ものづくりを支える「ガス」

青白く火花が輝く溶接作業...ものづくりの現場で、岡谷酸素はなくてはならない存在だ。
案内されたのは、信州まつもと空港近く松本市臨空工業団地内にある株式会社タカノ。半導体や液晶製造装置などの部品や筐体をつくる板金加工の会社だ。
岡谷酸素のガスは溶接に使われる。「高温のアークを飛ばして金属を溶かし、それで溶接するという形式の溶接です。主にアルゴンガスを使用しているんですが、岡谷酸素さんのガスを使用させていただいております」と、タカノ第二製造部の木下謙介さん。

岡谷酸素の180億円を超える売上のおよそ半分はこうした産業分野が占め、ガス界では長野県トップクラスの業容を誇る。酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム、炭酸ガスなどが主力で、溶接だけでなく精密機械の組み立てや半導体製造に使われるほか、医療用の酸素や麻酔ガスなども扱っている。

ガスの安定供給と運用を実現

「正直に申し上げますと、私たちが扱う『ガス』は、卸業者によってその性能が大きく違うというものではないんです」と話すのは、岡谷酸素野口行敏社長。「だからこそ、切らさないこと、安全に使ってもらうこと。これが一番のテーマです。」

ガスを安全に扱うためには、高圧ガス保安法や液化石油ガス法などの法規制をクリアしなくてはいけない。岡谷市幸町の本社、松本市市場の営業本部のほか、長野県全域（と新潟・山梨・群馬の一部）に営業所やガス供給拠点など全17の事業所を設ける岡谷酸素は、複雑な法規制にも対応し、ガスの安定供給と運用を実現している。

創業当時から80年以上続く酸素づくり

岡谷酸素の創業は1933年。長野県内では初めて圧縮酸素ガスの製造に着手した。酸素をつくる会社だから「岡谷酸素」、が社名の由来だ。
現在でも酸素などガスを製造している。

案内されたのは、松本市神田の長野液酸工業。岡谷酸素の関連会社だ。
「空気をマイナス165℃度まで冷却し、液体空気をつくって、その液体空気の各成分の沸点の差を利用して、酸素、窒素、アルゴンをつくっています」と、中嶋範行工場長。原料は普通の空気。これを超低温で液体にし、そこから酸素などを分離させている。ビルのように高い建物は、酸素などガスの製造装置で、24時間体制で分離作業を行っている。「原料は無料ですが、低温にするためにはものすごいエネルギーとコストが必要。電気を大量に使うので、この装置を稼働するときには、一旦電力会社に連絡するんです。」

液化されたガスは、専用タンクローリーで県内各地に届けられるほか、長野液酸工業の道を挟んだすぐ横には国内有数の半導体メーカーの工場があり、窒素などは直接パイプで提供されている。

未来を支えるエネルギー総合商社へ

岡谷酸素は、高圧ガスを主軸としながら、産業用設備機器の販売や、住宅の台所や水回りのリフォームまで手掛ける。
多角化を進める中で、一番の成長期待分野はどこなのか?野口社長に伺うと、意外な答えが返ってきた。

「ありとあらゆるものが、期待できる分野だと思っています。お客さんのニーズにどれだけうちが追っかけていられるかというのが一番のテーマです。」
工場のニーズからガス供給設備の提供や工事まで請け負うようになり、LPガスを配達する家庭の要望で、キッチン・風呂場をはじめ住宅リフォームまでを手掛けるようになった。まさに顧客ニーズを追いかける岡谷酸素は創業から80年以上にわたり成長を続けてきた。

諏訪のメガソーラー「ＳＵＷＡＣＯ　Ｌａｂｏ（すわこ・らぼ）」は昨年12月に稼働をはじめた官民協働の岡谷酸素太陽光発電所だ。
岡谷酸素は、ガスをベースとした総合テクニカル商社として、これからも未来を支えるエネルギーを届けていく。