長野県池田町
カミツレ研究所
「カミツレ」とは、お茶や薬草として使われるジャーマンカモミールの日本名。このカモミールエキスを原料とした製品を製造販売しているのが、カミツレ研究所だ。東京に本社を置く印刷会社が、創業者の出身地である池田町で30年前に立ち上げた新事業だ。原料のカモミールは100%国内産。特許を取得した独自の製法で、主に植物由来成分を用いてカモミールの薬効を引き出したスキンケア製品を丁寧に作り続けている。
「ここは父である先代社長の生まれ故郷で、私も子どもの頃からよく訪れています。」と語るのは、現社長の北條裕子さん(47歳)。創業者の北條晴久氏(故人)は生まれ故郷の池田町から上京し、戦後間もなく東京で相互印刷工芸㈱を創業。その仕事を通じて植物由来のカモミールエキスの素晴らしさを知り、故郷に貢献したいという強い想いから30年前カミツレ研究所を立ち上げた。
ジャーマンカモミールはその薬効の多さから別名「ハーブの女王」と呼ばれ、4千年以上前から薬草として用いられてきた。カミツレ研究所の商品は日本名のカミツレから「華密恋(かみつれん)」と名付けられ、カモミールから抽出される濃厚エキス100%の入浴剤をはじめ、石鹸やスキンケア製品などを展開している。販売窓口はインターネットや通信販売が中心だ。
原料となるカモミールは、100%国内産。7千坪の敷地内にある自社農園をはじめ、町内や岐阜県などにある契約農家で栽培されている。減反された田んぼや休耕田などを活用して栽培をはじめたが、当時カモミールは国内ではほとんど栽培されていなかった。そのため創業当初は社員が直接出向いて技術指導をおこない、徐々に栽培面積を増やしていったという。無農薬のため栽培には手間隙がかかるうえに大量生産が出来ないが、契約農家との信頼関係を築くことで良質な原料を確保している。
カミツレ研究所の大きな特徴が、熱に弱いジャーマンカモミールから熱を加えずにエキスを抽出する「非加熱製法」。事業を始めた当初は熱を加えずに抽出する装置がなかったため、オリジナルで遠心分離濾過機を製作したという。また海外では花の部分しか原料に使用されないが、ここでは葉や茎の部分も使用する「全草使用」を採用している。製法開発にあたっては特許も取得していて、現在国内では唯一この製法をおこなっているという。
国内産100%のカモミールから良質で濃厚なエキスを作るために、製法には手間ひまを惜しまない。まず乾燥させた原料のカモミールを安曇野の水とサトウキビ由来の発酵エタノールに浸し9日間熟成させる。そのエキスに再びカモミールの原料を加えて同じ工程を2度繰り返す。手間がかかるうえに原料もふんだんに使用するが、濃密なカモミールエキスを作るために妥協できない工程だという。
2回にわたる攪拌と熟成をおこなうため、原料から製品として出荷するまでにはおよそ1ヶ月もかかる。工場内にはエキスの詰まったタンクが並べられ、熟成を重ねて出荷の時を待つ。入浴剤1回分のエキスには、約120本のカモミールが使用されている。保存料などの添加物は一切入れない、まさに植物由来100%の素材だ。
創業者が「人と地域の役に立ちたい」とはじめたカミツレ研究所。北條社長は「将来は医療や介護の分野にも進出したい。また赤ちゃんや子どもにも使ってもらえる製品も作っていきたい。」と、未来への抱負を語る。地域に根ざした自然を大切にするものづくり企業として、愛用者に支持され続けている。
池田町が「花とハーブの里」として全国に名を広めることが、地域に役立ちたいと考えるカミツレ研究所の願いだ。そのための地域貢献事業の一環として、カモミールが咲き誇る6月には敷地内で花まつりを開催、カモミールの摘み取りや定植体験ツアーも実施している。研究所に隣接する宿泊施設では、製品愛用者などに池田町の自然を満喫してもらいリラックス効果をより高める活動も続けている。
カモミールはカミツレ研究所が創業される以前は医薬品として扱われていたため、カモミールエキスを使った製品を医薬部外品として商品登録するためにおよそ2年半の歳月を費やしたという。「カモミールは保湿力・消炎力が高いので、肌の弱い方や冷え性の方には是非当社の製品を使って欲しい。」と語る北條社長。困っている人の役に立ちたいという創業者の信念は、娘の北條社長以下8名の社員たちに受け継がれている。
株式会社カミツレ研究所
長野事業所:長野県北安曇郡池田町広津4098 TEL:0261-62-9222
http://www.kamitsure.co.jp/