長野県千曲市
モキ製作所
薪ストーブメーカーのモキ製作所が3年の歳月をかけて開発した、新製品「IILA(イーラ)」が今年9月1日に発売された。今までの薪ストーブとは大きく異なる「斜め燃焼ストーブ」と呼ばれる独特のデザインだ。省スペースを実現したうえに、新技術のBOXプレートによって燃焼効率も向上した。デザイン性にも優れていて、都市部のユーザー獲得を目指している。
ショールームに設置されている、ひときわ目立つこのストーブ。展示されている従来のストーブは横形のものがほとんどだが、このデザインはかつて目にしたことがない。「IILA(イーラ)」と名付けられたこの新製品には、「斜め燃焼」という世界初の燃焼方式が採用されている。開発したのは、千曲市にあるモキ製作所だ。
デザインもさることながら、そのサイズにも驚かされる。縦横の幅は54cmで高さは83cm、重さに至っては60kgというコンパクトさだ。設置に必要なスペースも1m四方と、従来タイプの約3分の2で済むことも大きな特徴だ。色もブラック・アース・ボルドーと計3色をラインナップした。斜めにすることで、従来よりも大きな炎がキレイに見えるようにもなった。
モキ製作所の薪ストーブは、部品から完成に至るまで全て自社工場で作られる。会社の前身は明治時代に創業したカクモの鍛冶屋で、鉄の加工に100年以上関わってきた歴史が薪ストーブ開発のベースになっている。この新製品も、開発現場で試行錯誤を繰り返して完成した。
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モキ製作所の薪ストーブには「茂木プレート」と呼ばれる鋼板がついていて、空気を対流させることによって燃焼効率を高めている。これに変わるものとして新製品に採用されたのは、新技術の「BOXプレート」。コンパクトなうえに着脱が可能という、画期的な装置だ。斜め燃焼という斬新なデザインも、このプレートによって実現した。
「斜め燃焼ストーブ」は、デザインだけでなく機能も向上している。炉内の最高燃焼温度も従来自社製品の800度から900度に上昇。薪の使用量も大幅に減少したため、薪を置くスペースも約半分ですむ計算だ。高温で完全燃焼されるため灰の発生量は1時間当たり約1.5gで、灰取りも月1回程度で済む。一目で空気量がわかるユーシーエアーコントロール機能も付加された。この機能とBOXプレートは特許出願中で、全くの新技術だ。
「今までは海外メーカーに機能では勝っていても、デザインでは負けていた。この製品はデザインも機能も海外製品に負けないものになった。」と語るのは、社長の茂木国豊氏(68歳)。イタリアの「ピサの斜塔」をイメージして作り上げたという。機能もデザインも社長のアイディアから作られた「メイドイン信州」の自信作だ。
薪ストーブの需要は伸びているものの、その反面で煙によるトラブルも増えている。長野市では2008年から煙公害の自粛を呼びかけているほか、全国の自治体でも薪ストーブの煙公害対策の検討をはじめている。「もし仮に規制された場合は、多くの薪ストーブがその対象となるだろう。でも燃焼効率の高い当社製品にとっては追い風になるはず。」と茂木社長は自信を覗かせる。
今までは住宅や宿泊施設などでも地方の広い土地にある建物に設置が限られていた薪ストーブだが、このタイプであれば都市部のスペースの限られた場所にも設置できる。今までの「暖房器具」という薪ストーブの枠組みを越えて「インテリア性を兼ね備えた実用的な家庭用品」として置かれることが、新製品に込められたモキ製作所の願いでもある。
株式会社モキ製作所
長野県千曲市内川96 TEL:026-275-2116
http://moki-ss.co.jp/