[サイプラススペシャル]147 ペットボトル製造装置のトップブランド 世界シェア2割!製品の約90%は輸出用

長野県小諸市

日精エー・エス・ビー機械

アレもコレもソレも“あの”ペットボトルは
「メイドイン・ナガノ」の装置がつくっている

「これは一体、なんでしょう?」 女性社員が手にした、試験管のようなカタチをした透明の容器。「プリフォーム」と呼ばれるペットボトルの原型だ。プリフォームを風船のように膨らませ、ボトルにしていく。
この「ペットボトルをつくる機械」こそ、日精エー・エス・ビー機械の主力商品だ

ASBは、ペットボトル成形機の専門メーカー。
製品の9割は海外に輸出され、世界シェアは約20%というトップ企業。「メイドイン・ナガノ」の機械でつくられた様々なペットボトルが、世界中で使われている。

狙う市場はニッチ!多品種少量ワンステップ機

ペットボトルができるまで

小型トラックほどの大きさの、青を基調とした専用機械。
カタン、プシュー。カタン、プシュー。試験管のような容器が金型に挟まれ、空気を送り込まれ、瞬く間にペットボトルへと姿を変えていく。

長野県小諸市。浅間山のすそ野にあるペットボトル成形機の専門メーカー、日精エー・エス・ビー機械。体育館の数倍はある工場にはいくつもの成形機が並び、組み立てや最終調整が行われていた。

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大量生産でなく小ロット多品種に特化

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「ASBが得意とするのはワンステップ機。材料を入れると完成まで一貫生産できます。」プリフォームを手に女性社員は説明を続ける。「ワンステップ機は、小ロット生産に適しています。」

白い粉ザラメのように見えるのは、ペットボトルの素になる「ペット樹脂」。ここから二つの工程を経てペットボトルが完成する。
まずは、樹脂を溶かし金型に流し込み、試験管のような「プリフォーム」がつくられる。次に、出来上がったプリフォームを熱し、型の中で縦に伸ばし、空気を入れて膨らませると、おなじみのペットボトルになる。

飲料用ボトルなどの大量生産では、プリフォームをつくる機械と、プリフォームからペットボトルにする機械が別々になる。しかし、ASBはあえてこの量産用機械の大きな市場でなく、「多品種少量」用のニッチ(すき間)を狙った。

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ガラスの代替!?美しいペットボトル

色とりどりの容器。カタチも様々。ガラス瓶のように見えるが、これらすべてがペットボトルだというから驚く。ASB本社工場の入口は、ペットボトルのショールームのようだ。飲料はもちろん、化粧品からシャンプー、洗剤、医療用まで、私たちがよく目にする容器もある。
ここに並べられたすべて「ASBの機械でつくられた」ペットボトルだ。ペットでは難しいと言われるジャム用の容器もつくること出来る。

「1台の機械から多品種の製品を生産できるというところに、非常にこだわっている。」
日精エー・エス・ビー機械の青木高太社長は、ASBのこだわりの一つが「多品種生産」できる機械づくりと考える。

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世界で飛躍する「メイドイン・ナガノ」

金型交換時間を短縮、より多品種生産が可能に

「金型交換時間を従来の三分の一に短縮。生産性が向上し、より多品種生産を可能にした。」営業担当の岩月善宣課長が紹介するのは、ワンステップのペットボトル成形機「ASB-70DPH型」。世界中に1000台以上を出荷したベストセラー機種で、食品や医薬品、化粧品容器など幅広い用途に対応可能、という。

幕張メッセで開催された国内最大級のプラスチック国際見本市「国際プラスチックフェア2011」。青い光に彩られたASBのブースでは、金型交換のデモンステレーションが行われた。大陸中国やアジアを中心に、国内外問わず多くの人々が集まっていた。
「機械は1台数千万円。買うほうも真剣」と、岩月課長。

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いち早くインドに

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「よいモノをつくりたい。その気持ちに妥協はない」と、青木社長。
ペットボトル製造装置の決め手は、寸分狂わない金型技術。精密で高度な技術を要する金型づくりは国内で...と思いきや、ASBの金型は7割がインド製だ。

「より安くつくろう、その想いからインドに大きな工場をつくりました。」創業者の息子である青木社長は現在39歳。ASB飛躍のきっかけとなるインド工場は、青木社長が20代のころ5年間インドに滞在し立ち上げた。

品質に妥協があってはいけない

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「苦労の連続だった」と当時を振り返る青木社長。
「アジアに比べ、インドの方々は『独創的』なんです。たとえば、設計図通りに指示したはずなのに『こっちのほうが便利だ』と、勝手に仕様を変えてしまったりする。」
1年目は9割が不良品。赤字が膨らんだ。

早期撤退を進める声もあったが、青木社長はあきらめなかった。
金型技術者ほぼ全員を出張させ、現地の技術者の指導にあたった。「品質に妥協があってはいけない」社長の想いが少しずつ品質向上につながった。
90年代から2000年代にかけてインド市場は急拡大。ペットボトル成形機の売り上げも伸び、インド工場は黒字化。現在はASBのグローバル展開の核にまで成長した。

長野で開発、市場は世界

新しい分野へ挑戦

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「既存マーケットはどんどん競争が激しくなっている。だからこそ、新しい分野へチャレンジしていくことが大事。」
インド工場で原価を抑えることが可能になった分「国内での研究開発をしっかりやる。新しい分野、新しい技術を開発している」と青木社長。
従来の金型交換時間を短縮する新技術や、耐熱や広口のペットボトル加工といった新しい技術で未来を拓こうとしている。

付加価値の高い商品を

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「ASBが狙うのはニッチ(すき間)マーケット。量産のペットボトル製造機でなく、多品種少量、付加価値の高い分野の機械づくりを専門にしている。だからこそ品質にこだわるんです」

アジアや中国、インドなどの消費拡大で、ペットボトルのニーズは増えている。さらに、化粧品や医療など、これまでガラス製だった容器がペットボトルに置き換わることで市場は広がりを見せる。
「メイドイン・ナガノ」の成形機が今日も世界中でペットボトルをつくっている。

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【取材日:2011年11月01日】

企業データ

日精エー・エス・ビー機械株式会社
長野県小諸市甲4586番地3 TEL:0267-23-1560
http://www.nisseiasb.co.jp/