[サイプラススペシャル]98 もっと明るいもっと小電力のLED照明を 創業50年、新たな事業の柱

長野県塩尻市

クオンタムリープテクノロジー

「無線通信機器は確かにウチの主力事業ではありますが、今回、その部分では、あまりお話することはありません。」長野県塩尻市に本社のあるクオンタムリープテクノロジーの社長小川洋史氏の第一声である。2006年の社長就任以来、新たな事業の柱としてLED照明機器を設計・開発、自社ブランド「てるてる」の販売で一気に売上高の倍増を目指す。社長の意気込みが伝わってきた。

無線事業は確かに安定した事業だが

クオンタムリープとは

qlt03.jpg

 クオンタムリープテクノロジー株式会社の前身は、1960年に設立されたニッセイ電子工業。主に無線通信機器の製造を手がけた。今も国内向けの無線モジュールと中国で使われている産業用データ伝送機を中心に無線通信事業が売り上げの多くを占めている。

 社名を「クオンタムリープテクノロジー」と変更したのは2007年。クオンタムリープ=非連続な飛躍という社名には、新規事業を立ち上げ、将来に向けた大きな飛躍そして未来へ永続的な成長をとげるという"意志"がある。


このままだったら成長はない

qlt04.jpg

 クオンタムリープテクノロジーが、「てるてるブライト」という自社ブランドでLED照明機器の販売を始めたのは2009年10月、1年前のことだ。「無線事業は、確かに安定した事業です。ここで使われているのは、確立されたアナログ技術。非常に特殊な技術で競合もあまりありません。しかし、経営とは、今あるもので2~3年食べていければいいというものではない。」大きな成長が見込めない無線事業に強い危機感を持った小川社長は、LED照明事業を成長の柱にすべく舵を切った。

時は今、LEDの市場に参入

qlt05.jpg

 「LED照明は第4世代の明かりです。マーケットは何十年に一度の革命が起きています。」2015年には日本国内でも1兆円規模に拡大するというLEDの市場、小川社長は「この"革命"の時こそが、クオンタムリープテクノロジーの成長のチャンス」と考える。もちろん、先行する企業も多い。LED照明の特徴である「同じ明るさの白熱灯器具と比べて消費電力が少なく、環境にやさしい。」とか「電気代が大幅に節約できて経済的」という文言を見聞きしたり、駅や公共の場のネオンサインなどでその明るさを実感する機会も増えている。

 LED照明事業に参入してようやく1年のクオンタムリープテクノロジー、MADE IN JAPANにこだわった高品質でシェア拡大を狙う。

差別化のポイントに無線通信技術

qlt06.jpg

「てるてる」と無線技術のコラボ

 クオンタムリープテクノロジーは50年にわたって培った電源・回路・熱設計そして電磁ノイズコントロール等の無線通信機器の要素技術を最大限活用している。その結果が、先行他社よりも価格で3割減、品質保証は1年間長い5年間のLED蛍光灯「てるてるブライト」となった。LED照明と無線要素技術のコラボレーションが独自の展開を可能にした。しかもメインターゲットは事業所向け、オフィス全体での効率的なLED使用を提案する。複数の照明があるオフィスでは、最大で256種類のIDを割り当てることにより、無線で照明の電源を遠隔操作ができるシリーズも販売している。また、今年から、業界で最も明るく防水(IP66規格)・調光機能もついたLED電球「てるてるぼ~る」を発売した。更に年内には、LEDビーム電球の販売も開始する。

LED蛍光灯は資産 リースで普及を!!

 「節電効果もある、CO2削減にも効果的、省エネで環境にやさしい」と言われながらも、価格や取り付け器具の交換などまだまだLED照明の普及には課題も多い。一番のネックは価格、蛍光灯タイプのものだと最低でも1本1万数千円。長期的に見ると経費は十分に見合うとわかっていても初期費用としては躊躇する価格だ。そこで需要を取り込むためにクオンタムリープテクノロジーが考えたのが「リース」である。「蛍光灯をリースする」という発想だ。明るさ、デザインや寿命にこだわり、価格を下げても使われなければ意味が無い。「LED照明は資産」という考え方をリース会社や銀行に理解・納得してもらうまでに1年、LED照明で初めて5年間の保証がついていることが評価され、ようやく3社とリース契約を結ぶことができた。実際にビル1棟を考えると、リース料金は日々の節電分で賄うことができ、最初の1年でコストは回収できる。

伝統的なものの考え方の中ではやっていけない

生産拠点を持たないネットワーク型によるものづくり

qlt07.jpg

 「リースでLED照明を」という発想やそれを現実化する行動力からもわかるように、クオンタムリープテクノロジーには「これまでの考え方」は通用しない。現在社員は20名、社内に工場はない、ファブレスである。本社では設計開発と製品の品質検査のみ、製造は協力工場に依頼する。販売は、ネットでの通販や代理店を通して行っている。

 小川社長は「ものづくりとは企画・設計開発から製造加工販売までの一連の流れ、生産手段を作り、それを稼働させて、ものを作っていたら時代のスピードとニーズに適応できない。餅は餅屋に任せる。クオンタムリープテクノロジーのものづくりは、スピードとニーズに対応していくいわばネットワーク型組織」と説明する。

qlt08.jpg

そして「ものづくりで永続的な成長」へ

qlt09.jpg

 LED照明の市場は、もちろん日本だけではない。既に欧米での販売を視野に入れている。小川社長は10年に及ぶイタリアのアルコトロニクス社での経験を元に、ビデオ会議やテレワークなどのコミュニケーションツールも積極的に活用している。

 高い技術力を持つパートナーはネットワークを使ってさがし、協業体制を組む。その上でその時々に必要とされる製品を作り、社会に提供していく。現時点での製品の一つがLED照明なのだ。永続的な成長へとクオンタムリープテクノロジーのものづくりのスピードは加速する。

【取材日:2010年10月18日】

企業データ

クオンタムリープテクノロジー株式会社
長野県塩尻市広丘野村1931 TEL:0263-88-2651
http://www.qlt.co.jp/