[サイプラススペシャル]231 自社で開発した独自の熱処理技術を製品化 金属熱処理の歪みを従来の10分の1以下に

長野県岡谷市

岡谷熱処理工業

鉄などの金属を加工する際不可欠なのが熱処理だが、この過程で避けられないのが「歪み」。一般的な工程では金属の剛性を高める「焼き入れ」と「焼き戻し」によって、A3サイズで約0.3mmから0.8mmの歪みが生じる。この歪みを10分の1以下にまで縮小する熱処理技術「Ⓖ-syori」を生み出したのが、岡谷熱処理工業。この技術を機械で自動的におこなう汎用機「ULFLAT(アルフラット)」を昨年開発した。

取材後記

金属熱処理の常識を打ち破る

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「鉄製品には熱処理が不可欠だが、それによって歪みや曲りが生じる。この常識にあえて挑戦しました。」と語るのは、社長の西澤邦治氏。岡谷熱処理工業は、社名の通り金属の熱処理や表面処理を専門にしているものづくり企業。金属熱処理技術を追究する中で、「歪み」や「曲り」を押さえた独自の熱処理技術の開発に取り組んできた。


独自の熱処理方法「Ⓖ-syori」

2008年にプロジェクトチームを結成し、信州大学工学部や県の工業技術総合センターとの産学官連携で開発をスタート。19種類の方法の中から、実現の可能性が高い2種類に絞り込み研究を続けた。そして4年の歳月をかけて、極小歪み熱処理技術「Ⓖ-syori」の開発に成功。従来の「焼き入れ」「焼き戻し」の方法に比べて、高精度かつ組織の均一化を高める熱処理加工技術だ。

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新製品「ULFLAT(アルフラット)」

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新たに開発された「Ⓖ-syori」だが、独自の技法のため当初は職人による手作業での加工を行っていた。この職人技のノウハウや技術を詰め込んで、機械によって自動で熱処理をおこなう汎用機を昨年開発した。「ULFLAT」と名付けられたこの機械。命名の由来は「ULTRA FLAT」(ウルトラ フラット)を短縮したもの。金属熱処理による歪みを極限まで押さえようという想いが、名前にも込められている。


歪みは従来の10分の1以下

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一般的な「焼き入れ」と「焼き戻し」では0.3mmから0.8mmの歪みが出てしまうが、ULFLATによる「歪み極小化熱処理技術」での歪みは0.01mmまでに押さえられる。通常は半日以上かかる研磨などの仕上げ加工が数分から2時間で済むため、取引先の負担も大幅に軽減された。短納期化は勿論、省エネルギー化・省資源化・省力化も同時に実現した。


金型製造業の救世主に

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このULFLATの導入によって、従来の取引先であった諏訪地域に加えて、県外企業からも新規の発注が来るようになったという。「この技術によって、納品した後の加工も最小限で済む。取引先の金型製造業者にとってもメリットは大きい。」と西澤社長は語る。今年中小企業を対象とした優秀新技術・新製品賞の奨励賞を県内企業で唯一受賞した。特許も出願中で、独自の金属熱処理技術で更なる需要拡大を目指している。


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【取材日:2013年6月26日】

企業データ

岡谷熱処理工業株式会社
長野県岡谷市南宮1-5-2 TEL:0266-23-4610
http://www.okanetu.co.jp