長野県東御市
ミマキエンジニアリング
大きい!Mimakiインクジェットプリンター
つねに「イノベーター(革新者)」であり続ける
Mimakiのプリンターは、とにかく大きい。しかも、布やプラスチックなどにも印刷が可能という優れものだ。
ミマキエンジニアリングがつくる業務用プリンターは、東御市の工場から世界中に出荷される。巨大プリンターが活躍する現場は、看板や衣料など、これまでインクジェットでは不可能といわれていた分野だ。
「つねにイノベーターを目指す」という、信州発世界のものづくりの強さのヒミツに迫る。
インクジェットプリンターの印刷するヘッド部分が、右へ左へと大きく動く。
8畳用のじゅうたんぐらいはあろうかという白い大きな紙に、鮮やかにプリントが施され、送り出されていく。
東御市のミマキエンジニアリングでつくるインクジェットプリンターのサイズは、幅3mを超える。とにかく桁違いに大きい。すべて業務用だ。
さらに驚くのは、プリントできるのは紙だけではないという点だ。もともとポスターや看板用に開発された大型プリンターだが、最近はスカーフやネクタイの柄など、衣料品の分野まで活躍の場が増えているという。
サイズこそまったく違うが、基本的な仕組みは家庭用インクジェットプリンターと同じだ。顔料インクを粒にして飛ばし、紙に吹き付ける。インクを飛ばす部品は大手プリンターメーカー製だが、「大きい」「いろいろなものにプリントできる」というMimakiプリンターの特長は、他社には真似できないオリジナルの技術だ。
「インクジェットだから、いろいろ可能性が広がる」池田明社長は、笑顔で語り始めた。
「もともと開発エンジニア」という池田社長率いる、東御市のものづくり企業は「顧客のニーズの半歩先行く」研究開発で、新たな市場を切り拓いてきた。
Mimakiインクジェットプリンターは、さまざまな産業にイノベーション(革新)を起してきた。
たとえば、看板。これまで手書きやシールなど別の手法で作られていた屋外広告だが、ミマキエンジニアリングは、インクジェットプリンターでの印刷を可能にした。
「インクジェットの方が仕上がりはキレイだし、再現性も優れていた。しかし、屋外では使えない・・・とうのがこれまでの常識だった」と池田社長。写真プリントでもわかるとおり、インクジェットプリンターは美しい印刷は得意だが、日光や雨・風には弱い。変色してしまうのだ。
この問題点を解決するために、苦心したのは「インク」。耐候性に優れ、屋外で使用しても何年も鮮やかさが保たれるインクを独自に開発し、これまで不可能といわれていた分野にインクジェットプリンターのあたらしい市場を創り出した。
Mimakiプリンターは看板作りに革新をもたらした。
「私たちはイノベーターを目指しています」と、池田社長。
「誰もがやっていない市場で、一番になるのが目標。新しさと違いを提供する開発型企業としてベンチャー魂を生かしていきたい」と、夢を語る。
看板だけでなく、衣料品にもイノベーションを起こす。
ネクタイ、スカーフ、Tシャツなど、これまで1枚1枚「版」で染め抜いていた染物を、インクジェットプリンターに置き換えてしまおうとしているのだ。
プリンターを使うことで、用途によって様々なデザインが可能になり、しかも注文に早く応えることができる。流行に敏感で、シーズンごとにデザインがめまぐるしく変わるアパレル産業のニーズを満たす商品だ。
「紙から布へ」というアイデアだけではヒット商品は生まれない。
衣料用インクジェットプリンターにも、Mimaki独自のスゴイ技術が生かされている。プリンターで大事なコトの一つは、印刷物を正確に送ること。紙送りの技術と同時に、インクの細かい粒をピンポイントで落としていく技術も求められる。
「布には"目" があり、まっすぐ送るのは大変だった。シワがよったり、伸びたりするとうまくプリントできない」と、池田社長も開発の苦労を語る。
なぜ、難しい布を送る技術を確立できたのか?その答えは、ミマキエンジニアリングのものづくりの根底にあった。
「もともと工作機械の開発をしていて、『位置決め』の精度には自信があるんです。」布を送ることや、的確にインクを飛ばす技術こそ、カンタンに真似できないMimakiプリンターのスゴイ技術だ。
しなの鉄道・滋野駅近くの工業団地。日信工業やコトヒラ工業など、長野県を代表するものづくり企業が集積するこの地にミマキエンジニアリング生産工場はある。ここで作られたMimakiインクジェットプリンターは、今日も世界に向けて出荷される。
国内はもちろん、売上の多くをアメリカ・ヨーロッパが占めているというミマキエンジニアリング。「まさにこれから、中国など新興国への販売も強化していく」と、経営トップは語る。「とくに、衣料用は期待できます。」
中国市場では、既存の染物技術がライバルだ。「とにかくコストパフォーマンス。もともとランニングコストのほとんどはインク代。安いインクを開発して、量産にも対応できるインクジェットプリンターができた。」池田社長も、新商品・新市場に期待を寄せる。
屋外広告、衣料品など、インクジェットの新しい使い方で新たな市場を生み出したミマキエンジニアリング。
紙から布、さらに立体的なものや木などへも印刷ができるプリンターを開発した。「Mimakiのプリンターがあるから、仕事を請けられる・・・という事例もあるんです。」
エプソンやキャノンといった一般向けプリンターに比べれば、確かに業務用の市場は小さい。しかし「誰もやっていないことで一番になる」という社長の言葉通り、ミマキエンジニアリングは、新たな市場を開拓し続けている。
世界のものづくり現場で、今日も「メイドイン・ナガノ」の業務用大型プリンターが活躍している。
株式会社ミマキエンジニアリング
長野県東御市滋野乙2182-3 TEL:0268-64-2281
http://www.mimaki.co.jp/