[サイプラススペシャル]87 「小さな水車」でエネルギー革命!? 【特集】信大工学部のものづくり その①

長野県長野市

信州大学工学部教授 池田敏彦

小さな水力発電が未来のエネルギー
信州大学工学部・環境機能工学科教授 池田敏彦

研究室につくられた、簡易型水路。
水門が閉まっていくと、水車が勢いよく回りはじめました。
この勢いよく回る水車こそ、未来のエネルギーの姿だというのです。

【特集】信大工学部のスゴい!ものづくり。第1回は、信州大学工学部・環境機能工学科の池田敏彦先生の研究「小さな水力発電システム」に注目です。

勢いよく回るポータブル水車

小さいからスゴい!水力発電

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池田先生の研究テーマは、ずばり水力発電。
水力発電と言えばダム。しかし、池田先生の研究は、ポータブルタイプ。とても小さな発電の仕組みです。
実はこの研究のポイントは"小さい"コト。小さいからこそスゴイんです。

まず、大型設備が必要ないので環境への負荷も少ない。
さらに、低コストで導入できるなど、メリットが多いといいます。

長野県にピッタリ!のカタチ

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「長野県は、水資源が豊富なんです。小さな流量とか小さな落差の流れがいっぱいあります。」
山や小川の多い長野県のエネルギーに注目した池田先生。
「小さな流れや落差から、大きなエネルギーが取れるような水車を開発しています。」小さい発電システムこそ、長野県や日本の環境にピッタリのカタチです。

小さいけれどパワーは充分!

カタチは小さいけれど、パワーは充分。
「ジェット式」と呼ばれる水車に勢いよく水が吹きつけられると、LED電球が眩いばかりに光り輝きます。「衛星電話用の電源や、シカよけ用の電気柵用の電気など、使用を限れば充分に使える発電量です。」
「家庭でも使いやすい電気量だからこそ、利用の範囲が広がる」と、池田先生も自信を示します。

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メイドインナガノのエネルギー革命

もともとは風力発電!?

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県内外で実績を重ね、行政からも注目されている新しい発電のカタチ・小さな水力発電。しかし、なぜ池田先生はこの研究を始めたのでしょうか?

「長野県は盆地が多いので、風は吹きません。はじめは風車の研究をしていましたが、回らないんです。」
実は、池田先生はもともと風力発電の開発をしていました。信大工学部にも先生が設計した風車がありますが、「回らない風車」などと揶揄されるそうです。

失敗は発明の母

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「風なければ風車は回りません。だから、水車を90度寝かせ、水の中に入れました。つまり水車です。」
風力発電の仕組みを水力に応用し、9年前から研究を始めたという池田先生。「長野県は風より水。だから水力からエネルギーを取り出そうとしたのが水力発電のきっかけです。」
風力発電での失敗があったからこそ、今の研究テーマにめぐりあえ、今ではニッポンの先駆けとなっています。

目指すは「エネルギーの地産地消」

「エネルギーの地産地消ができるといいですね」と、池田先生。
「小さな川や、滝、農業用水など、わたしたちの身の回りに、実はエネルギー源がたくさんあるんです。だからコンパクトで使いやすい水車発電機が開発できれば、エネルギーの地産地消が可能です。」

大手電力会社とも協力して研究を進める池田先生。 豊かな自然を生かしたメイドインジャパンのエネルギー革命が、長野から起こるかも知れません。

【取材日:2010年8月24日】

企業データ

(研究室のご案内)信州大学工学部 環境機能工学科 池田敏彦

http://www.kankyo.shinshu-u.ac.jp/~ikedalab/