[サイプラススペシャル]282 伝統的な繰糸機を使った日本で唯一の製糸工場 多品種少量生産で付加価値の高い製品づくり

長野県岡谷市

宮坂製糸所

製糸業は戦前の日本の代表的な輸出産業であった。とりわけ長野県は国内でも有数の養蚕と製糸業が盛んなエリアで最盛期には岡谷には200あまりの製糸工場があったという。
岡谷市にある宮坂製糸所は昭和3年に創業し現在も明治から昭和にかけて使われていた伝統的な諏訪式、上州式の繰糸機を使用して繭から生糸を生産している日本で唯一の製糸工場だ。
中国やブラジルなどとの価格競争で厳しい環境にある製糸業だが、同社は付加価値が高く高級な着物や帯など和装製品の材料となる極細生糸を中心に多品種少量の生産を展開している。

取材後記

多品種少量生産で差別化


代表取締役 宮坂照彦

昭和3年に現在の宮坂社長の先代が創業し86年目を迎えている。同業他社が廃業もしくは転業するなか宮坂製糸所は一貫して製糸業を営んでいる。
戦前からの伝統的な諏訪式、上州式の繰糸機を現在も稼働させながら、1種類を大量に生産する方式から6~7種類の繰糸機を使用しての多品種少量生産に切り替えている。
高級な和装製品の生地に使われる極細生糸を作る最新式の繰糸機が稼働し付加価値の高い製品づくりを目指している。

絹糸を配合したシルクソープ

付加価値の高い製品づくりの一つとして宮坂製糸所では自社ブランドのミヤサカ・トリートメントシルクソープを3年前に開発し高速道路のSAや地元旅館などで販売している。
長野県産の繭から作った生糸を溶かし込んだシルク石鹸は泡立ちが良く人の皮膚に優しく細かい傷などの修復作用もあると好評だ。

岡谷蚕糸博物館内に工場移転

8月1日にリニューアルオープンする岡谷蚕糸博物館。その特徴は宮坂製糸所の工場がミュージアムエリアとして動態展示され見学できることだ。
富岡製糸場が世界遺産に認定され絹や製糸に対する関心が高まっている現在、常時見学できる施設の完成は製糸や絹製品に対する理解がより深まるきっかけになると期待される。

【取材日:2014年06月30日】

企業データ

株式会社宮坂製糸所
長野県岡谷市郷田1-4-8 TEL:0266-23-5687
http://www.lcv.ne.jp/~msilkpro/