[サイプラススペシャル]92 未来を変える!バイオマス研究最前線 【特集】信大工学部のものづくり その②

長野県長野市

信州大学工学部教授 天野良彦

ご存知ですか?「バイオマス」
きのこ栽培で不要になった「おがくず」が「宝の山」に

「バイオマス」という言葉をご存じでしょうか?
バイオマスとは生物資源のこと。石油などの化石燃料を使わずに、植物からガソリンの代わりになる燃料や、プラスチック素材の原料をつくることができます。

【特集】信大工学部のスゴい!ものづくり。第2回は、信州大学工学部・物質工学科の天野良彦先生。「きのこのおがくずが資源に!?」バイオマス研究の最前線に注目です。

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地球を救う!?バイオマスって何?

エネルギー・環境問題を解決する!

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 「エネルギー問題や環境問題、これらが一気に解決する可能性があります。」
 天野先生の研究は「バイオマス」。これまで石油に代表される化石燃料に頼っていた産業資源を、バイオマス(生物資源)に切り替えることができれば、地球規模のいくつかの深刻な問題を解決できる...夢の研究です。

キシリトールからバイオエタノールまで

 ガムなどに使われる甘味料「キシリトール」や、ガソリンの代わりになる「バイオエタノール」、さらにプラスチックのような「樹脂」。驚くなかれ、これらはすべて キノコづくりで不要になった"おがくず"などが原料になっています。(本来は石油などから作られています。)
 「私たちは、今まで使われていなかったもので有用なものを作っています」という天野先生の研究の一端です。

バイオマスはどうやってつくられるのか?

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18気圧200度の水でおがくずを分解

 「最近、グリーンイノベーション(緑の革命)ということを盛んに言われるようになっています。環境技術というのが非常にクローズアップされています。」天野先生の研究室では、どのようにバイオマスがつくられるのでしょうか?

 研究室を占領する、銀色の大きな装置「リアクター」。この装置におがくずを入れると、通常の18倍の圧力で200度以上に熱した水で、おがくずの成分が分離されます。
 リアクターから出てきたのは、黒糖のような香ばしい香りがするドロッとした液体。これを大型脱水機のような遠心分離器にかけ、液体と固体に分けます。

遠心分離機のあと...「酵素の力」

 残った固体は、プラスチックのような樹脂素材の原料になります。その名も、石油代替・カーボンニュートラル素材。また、液体は酵素の力でガソリンの代わりになるバイオエタノールや、新規食品素材キシリトールなどになります。

 原料はおがくずの他、 基本的に植物ならなんでもOK。不要物が原料とはいえ、食品やクルマの燃料というように、作り出されたものは安心・安全の高い信頼性をクリアーします。

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「未来を変える!?」バイオマス研究

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「研究の守備範囲」が広い!

 「前処理の技術から微生物・酵素・遺伝子まで、多岐にわたる研究を全部まとめて一つのプロセスにしなければいけない。これがタイヘン。」天野先生の研究室は、とにかく広範囲の研究が求められるといいます。
 前述の大型装置を扱う学生は、つなぎの作業着で分離に適した時間や温度などを研究するし、分離後の酵素の研究をする学生たちは白衣に身を包み、試験官の中の微細な変化に目を凝らしていました。

 さらに、新しいバイオマスの原料になる新たな農作物を研究したり、精製された樹脂や糖などをいかにして利用するかを研究したりと、とにかく「研究の守備範囲」が広いのが特徴です。

「研究の守備範囲」が広い!

「農業や食品加工が盛んな長野県には、たくさんのバイオマス資源が眠っている」と天野先生。
きのこの栽培に使われたおがくずや、ジュースの搾りかすなどは、いままで「産業廃棄物」となっていまいました。しかし、バイオマスの研究によってこれまで捨ててしまっていたものが「資源」になります。
天野先生の研究は、「おがくず」が「宝の山」になる大きな可能性を秘めています。

【取材日:2010年9月21日】

企業データ

(研究室のご案内)信州大学工学部 物質工学科 天野良彦
http://wwweng.cs.shinshu-u.ac.jp/CHEM/lab_biochem/