自社開発した「切削工具」何がスゴイの?
市販の4倍!NCフライス盤に取り付ける工具
長野市の山岸製作所が手掛けるのは、トラックのエンジンなどに使われる比較的大きな金属部品です。
冒頭に登場した「工具」というのは、数値制御の工作機械NCフライス盤に取り付けるドリル・刃物のようなもので、もともと機械についている市販の工具は直径15cm。大型部品を削り出すためには、何度も工具を往復させて必要がありました。
山岸製作所が自社開発した工具は、市販の4倍。
この工具を使うと、表面を1回削るだけで加工が済み、きれいな平面加工が可能になりました。
若手社員が自社開発
「従来では、この直径150mmの工具を使用していましたが、広い面を何度も往復しながら加工しているので、どうしても段差が生じてしまいました。そこで工具メーカーと相談しながら、広い面を1回で加工できる工具を開発できないか検討を進めてきました。」
工具設計開発に携わったのは、若手社員。製造技術グループ保全担当木島崇凱さんです。
「工具の歯の枚数と感覚によって加工の具合、面の粗さとかが変わってくるので、最適な枚数を見つけるまでかなり苦労しました。」
同じく、製造技術グループ宮崎克也さんも「広い平面を1回で加工できる、段差がなくなったことによって加工時間が大幅に短縮、10分の1くらいまで短縮することができた、そのことによって作業効率が大幅にアップした」と、その効果は絶大です。
「多品種少量」で新たな市場へ挑戦
大きな部品を、早く、精度よく
山岸製作所は最新の加工機械を駆使して多種多様な部品を製造、現在はエンジン部品や足回りの部品といった自動車関係の売上がおよそ6割を占めています。
取引先の受注変動に対応する多品種少量のものづくりが強みで、加工に適した形状の工具や冶具の開発にも積極的です。
取引先の大手メーカーから加工技術と品質を高く評価されている要因はどこにあるのか製造技術部長寺島茂夫さんに伺いました。
「一つは社内に大きな工作機械を持っていることで、他社ではできないような大きな製品を加工することが大きな特長です。二つ目は社内でCADAMを持っているので、CADAMを駆使していち早く冶具の設計し、また正確な加工プログラムを作ってお客様に納入できる、こんな態勢が整っているのがウチの大きな特長だと思う」
地元中学のものづくり支援 & 65歳以上も活躍
長野市に本社と工場を置くものづくり企業として地域との連携・地域貢献も重視しています。
信州大学教育学部附属長野中学校の技術部に建物の一部を無償で提供、生徒たちがクラブ活動として取り組んでいる省燃費のエコラン車両の製作を支援しています。
若い技術者に活躍の場を与えると同時に、高齢者の活用にも積極的で、いちはやく65歳定年制を実現しただけでなく、希望すれば定年後も仕事を続けることができ、現在、65歳以上の従業員が、全体の1割を占めています。
こうして、パートを含めて従業員50人弱での人手不足を解消するだけでなく、技術指導を担当するなど、若い世代への技術の継承に力を発揮しています。
信頼の根幹は「品質」と「納期」
「大型トラックは国内でおよそ500種類あるとのこと。弊社が加工しているエンジンなどの部品も典型的な多品種少量分野です。多品種少量生産に対応していくことと、品質と納期については気をつけながら取り組んでいます」と、代表取締役社長山岸章さん。
「品質」と「納期」というものづくり基本をしっかり押さえつつ、山岸社長は新たな市場の開拓に自信を見せます。
「同じ輸送関係ですが、あらたに船舶や鉄道車両の部品のお話を頂いています。どうしても商用車ふくめ、いわゆるクルマ、乗用車に比べると市場自体がとても小さいので、そういったところを多品種少量生産で何とか対応できる体制を作っていきたい。」
自動車部品で培ってきた量産の加工技術をベースに幅広い事業に製品を供給している山岸製作所。長年にわたって築いてきた大手取引先との信頼関係や関連メーカーとの連携を強みに、部品メーカーとして更なるステップアップを目指し、意欲的に加工分野の拡大にチャレンジします。
【取材日:2018年03月27日】