[サイプラススペシャル]158 信州のスキー史と共に歩む百年企業 木の芯材にこだわったスキー板を製造

長野県長野市

小賀坂スキー製作所

今年は長野県にスキーが伝わって100年となるが、その年に創業して今日に至るまでスキー板を作り続けているのが長野市に本社と工場を構える小賀坂スキー製作所だ。全ての板に木の芯材を使うという妥協のないものづくりで、多くのスキーヤーから信頼を得ている。本社工場で、こだわりのスキー作りの現場を取材した。

日本のスキー史とともに歩む

国産スキーのトップブランド

「スポーツは世の中を明るくする。もっと多くの皆様にスキーを楽しんで欲しい。」と語るのは、三代目社長の小賀坂道邦さん(75歳)。社屋の壁面にあるこのシンボルマークは、長年多くのスキーヤーに愛されてきた。現在主流となっているカービングスキーの開発にも早い段階で取り組み、スキー製造に関する様々な特許技術も所有している。

ogasaka-ski02.jpg

創業100年の老舗メーカー

mouse-jp03.jpg

日本にスキーが伝わったのが明治44年。その翌年長野県にスキーが伝わったことが、小賀坂スキー創業のきっかけとなる。当時は飯山市で家具などの木工品を製造していたが、地元の中学校から「スキーを作ってほしい」という依頼で作った40台が、スキー作りの始まりとなった。大正・昭和初期はまだ一般の娯楽ではなかったスキーは、軍隊用に製造されることが多かったという。天皇家への贈り物として宮内庁にも献上された。


戦後のスキーブームとともに成長

ogasaka-ski04.jpg

第二次大戦中には一時製造を中断していたが、昭和25年にスキー専門メーカーとして再開。その後昭和34年に飯山市から現在ある長野市に本社を移転。その後も一貫してこの本社工場でスキー作りを続けてきた。高度成長期に到来した空前のスキーブームによって、会社も成長。ピーク時には年間10万台以上のスキーを製造していた。特に基礎スキーの分野においては、スキーヤーから絶大の信頼を勝ち得てきた。現在も年間数万台のスキー・スノーボードを製造していて、国内メーカーではトップの生産台数を誇る。

こだわりは「100%木の芯材」

「木に勝る芯材はない」

ogasaka-ski05.jpg

この言葉が、小賀坂スキーのポリシーだ。上級者用スキーの芯材はほとんどが木材だが、一般的に初級者用やレンタル用には樹脂の芯材が使われることが多い。しかし小賀坂スキーで製造される板は100%木の芯材。使用する木材も材料を吟味したうえで切り出し、2年間天日で乾燥させる。完成品となるまでには約3年の歳月を要するが、狂いの出ない高い精度の製品を作るためには欠かせない工程だ。以前はすべて国産材を使っていたが、一部輸入材を使うようになった現在も現地で技術指導をおこなうなど品質を落とさない努力を続けている。


原材料から完成品まで一貫してペアの板で

ogasaka-ski06.jpg

乾燥された木材は、複数の組合せで接着されて合板となったあと芯材となるべく1枚1枚カットされる。その際に同じ合板から切り出されたものが、生涯ペアとなる。「この段階から製品として送り出されるまで、ずっとこの組合せを崩さずに製造します。」と語るのは、工場長の小杉義文さん。その後削りや圧縮など様々な工程を経て、芯材が出来上がる。


滑走面は厚さわずか1.2mm

スキーは出来上がった芯材に補強材のグラスファイバー、超硬ジュラルミンやエッジなど各部材が組み込まれて成型接着され、徐々に完成に近づいていく。滑走面はポリエチレンで出来ていて、その厚さは何とわずか1,2mm。芯の部分にガタやゆがみがあるとただでさえ薄い滑走面を余分に削ってしまうため、正確な作業が求められる。またポリエチレンは温度によって変形してしまうため、急激な温度変化を避けて削りと冷やしを何回も繰り返すという。工程はほとんどが手作業で、経験を積んだ社員が1枚1枚丹精に仕上げていく。

ogasaka-ski07.jpg

日本の雪とスキーヤーを知り抜いたものづくり

ogasaka-ski08.jpg

完璧なものしか出荷しない

出荷される前の検品作業で、入念な最終チェックが行なわれる。製造段階で少しでも問題が見つかるとその時点で廃棄するため、検品の時点ではねられる製品は全体の1000分の1以下。無論少しでも傷や汚れがあれば、性能に問題がなくても出荷はされない。小杉工場長は「少しでも気を許すと不良品を生む原因となる。そこにこだわることが大切。」と妥協を許さない。


ogasaka-ski09.jpg

全てのスキーヤーのレベルに合わせた製品づくり

「日本の雪を知り、日本のスキーヤーを知り、日本人のためのスキーをしっかり作りたい。」という強い思いが、小賀坂スキーの企業理念だ。自社のスキーを愛用しているスキーヤーからの要望も、開発の大きなヒントになっているという。またレベルに応じてのスキー作りにも余念がない。自社で開発した「ネオフレックスエッジ」は、スキーがしなやかにたわみ、初心者にもバランスが取りやすいようにエッジに切れ目を入れたオリジナル。芯材となる木材の組み合わせも、スキーヤーのレベルに応じて材質を変えている。


スキーを愛する社員たちが集う

ogasaka-ski10.jpg

小賀坂スキーのもう一つの自慢が、全ての社員がスキーを愛して止まないこと。「スキーを愛している社員だから、とことん性能を追及する。これが当社の最大の強み。」と小賀坂社長は胸を張る。かつてのオリンピック選手や国体選手をはじめ、トップデモンストレーターだった社員も少なくない。日本のスキー人口は減少傾向が続いているが、スキーを愛する社員一人ひとりの情熱と思いで出来た小賀坂のスキーは、多くのスキーヤーに根強く支持され続けている。


ogasaka-ski11.jpg

【取材日:2012年01月27日】

企業データ

株式会社 小賀坂スキー製作所
長野県長野市栗田653番地 TEL:026-226-6827
http://www.ogasaka-ski.co.jp/