[サイプラススペシャル]42 提供するのは切・削・磨・貼・膜の一貫した加工サービス

長野県長野市

セラテックジャパン

 セラテックジャパン㈱は、1968年創業、1975年株式会社平林として設立された素材加工専門メーカー、現在の「セラテックジャパン」に社名を変更して17年目を迎えた。本社は、JR篠ノ井駅から、車で5分、敷地内にはA棟からD棟の社屋が、数百メートル北側には、本社第2工場であるE棟が並ぶ。
 セラテックジャパンが主に扱う加工素材は、セラミック、ガラス、水晶、石英、機能結晶など硬くて脆い、いわゆる広義のセラミックスといわれる素材である。素材加工の専門メーカーでありながら、セラテックジャパンの会社案内には、「加工サービス」を提供する、とある。ものづくり企業が提供するサービスとは何か、門をくぐった。

提供するのは「サービス」

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 セラテックジャパンは、自社をMPS「Material Processing Service=マテリアルプロセッシングサービス」を提供する加工専門メーカーと呼ぶ。系列や特定企業に依存しない自主独立の経営スタンスで、国内のものづくりを支える提案型加工サービスを提供している。

 素材の加工は大きく「切(Slicing)」「削(Grinding)」「磨(Polishing)」「貼(Bonding)」「膜(Coating)」の5つの工程に分けられる。素材加工の業界で、この5つの加工工程をすべて一企業で完結できる企業は全国でも数社しかないという。電子部品の切断加工からスタートしたセラテックジャパンでは、この5つの素材加工すべての受託事業を行っている。しかも、電子部品の精密加工においても、光学部品加工においても、である。

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 この事業展開を、宮崎章社長は「お客様の要求、お客様の呟きをいかに拾いこむか」を実践した結果と説明した。セラテックジャパンが意識して加工分野を広げてきたというよりも、切断加工を提供したお客様からの「続いて磨くほうもやってもらえたら」という声や、研磨加工をした後に、「ここでCoatingをしてもらえたら」といわれたお客様の要望に応えた技術の蓄積からだという。つまり、お客様に喜んでいただける加工の形が、この「MPS事業」なのだ。

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 MPS事業では、例えば、お客様がある素材加工において、切断、研削、研磨、と各工程を別々の外注先として管理する必要はないので、切断加工した部品を後工程へ輸送する際の費用も時間も不要、また、万が一、加工工程で不具合が発生しても、工程間で速やかな原因究明が可能、等々お客様の要求される仕様を満たすだけでなく、ものづくりに掛かるお客様のトータルコストを引き下げ、低コストサプライヤーとして提案する「一貫加工サービス」のメリットは非常に大きい。
 また、素材メーカーが、素材を作ることに専念し、そのあとの部品製造で過度の負担が懸念される場合には、素材加工というセラテックジャパンの立場は貴重だ。素材加工メーカーとしては、素材メーカーと部品メーカーの間にあって、双方に利する提案が出来るのだ。どちらもセラテックジャパンにとってはサービスを提供し、「喜んでいただくお客様」である。

「気づくことからはじまる」

 宮崎社長は、「技術力が高いといっても、この業界においての技術は、そんなに大きな差はない。お客様のニーズに気づくことがなかったら、技術も会社も成長しない。」と語る。「会社は個人のものではない。永続的繁栄していくという社会的責任がある」。だから、「お客様の呟き」を聞くことが出来るかどうかが、技術も人も会社も成長する鍵なのだ。もともと多岐に渡る加工素材に加えて、機能素材の開発も進み、「加工技術」の向上は強い挑戦の気持ちがなければ継続できない。

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 セラテックジャパンの今期の品質スローガンは「あたりまえのことを、バカになって、ちゃんとやる」と掲げられている。
 宮崎社長は、現場に出て、時々「今、やっている仕事は、どのお客様の仕事か、そのお客様は何をやろうとしているのか」と社員に尋ねるという。年間お付き合いするお客様は、200社以上、目の前の仕事にのみとらわれると、お客様が何をやろうとしているのか、ニーズを理解しないまま仕事に入り込んでしまいがちだ。だが、それでは「いい仕事」にならない。お客様の顔を想像しながら、自分も、技術も会社も成長する「いい仕事」をして欲しいと、社長は語る。仕事に向かっては、「自分の後工程・前工程を担当する人がいかに楽が出来るか考えること」「仲間からありがとうと言われる仕事をすること」「人に感謝しながら仕事をすること」の3つが大切と、繰り返し話をするという。

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 特徴的なのは、従業員全員の参加型経営である。加工する素材や工程別にチームを作り、それぞれが専門分野に特化した小集団経営組織、ミニカンパニー制を取り入れている。1チームは5~20名、チームリーダーに権限が大幅に委譲され、消耗品の購入から、生産設備、次年度の売上計画も、リーダーを中心にチーム全体で目標達成に向けた活動を展開し、全員が経営に参加する。前期より、多くの利益を出すために、リーダーを中心としてチームが動く。

 また、全社をあげて力を入れている大きな活動の一つに「環境整備活動」がある。セラテックジャパンでは毎日8時30分から9時まで掃除の時間ときめられている。トイレも含め、役職に関係なく社長から新入社員まで全従業員で担当エリアを掃除する。例えば、切削時にオイルを使用する職場、掃除をしていると、オイルの飛散を何とかしたいと考える。「オイルが飛ばないようにカバーできないか」「職場を明るい雰囲気にできないか」「見学のお客様にスリッパで工場に入ってもらうにはどうするか」など、日々の掃除による「気づき」が環境整備への提案になり、そこに必要なものが見えてくる。本来の技術開発も、視野に入る。少しずつの変化が新しい分野の開拓へ、会社全体の成長につながっていく。

 各チームの「環境整備」はきちんと評価される。「私が毎月一回、全職場を回ってポイントをつけます。」と宮崎社長。この評価がチームのコミュニケーション活動助成金の一部となる。改善提案もポイント制として、社員が前に向かっていく「気づき」の心を育てる。「企業の社会的な責任」を説く宮崎社長の使命感が伝わる事例だ。

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そして、さらに

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 社内を歩くと「こんにちは」という気持ちの良い声が響く。08年の6月に業績のピークを経験し、その直後の世界同時不況、09年2月には受注が半減、今もまだまだ回復の途上である。その中で今年の4月には、19名の新入社員を採用、現在社員は175名である。
 お客様はあくまで国内企業である。セラテックジャパンならでは技術開発に力が入る。08年10月に、窒化アルミニウムの研磨専用工場が稼動、本社工場の一部を改修し、新しいチームも編成された。窒化アルミニウムは放熱性・絶縁性が高い素材で、将来、電子回路の熱対策で需要が見込まれる。

 時代とともにお客様の要求は変わる。「切断」が中心であった時代、「研磨」が注目された時代、今、成果が出ていなくても、将来を期待できる部門もある。スタンスは「お断りしないこと」、「加工」は何でも受ける。さらに、セラテックジャパンは機械メーカーとしての一面も持っているが、お客様には設備ではなく、必要な加工サービスを提供することをご提案するという。専用機は、その仕事が終われば、使わなくなってしまう。お客様が必要なのはあくまでも製品、セラテックジャパンの工場を自社工場として利用できる体制を提供する。たくさんのお客様の製品を作る一人ひとりには、様々な仕事が出来る「多能工-所属するチーム以外の仕事も出来る-」であることが求められている。そのための研修にも力を注ぐ。
 「化石燃料主体の20世紀型企業から省エネ、エコロジー成長の中心となる21世紀型企業への転換」、そして、「不況のときだからこそ、さらなる技術を磨く」ものづくり企業の原点がここにある。

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【取材日:2009年8月4日】

企業データ

セラテックジャパン株式会社
長野市篠ノ井岡田500 TEL:026-293-9666
http://www.crtj.co.jp/