[サイプラススペシャル]383 「ゴム押出機」国内トップシェア 自動車業界を支えるスペシャリスト集団

長野県上田市

三葉製作所

国内トップシェアの「メイドイン上田」
クルマになくてはならないホースをつくる機械

「ホースやケーブルを自動でつくる機械を造っています」
クルマのドアのゴムパッキンや、エンジンルーム内の各種ホース、電子機器を繋ぐケーブル類。こうした各種ホースやケーブルを自動でつくる機械を製造しているのが上田市に唯一の生産拠点をかまえる三葉製作所です。
特に、自動車向けゴムホース製造装置は国内トップクラスのシェアを誇る「メイドイン上田」の三葉の機械。その開発スタイルに迫ります。

開発力を磨いて国内シェア8割

エクセレンス認定!「補強糸入多層ホース一体成形装置」

ホースといっても単純な管(くだ)でなはく、用途に応じてホースの内部に繊維を織り込んだり、違った素材で2層3層にしたりする必要があります。
今までは3層のホースをつくるためには、別の機械で3回の作業が必要でした。三葉は、3つの作業をいっきに仕上げる機械を開発。
「今までだと内層、中間層と被覆した後に補強用の糸を入れてカバーをつけるので、3回のプロセスを経て三層の被覆をつくっていましたが、この装置は省スペースかつ1工程で三層被覆ができます」と、技術部第三課長小林則彦さん。

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2015年に「NAGANOものづくりエクセレンス」に認定された「補強糸入(ほきょういといり)多層ホース一体成形装置」です。
「ゴムの押出機、樹脂の押出機多々あるので、ウチの設計の強みを生かしてより良い成形機を作っていきたい」と、小林さん。

「完全個別受注」で開発力を磨く

三葉製作所の特長は、完全個別受注。
機械を使うそれぞれの工場(顧客)からの注文や必要性に対応するために、早くから個別に生産する方式を採用しています。

設計開発から部品加工、組立、検査、アフターサービスまで全て上田の自社工場内で行う一貫生産も特長で、これによりさまざまなレベルで製品に対する改良ニーズをつかむことが可能となり大きな強みになっています。

自動車業界向けの押出成形機では国内シェア8割、プリンター業界でも6割とトップシェアを誇り、その技術開発力は高く評価されています。

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ニーズの「一歩先」行く開発

キーパーツの「スクリュー」

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三葉の押出成形機のカギを握る部品がスクリュー。
金属の大型スクリューが回転することで、ゴムの素材を押し出し、ホースをつくっていきます。
ゴムを自由に加工する成形機は高い精度が求められますが、使うゴム、素材ごとに一番ふさわしい装置を作る上でスクリューの役割は大きく、最新の加工設備が導入されています。

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生産本部製造課長の尾台友明さんにスクリューの重要性について伺いました。
「スクリューは、押出成形機の中でゴムを練りながら押し出していく製品、だから押出機の中でかなり重要な部品になる。この押し出す材料はお客様によってかなり異なるので、それに合った最適な形状を設計してもらい、製造ではそれに合った形状をカタチにしています。」

「発泡」で未来をつくる

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開発担当スタッフは全社員のおよそ20%。スクリューの開発設計を含め、三葉製作所は技術開発に力を注いでいます。
これまで顧客との契約を受けてからの設計がメインでしたが、一昨年には外部から新しい人材を招くなどして将来を見据えた研究開発セクションの充実。後追いの開発から、顧客ニーズの先を行く開発スタイルに取り組み始めました。

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「『発泡』という技術に力を入れたいと思っています」と、代表取締役社長堀内健一さん。
開発・製造・販売・情報処理から管理部門まで主要な部署を経験し、この10年間トップとして会社をけん引しています。「性能が高い、発泡した電線ケーブルを、それも非常に細かい発砲を持ったケーブルを製造する機械を開発することに注力しています。」
国から1億円の補助金を貰い、現在開発中なのが、糸の代わりに空気の泡"発泡"を入れ込んだケーブル製造装置です。空気の泡を入れ込んだケーブルは、これまでの繊維を織り込んだものより格段に軽く、不要な電気信号(ノイズ)などをシャットダウンする性能にも優れるため、クルマの自動運転や、医療の遠隔手術の分野など活用が期待されます。

信州・上田の地にこだわって

「競合企業と比較した場合、自社で試験・試作ができる装置を所有していてお客様のニーズも、見積もりの段階から確実にそのニーズに適合できるかどうかの事前評価ができる設備を所有しているのが強み」と堀内社長。
海外に生産拠点を置くかどうか重ねて検討した結果、上田でのものづくりにこだわることを決めた堀内社長。その理由をこう説明します。

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「メイドインジャパンによる品質を非常にお客様は大事にされる、これは例えば設備を納品してすぐ立ち上がること、或いは多少乱暴な使い方をしても機械が壊れない、そういうところが非常に重要だが、我々の商品の価格帯とお客様のニーズがメイドインジャパンで合うということで、基本的には日本からの供給にしている」
三葉製作所は、これからも信州・上田の地でのものづくりにこだわります。

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【取材日:2016年05月26日】

企業データ

株式会社 三葉製作所
長野県上田市中央東5丁目14番 TEL:0268-24-3131(代表)
http://www.mitsuba-ss.co.jp/