[サイプラススペシャル]52 安全快適な水を継続して供給、ライフラインを支える使命 水道用バルブの専門メーカー

長野県松本市

日邦バルブ

 現在、全国で97.4%の人々が利用している上水道、この上水道の、給水装置用器具・機材を設計から、鋳造、加工、組み立て、販売まで一貫して提供しているのが、日邦バルブである。松本市笹賀には本社・松本工場が、また平成6年からは北海道苫小牧市の北海道工場でも生産を行っている。日本では「いつでもどこでも、出て当たり前」という上水道供給システム、日邦バルブは、私たちのライフラインを支えるものづくり企業である。

Get the Flash Player to see this player.

製糸用バルブからスタート

nippov03.jpg

 日本の近代水道の供給は明治20年、横浜から始まる。日邦バルブはそれをさかのぼること4年前、明治16年の創業である。屋号は銅屋(あかがねや)、製糸用のバルブやコックの製造販売から始まった。その後、大正13年には、水道用給水栓・分水栓などの生産を開始、その後は一貫して水道に特化した製品を作り続けてきた。日邦バルブの歴史は、長野県のみならず、全国各地の近代水道に貢献してきた水道給水装置の歴史といえる。

 日々の暮らしに直結する事業でありながら「地味な業界です。」と、今年6月社長に就任した和田晃氏(61歳)は語る。「重要性が認識されたのは阪神淡路大震災の時です。大切な水、ライフラインの水道を担う企業として、地道に継続していくことをめざしています。」

会社の基本姿勢は新しい鋳物工場に

nippov04.jpg

 「新しい鋳物工場を見てください」温和な表情の和田社長に促され、今年5月に稼動したばかりの工場に向かう。広々とした本社敷地内の南西方向にある四角い建物、敷地5100平方メートル、建物ののべ床面積3500平方メートル、堂々たるつくりである。階段をのぼる。「2階に鋳物工場?」と、開けたドアの先、眼下に巨大な作業ラインが動いていた。

 金属を溶かす炉には、真っ赤な炎が見える。工場内で働く人は多くない。高さ25メートルもある天井から下がるレールに沿って、前後左右の動きを繰り返す機器の大きさに圧倒される。コンピュータで制御されているバルブの鋳造ラインである。「かつて、鋳物工場は、3K、5Kの最たる職場でした。」「ここで働く従業員の健康を考え、気持ちよく安心して働くことが出来る環境を作ることも良い製品を作るのと同様に大事なことです。」先ほど伺った和田社長の言葉を実感する。


nippov05.jpg

 時折炎が噴出す炉の近くには、温度コントロールされた部屋があり、ここで鋳物の生産ラインを監視する。溶解した金属の注ぎ口の近くには、監視カメラが設置されている。更に少し離れたところには避難スペースもある。1150度という溶解した金属の熱さからスタッフが離れるときに使われる。バルブの鋳造には、砂型を作ったり、砂型を壊したりと、「砂」が欠かせない材料だが、最新の砂処理設備が作られ、砕かれた使用済の砂は、太い管で「砂処理室」に運ばれていく。工場内には、「防塵マスク着用」「耳栓着用」と細かな指示が各所に表示されている。騒音や排気、空調装置、いずれも環境に配慮した設備だ。和田社長と言葉を交わすスタッフの表情にも余裕が見える。

 この新工場は、製品の品質を高め、コスト削減等の生産能力の向上のために建設されたのはもちろんであるが、「鋳物はバルブ生産の生命線」であればこそ、そして命につながる水に関わる企業であればこそ、働くスタッフの安心安全な環境を担保しなければという、経営の熱いメッセージでもある。

 和田社長は、6月に認証取得した労働安全衛生マネジメントシステム「OSHMS」の運用にも、意欲を燃やす。「システムは運用と継続が大事です。社員のためにもっとできることがあると考えています。」

時代のニーズに応える

nippov06.jpg

 上水道も、普及・維持管理の時代から、多様なライフスタイルに応じた新たな提案が求められる時代になっている。例えば、断水のお知らせをこのごろ見かけなくなった、都会でも水道の水がおいしくなったという声が増えた、などなど、これらの利便性の陰には、日邦バルブをはじめとする水道の供給装置メーカーの開発努力がある。日邦バルブでは、ここ十数年メータ周りのユニット化をすすめている。

 例えば、断水の不便さの解消は「メータバイパスユニット」の開発に負うところが大きい。8年に一度の交換が義務付けられている水道メータ、しかし、交換のためには、対象エリアの水の供給をとめなければならない。断水の告知をエリアの全戸に徹底させることはむずかしく、費用もかかる。また、水の供給をとめられない場所もあるなど、断水せずにメータの交換ができる技術が待たれていた。メータの前後に切替弁をつけ、バイパスを作ってメータを交換する「メータバイパスユニット」の研究が実った。日邦バルブの製品は、東京都水道局も採用しており、全国シェアは6割を超える。

nippov07.jpg

 また、「キャビネット型集合メータユニット」も、時代のニーズの中で工夫された製品だ。これは、小規模アパートやマンションで、従来土の中で分岐配管を行っていた水道のメータを、地上でまとめてキャビネットの中に収納し、集中管理できる製品だ。縦型のキャビネットは場所も取らず、施工も早い。検針やメータの切替も容易、水道の利用者である我々のみならず、水道事業者、水道の設備事業者、ともに恩恵が大きいバルブ製品だ。

 日邦バルブは、製品だけではなく、原材料でも一歩先を行く。その一つが、鉛を使わない青銅合金、水質の安全にも配慮したエコロジカルな素材だ。平成14年鉛フリーの青銅合金を独自に開発、「セイフアロイ」と命名した。平成15年には量産化にも成功し、現在は、バルブのすべての接水部分をこの素材に切り替えるなど、安全性の高い製品を提供している。素材にも製品にも「技術の日邦バルブ」が光っている。

nippov08.jpg

システムは、在庫管理にも不可欠

nippov09.jpg

各地の水道事業者のそれぞれの規格に適合したバルブの種類と数は、膨大だ。今は信頼性を高めるため、組み立てて出荷する製品もあるそうだ。50センチほどの台座付きの製品には、バルブをはじめ、ねじや止水栓など、様々な形状と大きさの20個を超える部品が使われているという。これらの部品の在庫管理も、今や、メーカーの役割だ。松本工場内の松本配送センターには常時4000種、約1万点の製品が、バーコードで管理されている。北海道工場内の北海道配送センターには2000種類、福岡営業所内の九州配送センターにも2500種類の製品が置かれている。全国10箇所の営業拠点ともオンラインで結ばれ、製造過程のシステム化と同時に在庫管理もシステム化している。「安心を担保する」ライフラインを支えるためには欠かせないシステムだ。

生活を支える産業として

nippov10.jpg

商品の開発には、毎月開かれるSCI(サービス・コスト・イノベーション)会議、クレームハーフ会議が機能している。規定や規格に合致していても、運用面で改善すべき製品もあるという。ニーズを積極的にキャッチし、その情報を、定期的に開かれる商品開発委員会で検討する。設計と開発・試作、金型製作、鋳造、加工組み立て、品質検査出荷まで、一貫した生産体制がある日邦バルブだから可能な、開発と生産の流れである。

「明治16年創業の伝統は、継続的に生かされていかなければならない。」「お客様が使ってくれるから造れます」「企業は利益追求ではなく、社会の中で成り立っている。社会的に育っていくものです。」和田社長の言葉には、生活を支える産業としての使命感が溢れていた。

nippov11.jpg

【取材日:2009年10月19日】

企業データ

株式会社日邦バルブ 長野県松本市笹賀 3046 TEL:0263-58-2705
http://www.nippov.co.jp/