長野県伊那市
サン工業
「明るくきれいな」めっき工場
信州・伊那谷から未来を見つめる先進企業
光沢を与える「装飾めっき」や、錆びの防止をはじめ新たな機能を加える「機能めっき」など、クルマ関連部品から電子・電機部品まで、ほぼ全ての金属製品に「めっき」が施されている。
めっき=表面処理加工は、ものづくりを支える基盤産業だ。
伊那市のサン工業は、65年の歴史を誇るめっき専門メーカー。
有害物質を使わないめっき工程を開発したことなどが評価され「第2回ものづくり日本大賞」優秀賞のほか、2014年度「ものづくり大賞NAGANO」「NAGANOものづくりエクセレンス」を受賞するなど「世界に発信できる技術力」を持つ企業として高く評価されている。
新工場内の金属ゴルフシャフト専用自動めっきライン。日本製大手メーカー製品の表面加工を手掛け、1日数万本のめっき処理が可能、国内トップシェアを誇る。ニッケル3層に、クロムめっきを加えた「4層めっき」が施され、美しい輝きを放つ。こうした多層めっきがサン工業の得意分野だ。
「4回重ねてめっきをすることで、このゴルフシャフトは耐食性がすごく良くなる」と、品質保証と営業企画の課長を兼務する榎堀秀和さん。
「サン工業は他にも色々なめっきができるのが強み。その色々なめっきを組み合わせて例えば何層にも重ねたり、例えば混ぜ合わせたりすることで、新しい性能を加えたり、耐食性であればより性能を高めるということができます。この組み合わせでお客さんのニーズを満足させていただける商品を作るのが得意です。」
既存技術をくみあわせ、顧客ニーズに合わせた新しいめっきをつくる、サン工業が支持される理由の一つはこの提案力にある。
治具(じぐ)と呼ぶ枠に数多くの製品が固定され、めっき液や水が入った槽が並ぶめっきのライン。めっきの量産ラインは20以上あり、多様なニーズに対応できる。さらに顧客からのニーズに素早く応えるため、2008年新工場に試作専用のラインを設けた。
サン工業の高い技術力の代名詞とも言えるのが「無電解めっき」だ。
そもそもめっきは、製品に電気を通し、表面に金属の薄い膜を作ることが基本だが「普通の電気めっきだと穴の中のめっき厚はかなり薄くなり外側だけ厚くなってしまう」と、開発課長の河合陽賢さん。
電気を使用しないめっきとは、どんな手法なのか?
「無電解めっきは、還元剤を利用した化学反応。表面にできる膜が厚が均一という特長があることに加え、電気めっきよりも硬度、被膜が硬いという特長があり、クルマの部品など耐摩耗、摩耗しにくい表面処理の一つとして採用実績が多い。」さらに、プラスチックやセラミックス、繊維など電気を通さないものにもめっきを施すことができる優れた技術だ。
サン工業のモットーは「Yes, I can!」。
単純なめっき処理が新興国に移行する中、顧客からの相談は断らず「はい、やります。」新たなめっき技術の開発や徹底した品質管理に力を注ぐことで生き残りを図ってきた。
年々高度化する顧客ニーズに応え、新技術開発、製品解析をサポートするため、電子顕微鏡など最先端の高度な分析装置を導入した表面解析室を設置した。
「無電解めっき」と並ぶ、サン工業のもう一つの代名詞が「環境配慮型めっき」だ。
業界に先駆け有害物質「六価クロム」を使用しないめっき技術を確立するなど、環境に配慮した表面処理技術で業績を大きく伸ばした。顧客の高度な要望に応える表面処理技術のリーディングカンパニーを目指し、更なる成長を図る。
「お客さまから求められているのは、基礎的なことかい?」「まだ基礎的なものと踏んでいます」
社長以下、幹部や開発担当社員15名が集まる会議室。サン工業では毎週こうした会議が行われ、開発中の表面処理技術の報告や、量産プロジェクトの進捗状況などが話し合われる。情報の共有だけでなく、社長自らが担当者に直接疑問をぶつけたり、部署を超えて問題解決にあたったりするという。
伊那商工会議所の会頭も務め、多忙な毎日を送る川上健夫社長。
「お客様全部、1社1社すべて要求が違う。ニーズに対して細かい対応と要求に応じられる態勢をとる、しかもタイムリーにとるというところがかなりできるようになってきた。」
全80名超の社員平均年齢は30代前半、女性社員が30名以上、若手や女性が積極的に取り組む姿が印象的だ。
サン工業は独自の社員教育にも定評があり、2000年から毎月、土曜に全社員参加の勉強会を続けている。社内外から講師を迎え、技術に関する内容だけでなく、マナー研修や救急救命法など、本業以外の分野もテーマに研修を行う。
顧客ニーズに、素早く、きめ細やかに対応できる態勢は、こうした社員一丸となった社風があるからこそ、だ。
地域貢献にも積極的に取り組むサン工業。地元の中学生を招いためっき教室も積極的に開催する。現場での作業体験の他、アクセサリーなどに実際にめっきをしてみてその美しさや楽しさを感じてもらうという狙いだ。
表面処理のスペシャリスト集団を自負する川上社長、「めっき」の可能性に自信をみせる。
「どんな分野でも、我々の表面処理が要求されるところが必ずある。そういう意味で、この表面処理の分野は面白いし可能性がある。それだけ、やりがいがある。我々の様な中小零細もそういうところにしっかり入り込み、日本の製造業の下支えする『サポートインダストリー』として誇りとやりがい、気概を持ってやっていきたい。」
「Yes, I can!」のキャッチコピーを掲げ、より難しく、より高度な表面処理技術へと仕事の幅を広げてきたサン工業。「表面処理はおもしろい!」という川上社長は、製造業を支える基盤産業の未来に向け、夢を語り続ける。
サン工業株式会社
長野県伊那市西箕輪大芝原2148-186 伊那インター工業団地内
http://www.sun-kk.co.jp/