[サイプラススペシャル]142 「おいしい」を食卓に届ける技術 信州の餃子を全国に

長野県松本市

信栄食品

「唐辛子」「梅」「野沢菜」「フルーツ」そして「松本山雅」、これは身近な食品の商品名なのだが、ご存知だろうか。答えは、『餃子』、作っているのは1997年創業、長野県松本市並柳に本社を置く信栄食品。「餃子の業界で“信栄食品あり”となりたい」餃子にかける思いを神倉藤男社長(43才)は熱く語る。

餃子は国民食です

sinei-foods03.jpg

 餃子といえば宇都宮・静岡が有名だが、スーパーやデパートの総菜売り場でおいしそうな焦げ目のついた餃子を買い求め、食卓に並べる家庭も多い。この総菜用冷凍餃子を製造し、北は福島県から、四国や広島県まで全国1800店舗に販売をしているのが、信栄食品だ。
 「餃子はもう国民食ですね。」という神倉社長の言葉は、信栄食品の餃子製造工場に足を踏み入れると納得できる。業界で最速という1時間に15000個の餃子を成型する機械がフル稼働。隣にはミートチョッパーと呼ばれる肉を挽く機械、餃子の皮を作る製麺機、奥の冷凍庫から運び出された餃子を待つのは、自動包装ライン、休むことなく冷凍餃子の製造が続く。社員は1日2交代で働くが、「工場が手狭で注文に生産が追いつかず、工場の移転も考えています。」

sinei-foods04.jpg

安全安心、素材は国産にこだわる

sinei-foods05.jpg

 「業務用商品の製造は、〇〇スーパーの××店の餃子というお客様の名前を借りた仕事、責任の大きさと重さは、格別です。」神倉社長の表情が引き締まる。
 その社会的責任の一端は、2009年5月、食品安全マネジメントシステムの国際規格「ISO22000」の認証を総菜用餃子製造メーカでは全国で初めて取得という形で現れた。原材料はすべてトレースできる安全なものを使用、例えばキャベツやにらなどの野菜は契約した農場から厳選して購入する、豚肉も、皮に使う小麦粉もこだわる。「おいしい餃子は安全安心な食材から」この信念が製品の信頼に繋がる。製造工程における安全性は、生産ラインの細菌検査、衛生管理は勿論のこと、包装ラインに組み込まれたX線による異物検査機、金属探知機で確保する。
 冷凍・冷蔵設備も「手狭の工場」内で大きなスペースを占める。風味や鮮度を保つため、成型された餃子はマイナス40℃で30~40分間、急速冷凍する。包装された餃子は次々に冷凍庫に運び込まれ、保冷車両への積み込みを待つ。安心安全な食品を食卓に届けるという信念を現実にするスピーディな動線だ。

オリジナルな味を出す

sinei-foods06.jpg

 総菜用冷凍餃子が生産量の95%を占める信栄食品、一口に総菜用といっても1800店舗に届ける餃子は一つではない。1個の大きさは6㎝7㎝8㎝の小粒、通常、大粒と3種類、重さも12gから30gまでが基本だが、各販売店のオーダーに可能な限り応える。肉、野菜といった材料の違いだけではなく、皮の厚さや食感にも配慮、何よりも発注先のA社にはA社の味、B店にはB店ならではのオリジナルな味の餃子を提供できるのが信栄食品の強みだ。
 広島・長野といった地域による好みの違いもあるだろう。試作も含め、受注の数量や納品形態、焼き方のアフターフォローまで、その細やかな対応はいわば食のオーダーメード、神倉社長の餃子一筋にかける思いが伝わってくる。

皆がおいしいという味よりは

 味の研究のため開発担当のメンバーとよく食べ歩きをするという神倉社長、餃子だけではなく、6軒7軒といろいろな店をまわるとか。「A級もB級もすべて食べていないといい餃子は作れません。」ここから「味を作り出すノウハウは誰にも負けない」という自信も生まれてくる。皆がおいしいという完璧なものよりは、満足度が80%程度、家族みんなが手軽に食べられる万人向けの味を研究するという。バイヤーの注文を聞きながら、信栄食品からの提案も加味された"国民食"餃子の新しい味が食卓に届くのだ。

直営店での展開も

sinei-foods08.jpg

 「この8月は梅の冷やし水餃子や緑の餃子がよく出ました。予想以上です。」これは東京池袋のナムコ・ナンジャタウン餃子スタジアムの直営店さくらでの来店者の反応だ。(店名の「さくら」は自宅近くにある桜の名所にちなんだもの、社長が好きな春の風景だそうだ。)

 業務用卸売りの餃子が主力ではあるが、時代にマッチした味は何か、提供した商品への反応を直接知りたいと、全国有名店11社がしのぎを削る「池袋餃子スタジアム」に7月16日に「ぎょうざのみせさくら」をオープンさせた。2010年の長野県内で設置した2つの直営店に続く展開だが、1日2000人から3000人、休日には1万人を越える来場者があるという「池袋餃子スタジアム」での情報収集・情報発信はまさに全国規模。加えて国内最大級の屋内型テーマパークナムコ・ナンジャタウンへの出店は長野県で2番目、長野県の代表としての意気込みはメニューからも伺える。「信州味噌だれ餃子」は茅野市の味噌メーカーとつけだれを共同開発した一品、「唐辛子餃子」は善光寺土産としても人気のある一味唐辛子を餡に加えた。ほかにも安曇野市のわさびを自分ですりおろして食べるメニューや、信州産のきのこを使った餃子も開発、長野県内企業と連携した自社の特徴ある製品作りは、これまで以上に、付加価値のある美味しい餃子を提供するための大きな力となっている。

sinei-foods10.jpg

 信栄食品オリジナル餃子は通信販売やイベントで活躍する移動販売車「さくら号」でも提供しており、信州名産品を使った餃子が信栄食品の新しい製品の柱になっていくに違いない。

安全安心、そして"次の一手"を

sinei-foods11.jpg

 「食の嗜好のサイクルは早く、直営店でそのニーズ=次の一手をキャッチしたい」「しかし、直営店の展開は卸という母体を深く厚くそこに集約していくためのひとつの手段、ウチ規模の企業は全国に何百社もありますから」。餃子については他社には絶対負けたくないと強調する神倉社長。夢は餃子をもっと国民食にすること、少子化高齢化に伴う社会の変化は「食」にも直結する。安全安心で低価格、しかもカロリーを気にしないで毎日でも食べることが出来る餃子を追求しつつ、茹でたり蒸したりする餃子の販売も始めている。

sinei-foods12.jpg

今季から地元サッカーチーム、JFL松本山雅のスタジアムバナースポンサーになった信栄食品、松本山雅のチームカラーでもある緑色の松本山雅餃子の販売にも力が入る。Jリーグ入りを目指す松本山雅チームとともに大きく成長していきたい、神倉社長の餃子にかける思いはさらに大きく羽ばたく。

【取材日:2011年09月12日】

企業データ

株式会社 信栄食品
長野県松本市並柳4-1-37 TEL:0263-26-6261
http://www.sinei-foods.co.jp/