[サイプラススペシャル]182 ニーズ超えるFA装置を作る技術屋集団 仕事は自信と誇りを持って

長野県松本市

エーアイテック

「サラリーマンがあまり得意でなくて、勤めていた会社を変えるよりも自分が変わった方が早いと思って創業しました」。大林頼彦社長(71才)は、1986年の㈱エーアイテックを創業した当時を振り返る。松本市の郊外、松本臨空工業団地内でもひときわ緑が映えるエリア、「今は取引先からこれ以上仕事を引き受けるのが難しいほど依頼がきています」というエーアイテックの“ものづくり”を取材した。

異形部品挿入機を造る

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エーアイテックは、プリント基板の組み立て工程を中心とした省力機械の設計・製造、販売を手掛ける。コーティング機・乾燥炉など様々な製品開発を行っているが、主力製品の一つは、異形部品挿入機と呼ばれるプリント基板にコネクタやコンデンサ、抵抗器など、大きさや形状が異なるリード付き部品を挿入する装置だ。
1枚の基板には様々な電子部品が搭載されている。チップ化された部品は、リール状にまとめられ、テープフィーダーと呼ばれる供給装置とマウンターという搭載装置で、自動で基板上に張り付けられていくが、コネクタやコンデンサ、抵抗器といった部品(=異形部品)は、チップ化しにくいため、人の手で手差しをしている。この手差し作業を自動化した装置がエーアイテックの異形部品挿入機だ。「マウンターの分野は大手がしのぎを削っており、エーアイテックでは四つには組めません。そこでチップ化しにくい特殊な部品いわゆる異形部品を基盤に挿入する装置の生産に、いち早く取り組んだのです」。

自動化が不可能だった工程も

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エーアイテックの異形部品挿入機は、上下のアームが、基板の上からは、様々な部品を挿入、基板の下では曲げる、カットする、場合によってはネジで止めるといった作業も高速で行うことができる。これまで人の手でしかできないとされていた異形部品の挿入が可能になった画期的な省力機械だ。人が加減して基板に挿入していた部品には挿入前に矯正する機構を設けることも可能だという。
自動化による作業効率のアップや基板の精度の向上、品質の均一化は、製造コストに直結、まさに『省力』そのものだ。現在の主な取引先は自動車産業界だが、車載部品に使われる基板製造になくてならない装置として評価も高い。ホームページに記されている「自動化が不可能だった工程もご相談ください」という言葉は、不可能と言われていた異形部品挿入を自動化したエーアイテックの技術力を伝えている。

低高温検査装置を造る

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更にエーアイテックに、自動車メーカーからオファーが絶えないのが、低高温検査装置だ。これは、電子機器やICなどをマイナス40℃から150℃で、しかも製造ライン上で検査ができる装置である。電子機器の搭載が増加する一方の自動車部品、しかし車は地球上どんな場所・環境で使用されるかわからない。しかも部品のトラブルが人の命にかかわる製品だけに全数検査が求められ、動作保証の条件は非常に厳しい。信頼性の高い低高温検査装置が求められる理由だ。

冷凍機を造る

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この検査装置に使用されている冷凍機も、エーアイテックが得意とする製品だ。自動車部品を-40℃の環境下で製造したいとのニーズに応えて開発された。
通常の冷凍機では-30℃を超える低温を作り出すのは難しく、できても効率が悪い。そのため、ランニングコストが高く取り扱いも危険な液体窒素が一般的に使われていた。
エーアイテックは二元冷凍機という技術を応用して、液体窒素を使わず-70℃まで冷却できる装置を開発した。低ランニングコスト、高い安全性に加えて、霜取りせずに一週間の連続運転も可能だ。また冷凍機も自社製品であるため、検査装置との組み合わせや制御も自由にでき、スペースダウンできるという強みもある。

エーアイテックの省力機械は、エンドユーザーには見えないが、ものづくりの縁の下の力持ちとして、製品のコストダウンに確実に貢献している。

技術力を買ってもらう

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社名のエーアイテックは、Artificial(人工の)Intelligence(知能)のAIとテクノロジーをあわせたもので、「人工知能を持ったような設備を造る会社にしたい」そんな思いが込められている。「お客さんの要望に合わせて何でも造ります」と立ち上げた会社だが、製品は次第に繰り返し依頼が来る機械装置や顧客のニーズがありそうなものに集約されていったという。 どこでもやれるものは価格競争になる。「技術力を買ってもらえれば安くなることはありません」。自身もヒートポンプの開発技術者である大林社長は技術力を客観的に捉える。

原点は"ものを作る"こと

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「これが今取り組んでいる全長25メートルの低高温検査装置です。我が社始まって以来の大きさで早く納品したいのですが・・・。」大林社長は工場内の端から端まで使って組み立てが進む筐体を指差した。奥には立ち会いに来ているというメーカーからのお客様の姿も見える。他にも組み立て中の筐体がいくつも並び、それぞれに組み立て作業が進行中だ。大きな物音もなく、清潔なフロアは、工場というよりもむしろ開発研究所内の一角といった感じだ。
「原点は"ものを作る"こと、ものづくりが好きなことでしょうか」という社長の言葉通り、工場内は明るく楽しげな雰囲気が溢れている。

お客様のニーズに応える

エーアイテックのものづくりの特徴は、ひとりの技術者が打合せから設計・製造・現地調整まで一貫して担当することだ。異形部品挿入機の競合社は2社、低高温検査装置の同業は3社、コーティング機も手掛ける会社はそれほど多くはない。しかし、エーアイテックでは部品や個々の装置製造よりも、持っている技術でお客様のニーズや要望に応え、具体化することを強く意識したものづくりを積み重ねてきている。大林社長は「具体化するには、一つ一つの技術よりもアプローチを考えることが難しい。ひとひねりふたひねりが必要です。でも話しているうちにこれなら任せられるという感触をお客様からいただければエーアイテックに仕事が来ます。技術はお客様が共に育ててくれますから」と語る。

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世の中に必要とされつづける企業に

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リーマンショックで半減した売り上げは、徐々に回復し、今期は「11月までに既に前年の決算額を超える売上が見込める状態」、しかも、特定のグループの傘下にははいっていないエーアイテックには、大手企業からの発注も系列を超えてある。営業担当は少ないもののウェブページからの問い合わせも増えている。しかし、大林社長は景気の変動に影響される生産設備メーカーの実態を「恐ろしい」と厳しく見つめる。より良い製品を作りつづけ世の中に必要とされつづける企業、これがエーアイテックの目指す"ものづくり"だ。

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「性能のいい工作機があればいいという会社もあるが、技術者だと思いますよ。我社は27名の正社員の8割が設計者であり技術者、みんながフルに力をだせる、自由に動ける環境を作るのが私の役目」。静かだが重みのある経営者のメッセージが心に残った。

【取材日:2012年07月18日】

企業データ

株式会社エーアイテック 長野県松本市和田3967-74 TEL:0263-48-1170
http://a-i-tec.co.jp/