[サイプラススペシャル]156 夢は信大カレー!?おいしい「ながのブランド」づくり 【特集】信大工学部のものづくり その⑨

長野県長野市

信州大学工学部教授 松澤恒友

信州産「きのことりんごのヘルシーカレー」
カレーの研究…ではありません!

「私たちの研究はコレです!」「うん、おいしい!!」
あつあつのカレーをご飯にかけて、美味しそうにほおばるのは信州大学工学部「ながのブランド郷土食」研究員の寺島恵さんと、滝沢潤さん。食べているのは、信州大学工学部の研究室でつくられた「信州産きのことりんごのヘルシーカレー」です。

信大工学部のスゴイものづくり。今回ご紹介するのは物質工学科・松澤恒友先生。
「夢は、信大カレー」という松澤先生ですが、カレーの研究をしているわけではありません。

研究テーマは「食品製造の技術革新」

うまい!信州ヘルシーカレー

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信州大学工学部の「信州科学技術総合振興センター・SASTec(サステック)」。2010年にオープンした産学官連携施設です。
1階の研究室では、玉ねぎ、しめじ、りんごといった食材をパックに詰める研究生たちの姿がありました。パックに封をしたあと、専用の窯で加熱・殺菌すると...レトルトの「信州産きのことりんごのヘルシーカレー」の完成です。

できあがったばかりのレトルトカレーを食べてみると...うん、おいしい。きのこの食感がしっかり残り、りんごの甘みがカレーの味をまろやかにしています。
「まだちょっとレトルト臭がするので、1週間くらいすると食べごろになります」と、研究員の滝沢さん。「ヘルシーカレーだから肉は入っていませんが、しっかりうまみが出ているでしょ」と、満足の仕上がりのようです。

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機能性を付加した食品の研究

「カレーの研究をしているわけではないんです。」
そう笑うのは、物質工学科の松澤恒友教授。先生は一体、工学部で何の研究をしているのでしょうか?

「機能性を付加した食品の研究です。」
たとえば前述のカレーも、肉を使わないでカロリーを抑え、きのこのもつ健康作用を活かす...など、美味しいだけでなく、いろいろな「機能性」を加えた食品開発を研究しています。

食品製造...工学部での研究が「必然的」

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「最近食品に対して、安全・安心、さらに機能性が求められています。」しかし、なぜ工学部で食品の研究をしているのでしょうか?

「安心・安全・機能性となれば、食品の加工技術が非常に重要になります。これって、他の工業製品と変わらないんですよね。だから、工学部でやるのは必然的と思います。」 食品も工業製品も、大事になる加工技術。松澤先生は「食品製造の技術革新」をテーマに研究をしています。

「新しい加工食品」の人材育成

コラボレーションで新製品開発

「和風きのこソース」「ブルーベリージュース」「ブルーベリーアイス」、さらに「信州きのこおやき」など、松澤先生の研究室からは数々の新製品も生まれています。ブルーベリーもきのこも、長野県の特産品。地元農産物を素材とした新商品開発です。
「すべて、私ひとりでつくったわけではありません。学生たちの課題研究を発展させたり、社会人研究生たちと一緒につくったりした、コラボレーションです。」

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新しくて美味しいプルーンジュース

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松澤先生の研究室では、学生たちに交じり、社会人も一緒に研究をすすめています。
「プルーンを使った新商品の開発を行っています」というのは、長野市内で清涼飲料水など製造の長野興農で開発を担当する宮下学さん。発酵技術をつかい、プルーンジュースをつくるときに出る搾りかす(残渣)を少なくする研究などをしています。

農家がつくる「とうもろこしアイス」

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「とうもろこしを使ったアイスクリームをつくろうと思っています」というのは、農業生産法人まだらおファームの静谷真征さん。「とうもろこしは、とても甘い。もともと糖度の高いとうもろこしを使えば、おいしくて健康にいいアイスができる。」
静谷さんは、上水内郡信濃町でとうもろこしなどをつくる農家。出荷できない「はね出し」を有効に活用したり、農産物に付加価値をつけたりして販売できる商品の開発をしています。

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松澤先生は、言います。「地元の特産品を活かすのはもちろんですが、私たちの研究は『人材育成』。あたらしい加工食品をつくれる人材を育てていくのが大きな役割です。」

人材育成で、おいしい「ながのブランド」

ブランド力と技術開発力を向上させる

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「長野県は、全国一の長寿県。しかも高齢者の医療費はとても低い。これは、長野県の伝統的な食べ物によるところが大きいと思います。」
もともとJAの研究機関で、きのこの機能性などを研究していた松澤先生。地域の農産物を活用した加工食品の開発には、なみなみならぬ想いがあります。

「信州は農業が盛ん。同時に、食品加工も大きな地場産業として発展してきました。しかし、ブランド力が弱いためOEM生産(相手先ブランド名での製造)が多いんです。」

夢は「信大カレー」

研究室の入口に掲げられた「ながのブランド郷土食」の文字。松澤先生は、地域の農産物などを活用した特産品をつくる研究を担当しています。
「一番は、人材育成。食品製造の技術革新できる人材を育てることができれば、地域経済の活性化につながります。」地域再生人材創出拠点の育成...松澤先生は、長野市と連携して人材育成を進めます。

「例えば『信大カレー』など、信州大学工学部ブランド製品できればいいですね。」
夢は、おいしい「ながのブランド」。未来を担うヒトを育て、地域の活性化を目指します。

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【取材日:2012年01月12日】

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