

製糸の時代に源を発する長野県のものづくりは、今も県内の産業の根幹を成しています。そして多くの企業がその高い技術力や開発力を武器に、国内のみならず海外にも活躍の場を広げています。そんな県内のものづくり企業に改めてスポットライトを当て、実力をご紹介するのがこの番組です。
vol.172 | 2023年2月25日放送 ものづくりリーダーズトーク ~株式会社新井製作所 新井達也 社長 |
須坂市の(株)新井製作所を特集。主な事業は発泡スチロール成型用の金型製造で、県内では同社のみの「ニッチな分野」だという。発泡スチロールはかつて家電の梱包材として多用されたが、現在は自動車のシートやエアコンの断熱材などに用途が広がり、高精度な金型が求められるようになった。
同社が約10年前から取り組むのが小水力発電。須坂市内の複数の企業がそれぞれの技術を生かして製造した水車などをユニット化した「置くだけ水力」は2022年のものづくり大賞NAGANOで「きらりと光る技術賞」として評価された。新井達也社長によると小水力発電の水車は約8割が海外製品だが、コストや設置後のメインテナンスの重要性などから国内企業が参入する価値があると考えたという。また、小水力発電を専門とする信州大学工学部の研究室と連携し、性能の向上にも取り組む。建設中の小水力発電所は研究所としての役割を持たせるほか、停電時はふもとの公園に送電するなど防災面での活用も図る。
出演者 プロフィール
 | コメンテーター 小澤吉則氏 (おざわよしのり) |
長野経済研究所 理事・調査部長。
1985年 八十二銀行入行
2018年 長野経済研究所に転籍
長野県を中心とした経済調査、地域振興を専門。
著書として『創生長野経済』(長野経済研究所共著)、『危機を生き抜く企業力』(同)等。
長野県中小企業振興審議会会長、長野県中小企業新興センター運営委員などの公職のほか毎月第1火曜日SBC「ラジオJ」に出演。 |
次回予告
2023年3月26日(日)午後4時半~放送予定
第百七十三回
バックナンバー

2023年1月16日放送
岡谷市に本社、南箕輪村に主力工場を置く空気圧機器の(株)日本ピスコを特集。空気圧機器は工場機械の動力源となる圧縮空気を配管したり調整したりするもので、産業用ロボットなどものづくりの自動化を支える部品として欠かせない。同社は幅広い産業に部品を供給し、また諏訪地域に多くの協力企業を持つことなどから、去年のものづくり大賞NAGANOの大賞に輝いた。1976年の創業当時から手掛ける「ワンタッチ継手」は差し込むだけでチューブを固定できる操作性の良さが特徴で、国内シェア2位という同社の看板商品だ。顧客の細かな要望に対応してきた結果、継手だけで2万品目のバリエーションがあるという。また真空をつくり、ものを吸着して運ぶための各種製品も開発製造し、様々な分野で使われている。番組では県の「ものづくりエクセレンス」に認定された固定圧レギュレータなども紹介する。「装置の一部である空気圧機器は常に小型化が要求される」と開発の苦労を語るのは常務取締役で技術本部長の北原敏正さん。岡谷市に計画している新しい本社工場の概要についても聞く。

2022年12月19日放送
佐久市の吉田工業(株)を特集。今年度の「ものづくり大賞NAGANO」の大賞(3社)を受賞した。
アルミ鋳造と精密切削をコア技術に、設計や表面処理も含めた一貫体制で自動車やバイクのブレーキ関係など重要部品を生産する。同社が力を注いできたのが、鋳造の「匠の技」をデジタルデータ化すること。鋳造の過程をシミュレーションするコンピュータソフトに長年の経験値を反映させ、3Dプリンターを活用して試作を重ねることで品質を高めてきたという。またこの取り組みが、製品の開発段階から顧客と関わり、困りごとを解決する「提案型企業」への変革につながっている。吉田寧裕社長が経営のモットーとするのが「人を大切にする経営」。従業員の心と体の健康が創造性や生産性の向上につながると語る。このほか、吉田工業が佐久産業支援センターと連携し、地元の総合病院の要望を聞きながら開発した除菌ディスペンサーや車いすに連結できる酸素ボンベ立ても紹介する。

2022年11月27日放送
ものづくり大賞NAGANO2022でグランプリを受賞した安曇野市に生産拠点を置く「ハーモニック・ドライブ・システムズ」を特集する。社名にもあるハーモニックドライブ®=波動歯車装置をつくる企業。ハーモニックドライブ®は、ウェーブ・ジェネレーター、フレクスプライン、サーキュラ・スプラインの3つの基本部品からなる減速機。従来の歯車の常識を覆す"たわみ"のある動きで、大きなトルクを生み、正確な位置決めが可能になるという。産業用ロボット、医療、宇宙開発など様々な分野から需要がある。一方、技術者の感性は芸術に通じると、敷地内に美術館を併設し、無料開放するなど芸術分野にも造詣が深く、地域貢献も積極的に行っている。スタジオには長井啓社長を迎える。
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