[サイプラススペシャル]77 ポリシーはヒューマン・テクノロジー 社会基盤を支える誇り

長野県佐久市

高見沢サイバネティックス

どこの駅にもある自動券売機。切符と釣り銭がでてくるまで約2秒。今では当たり前となっている券売機だが、これを生産しているのが高見沢サイバネティックス。生産拠点と技術研究部門を佐久市に置き、自動券売機製造分野では国内のシェア約3割を持つ、ものづくり企業だ。

Get the Flash Player to see this player.

当たり前のことを当たり前に

世界初の「多能式自動券売機」

tacy03.jpg

高見沢サイバネティックスは、1969年、㈱髙見澤電気製作所の自販機事業部の一部が独立して設立された。創業者は現社長の髙見澤和夫氏の父、髙見澤敏夫氏である。電子部品であるリレーの製造からスタートし、そのリレーを制御デバイスとして使った券売機を生産。パソコンなどが無かった時代に、硬貨と紙幣が使えて、料金別に大人・こども用のキップを購入できる世界初の「多能式自動券売機」の製造・販売を開始した。1976年には韓国国鉄向け券売機を国際入札で落札、その技術力は国外でも認められた。

「券売機は意識しないで」

「皆さんはキップを買う時に券売機を意識することなんてないでしょう?」髙見澤社長は問いかける。「券売機は鉄道を利用するための"手段"でしかないのです。存在感があるのは、きちんと動いていない時。利用者はどんな券売機か知らない方がいいのです。」確かに切符に印刷された金額や行き先以外の文字は読まないし、場合によってはつり銭を数えることもしないほど、信頼されているシステムだ。

tacy04.jpg

鉄道各社への導入に当たっては、駅員の仕事が奪われるという声もあったが、交通システムの発展とともに、自動券売機は、駅業務の省力化システムとしてなくてはならないアイテムとなった。さらに、高見沢サイバネティックスでは、自動精算機、回数券や定期券の発行装置、自動改札装置、カード発売機や、それらをトータルで管理するシステムなど、利便性を実現する技術を開発。社会のニーズに応えるシステム機器を提供し続けている。

「社会が必要とすることを当たり前にやる。当たり前に出来ることが大事です。」髙見澤社長の言葉から、製品を通して社会に貢献しているというプライドと、更に快適な社会環境を創り出していこうとする使命感が伝わってくる。

お金を処理する技術

コア技術はT.B.C.C.

tacy12.jpg

高見沢サイバネティックスのコア技術はT.B.C.C.というキーワードで総称されている。「T」はTicket、印刷や発券技術。「B」はBill、紙幣のことで、紙幣を識別して装置内で搬送し、釣銭を放出する技術。「C」はCoin、硬貨処理技術だ。1円、5円、10円、50円、100円、500円の硬貨をそれぞれ識別し、ホッパーと呼ばれる払い出し装置に集め、釣り銭を出す。最後の「C」はCard。磁気カードや非接触ICカードの情報を読み書きしたり、カードをスピーディに搬送するための処理技術である。

自動券売機ではお金を投入後、発券までの2秒間に、T.B.C.C.がスムーズに完璧に動作する。金銭授受の正確さはもちろんのこと、乗車券か入場券か、紙幣や硬貨の変形や偽造はないか、正しい印字か等々、瞬時に判断し処理している。稼動は365日。「当たり前」のことではあるが、このスピードと正確さを実現している技術に感動すら覚える。

硬貨が磨り減っても

tacy05.jpg

その感動的な技術の裏側を、自動券売機用硬貨処理装置の検査工程で見ることが出来た。投入された硬貨が金種毎に決められたホッパーに落ちていく。1秒間に18枚もの硬貨が計数できる。計数と同時に識別も行うが、これには硬貨が持つ固有の磁気情報(波形・重さ・厚さ等)が使われる。難しいのは流通している硬貨の状態がそれぞれ違うこと。使用年月によって磨り減ったり、多少の変形や変色が生じたり、場合によっては細かいキズもつく。厳しく識別すれば使用できない硬貨が増え、甘くすると機械の信頼性が下がってしまう。(この検査で使われる硬貨はもちろん本物。繰り返し行われる装置チェックに使用された硬貨は磨り減ってしまい、両替のために銀行の窓口に持っていくと訝しがられる程だという。)この「許容範囲」の緻密な設定が、高見沢サイバネティックスのノウハウ。40年の実績は簡単には作れない。

あわせて、一通りでない人の動きを念頭に、システムは作りこまれる。新しい路線が開通したり、駅が新設されると、システムも変更が必要。特に料金体系が変わると、大きな変更作業となる。これも高見沢サイバネティックスの"社会を支える"仕事だ。

金種やカードの種類が増え、機能が追加されても、機器そのものは設置スペースが決まっているため大きくすることはできない。個々の技術と実装化の技術、求められる利便性はますます高度になっていく。

必要不可欠な製品作りへ

tacy11.jpg

高見沢サイバネティックスのT.B.C.C.処理技術は、今や自動券売機だけに使われるものではない。それぞれの技術を特化、または組み合わせることで、様々な分野の製品に応用されている。

例えば、中国向けの製品では、コインユニットだけでなくトークン(電車等に乗車する際に使用するコイン型プラスチックで切符に相当するもの)の払出しユニットを納入。欧州ではユーロ硬貨用の処理装置を供給している。金融業界向けのATM用に紙幣や硬貨の処理ユニットが採用されている。また、近年ICカードの利用シーンは拡大する一方である。高見沢サイバネティックスは、チケット発券装置やカード処理装置のみならず、入退場に使われる自動ゲートやセキュリティーゲートも製造。特にセキュリティーゲートの生産は国内トップシェアを誇っている。他にも駐輪場管理システム、防災計測システムの地震計などをラインアップ。どれも社会インフラを守る重要な役割を持つ製品だ。

tacy08.jpg

「新製品開発か、死か」

みんなで新しいものを

tacy10.jpg

「みんなで新しいものを作り出したいという強い気持ちが、会社を発展させてきた」と語る髙見澤社長。先代社長の時代から社内には「新製品開発か、死か」という言葉があるそうだ。製造業が生き残るためには常に新製品を開発し続けなければならないという強い意志の現れである。毎月社内からアイディアを募集し、新製品開発会議を開く。年1回はテーマを決めて考えを募る。なかなか全員参加というわけには行かないが、様々な部門からユニークな意見が出てきて、例えば「移動式温度試験装置」のように、その提案の中から生まれた製品もあるという。「そのために一番大事なのはコミュニケーションです。みんなで議論しあうことが大事です。」髙見澤社長は言葉を継いだ。

ポリシーはヒューマンテクノロジー

高見沢サイバネティックスの製品は、自動券売機に代表されるような社会インフラの構成要素として、安定した運用を求められるものがほとんどである。製品を作って終わりではなく、ユーザーに納入したあとも、メンテナンスという大切な仕事が続く。

「技術は一部の専門家のものではなく、多くの人々に利用されてこそ技術である」という信念が、社名にも掲げられている「サイバネティックス=人工頭脳機械」を生み出す原動力である。そして、「ヒューマンテクノロジー」の源でもあるのだ。

【取材日:2010年5月25日】

企業データ

株式会社高見沢サイバネティックス 東京都中野区中央2-48-5 TEL:03-3227-3361
http://www.tacy.co.jp/