[サイプラススペシャル]508 占積率97%!「超高密度コイル」 顧客ニーズは発明の母

長野県小諸市

セルコ

電気自動車でも使われる「高密度コイル」
すき間なくキッチリ巻かれるワザとは?

「電気自動車でも使われる『すごいコイル』つくっています!」

電磁石だけでなく、発電機や磁気センサー、電熱線などに使われるコイル。
断面が丸い銅線を巻き上げてつくるコイルは、どうしてもすき間ができてしまいます。
小諸市のセルコが作るコイルのすごい技術は「高密度コイル」。
銅線のすき間を限りなく少なくし、その断面はハチの巣のように余計な空間がなく、銅線の一つひとつが密着しています。

YESものづくり、今回は、ものづくり大賞NAGANO2018でグランプリを受賞したセルコのスゴいコイルの技術を紹介します。

「ロケット品質」セルコのコイル

ロケットやEV 検査装置にも欠かせないコイル

セルコのつくる「高密度コイル」は、ロケットや衛星の制御用としても採用されるなどその品質は折り紙付き。とくに、測定器や製造装置に組み込まれるものは、コイルが製品の品質を決めると言っても過言ではないほど、小さいけれど大事な部品です。

常務取締役の浅沼佑治さん
「セルコのコイルは、モーターやセンサー、アクチュエーター、色んなものに使われる。とくに丁寧にきれいにコイルを均一に巻く技術があるので、そういうコイルは電気特性にばらつきがなく安定しているので、センサーにも使われる。EV(電気自動車)関係のモーター試作の受注もたくさん入ってきているし、小型化・高効率化が求められるところに力を発揮するコイルです。」

取締役研究開発室長の櫻井弘さん
「多いのはEV車ですね。あとは半導体関係の装置。今までよりもより一層高密度化したコイルをつくっていかなきゃいけない。」
小諸市のセルコは、オンリーワンの技術が生んだ高密度コイルや、特殊なコイルづくりに特化したメーカーとして大手各社から高い評価を得ています。

「巻き方」を極める

セルコのものづくりの特徴は、コイルの「巻き方」を極め続けること。 企画・設計から開発・製造まで一貫して手掛け、本社では試作開発と生産技術、多品種少量生産に特化しています。 顧客の要望を聞いたうえで、コストや品質の観点から最適な仕様を提案。 仕様に合わせて治具(じぐ)を開発したり、巻き線機を自社でカスタマイズするなど低コストで高品質なコイルづくりに取り組んでいます。 「いくらでもコストをかけていいのならできる会社もほかにある。ただ今ある装置で、少しでも安く、しかも品質良く、それはなかなか他所ではできない」と、代表取締役社長 小林延行さん。

「高密度コイルのコアは巻線にあります。巻線の密度を『占積率』と言いますが、普通は70%ほどのところを、セルコの巻線はきちっと巻いて80%以上、ここがコアです」

顧客ニーズは発明の母

占積率97%!「超高密度コイル」とは?

コイルの密度は、電線がコイルの断面積に占める割合で表します。
一般的には73~75%程の密度を、セルコは1コイル密度を割以上向上させ、85~88%まで高めた「高密度コイル」の開発に成功しました。
さらに、この高密度コイルを圧縮することで、占積率97%の「超高密度コイル」を実現。
銅線の被膜を損傷することなく圧縮する技術は、業界トップとも評されます。

なぜこんな技術が可能になったのでしょうか?
代表取締役社長 小林延行さん
「厄介な仕事、難しい仕事、他社がやらない特殊な仕事をどんどんとってやらざるをえなかった、これを1年、2年、3年とやっているうちに気が付いたら技術的に高みにいた」

中小が生き残るために「オンリーワンの技術」を磨く

小林延行社長は72歳。IT不況や生産拠点の海外展開で、倒産の危機に追い込まれた1998年に社長に就任。生き残りの道を独自技術の開発に定め、持ち前の行動力と強いリーダーシップで、典型的な下請けだったというセルコを世界に誇れる技術とノウハウを持つ会社に育て上げました。

「『顧客ニーズは発明の母』これ、私のつくった言葉ですが、お客さんのニーズそのものが、それを解決することによって新しい技術が生まれる、高密度コイルはまさにそういうことで生まれた。オンリーワンの技術を持って、それを磨いていくのが、中小が生き残りの道です」

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【取材日:2018年11月26日】

企業データ

株式会社 セルコ
〒384-0808 長野県小諸市大字御影新田2130-1 TEL.0267-23-3322
http://www.selco-coil.com