長野県箕輪町
ヒットコンポジット
トラウトやバス釣りなどに欠かせないのが、魚の形状をした「ルアー」と呼ばれる疑似餌。国内で製造されているものはほとんどがプラステック製だが、珍しい木製ルアーを製造しているのが箕輪町にあるヒットコンポジットだ。製造をはじめた当初はOEMがほとんどだったが、約10年前から自社ブランドを手掛けるようになった。バスフィッシングの大会で上位入賞者が使用していることもあり、釣り愛好家の間で根強い人気を得ている。
昭和62年の設立当初は、ゴルフ用品を製造していたヒットコンポジット。カーボン製品を主に手掛けていたが、特殊スチールやチタンなど素材の変化やメーカーの海外シフトなどの影響から約20年前業態の転換を迫られた。その際に着目したのが、当時はプラステック製のものが主流のルアー製造。木を取り扱うノウハウを持っていたため、全ての製造を木製ルアーに転換した。
「木という素材の特徴を生かして『異形物』を作ることが、我々の最大の得意分野です。」と語るのは、社長の塩澤信之さん。OEM供給で木製ルアー製造を始めた頃は、ブラックバスの釣り選手権を転戦するプロに使用してもらいながら、アドバイスを得て改良を重ねていったという。徐々に上位に入賞するようになり、その経験を活かして10年前には自社ブランドも立ち上げた。現在はブラックバス用だけでなく、トラウト用のルアーも自社ブランドで製造している。
木製ルアーの製造はベースとなる木型こそ機械で削り出すが、それ以外はほとんどが手作業だ。重りなどを仕込んで浮力の調節を行うほか、手作業でアルミ箔を貼ったり様々な色で塗装をするなどして、徐々に本物の魚に近い形状に近づけていく。釣る魚の種類は勿論、川や湖の環境や季節や天候などにも合わせて様々な種類のルアーをひとつひとつ作り上げていく。
良いルアーの基準として重視されるのが、釣り糸を巻いてくる際にいかに本物の魚のように真っ直ぐに泳いでくるかという点だ。工場の中にもプールが用意されていて、そこで出来上がったルアーの泳ぎを確かめている。ひとつひとつトライアンドエラーを重ねて製造されるため、長いものでは開発に5年以上を費やすものもあるという。
釣り人口は減少傾向にあるものの、大物を釣り上げたいという欲求は釣り人の誰もが持っている。塩澤社長も「釣りをする人たちは、我が社のルアーを使って『こうゆう風にしてこう釣りたい』という夢を描いている。我々も夢を持ってルアーを作ることで、皆さんの夢を叶えたい。」と熱く語る。木へんに夢と書いて「WooDream」と書かれたこの造語が、その夢を最も象徴的に表しているように思えた。
ヒットコンポジット株式会社
長野県上伊那郡箕輪町大字中箕輪10320-10 TEL:0265-79-9775
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