境に対応する省エネ効果の高い窓ガラス販売で業績を伸ばすのが、上田市のあけぼの通商だ。

 省エネの秘密はその構造にある。「複層ガラス」といって、2枚のガラスを合わせることによって断熱効果を高める…のだが、実はさらに工夫が隠されていた。自社開発した独自ブランド「あんみつガラス」を全国に展開するあけぼの通商。成長のカギは信州の地の利を生かした戦略にあった。

自社開発の複層ガラス「あんみつガラス」

冬のいやな結露を防ぐ、優れものガラス

anmitsuglass03.jpg

  「窓から止めよう温暖化」が経営理念。一般住宅の窓に複層ガラスを販売するあけぼの通商は、2002年に発売した自社開発の複層ガラス「あんみつガラス」で業績を伸ばしている。セールスポイントは、断熱効果の高さだ。冬のいやな結露を防ぐほか、冷暖房費の節約につながり、二酸化炭素削減にも役立つという。

  「ちょっと試してみましょう。」一般的なガラスと、あんみつガラスを並べ、冷却スプレーを吹きかけると一目瞭然。1枚ガラスはすぐにガラスが冷えきってしまうが、二重構造のあんみつガラスは、反対側に温度が伝わりにくい。「どんなに外が寒くなっても、暖房で温めた室内まで冷たくならないんです。ガラスが冷えないということで、結露も防げる。」たしかにあんみつガラスには水滴がついていなかった。水蒸気が水滴となる結露の原因は、室内と窓の温度差にある。断熱効果が高いあんみつガラスは結露を防ぐことでも評価が高い。

 「売れっこない」と言われても、あきらめない

anmitsuglass04.jpg

 板ガラス2枚を張り合わせた複層ガラスは、「北海道やヨーロッパでは一般的だけれど、長野県内はじめ国内ではほとんど普及していない」と、近江朋秀社長。温暖化防止にもつながる優れものが、なぜ国内では一般的でなかったのか?

 問題は、その厚さだ。「2枚のガラスは厚いのでどうしても網戸や雨戸にあたってしまい、うまく取り付けられないんです。」一般住宅にも特別な工事なしに取り付けることができれば、もっと普及するに違いない...そうにらんだ近江社長は、自ら新商品の開発に取り組んだ。

  「苦労しました。ホームセンターで資材を買ってきて、試作品をつくりました。それをガラスメーカーに持って行っても『こんなの売れっこない』と相手にしてくれない。それでも『自分たちで売るから』と頼み込んだ」と近江社長。6年がかりで商品化したのが「厚くても取り付けやすい」あんみつガラスだった。

 取り付け時の問題は、特別なサッシ構造で解決した。通常より幅の広いサッシのアタッチメントを組み合わせることで、網戸や雨戸のある一般家庭でも「サッシはそのままで、ガラスのみを交換できる。」ひと窓あたり30分から1時間程度で交換可能、という。

  工夫は細部にまで及ぶ。既存の3㎜ガラス2枚の間に設けた10㎜の層には熱伝導率の低いアルゴンガスを密閉することで「断熱効果は1枚ガラスの4倍程度」だ。また特殊な金属膜を張ったガラスを使用することで紫外線の流入を抑え、夏涼しく床の変色も防げる。価格は通常の1枚ガラスの倍以上だが、長野県内はじめ全国で5万件以上の施工実績と、着実に普及している。

売るのにも、作るのにも適した長野県

全国展開を見据え、信州で起業

anmitsuglass05.jpg

 1989年創業のあけぼの通商は、住宅リフォーム業からのスタートで、大手メーカー商品を中心に販売していた。「会社をもっと大きくするためにも、独自商品が必要だ」と考えた近江社長が目を付けたのが、北海道以外ではまだ普及してい複層ガラスだった。

 しかし、近江社長は愛知県出身。なぜ長野県で起業したのか?「オリンピック開催と、新幹線や高速も開通することが決まっていた。上田を拠点にすれば、名古屋・東京・北陸はじめ、全国に商売が広がると考えた。」あけぼの通商本社は、上田インターからクルマで5分の立地だ。創業から25年、独自ブランドの全国展開の背景には、地の利を活かした近江社長の先見性があった。

  「信州はガラス加工にも適した地域。昔から精密機械が盛んだったのは乾燥しているから。ガラス表面の金属膜はさびやすいので、長野県で加工は適している。」案内されたのは上信越道長野東インターすぐそばにある日本板硝子長野センター。あんみつガラスは、ここで作られている。専用機械でカットや張り合わせられる複層ガラスだが、面取りや要所での確認などは人の手が欠かせない。「もちろん扱うすべての商品について品質には自信を持っていますが、とくにあんみつガラスは独自の検査項目を設け作り上げています」と、日本板硝子長野センターの担当者。


「あんみつシリーズ」で、さらに普及拡大

anmitsuglass06.jpg

  「複層ガラスはこれからまだまだ普及が期待される。あんみつガラス関連のさらなる開発をすすめ、長野県から全国へ販売していきたい」と、夢を語る近江社長。ガラスメーカーと協力し、全国で子ども向けのガラスの科学を学ぶ出前教室を開催するなど、普及活動にも積極的だ。

  ところでなぜ、あんみつガラスという名前なのだろうか?「安住、安全、安心、3つの安にちなんで」とのこと。ガラスだけでなく、名前のとおり補助鍵を加え防犯性を高めたり、防音効果を強めたりした商品など、新たな「あんみつシリーズ」も積極的に展開している。「付加価値を高め、お客様に喜んでもらえる商品を販売していきたい。」厳しい信州の自然環境下で支持される長野県生まれの窓ガラスが、全国へと広がっていく。


anmitsuglass07.jpg

【取材日:2013年6月20日】

企業データ

株式会社あけぼの通商
長野県上田市古里161-1 TEL:0120-296-033
http://anmitsuglass.com/