長野県塩尻市
ユニコン
塩尻市のユニコンは、精度の高い加工技術を得意とする精密部品メーカー。設備投資を惜しまず高性能の工作機械や計測機器を揃えることで、1μm単位の正確な製品作りを可能としている。社長は何と普通高校卒業で技術者の経験ゼロという経歴の持ち主。しかし通常の企業にない独自の視点での経営方針が、存在感のあるものづくり企業を作り上げた。
「歳をとっても働ける仕事をしたかった。会社に勤めるよりも、自分でやった方がいいと思って。」百瀬浩社長(71歳)に創業の理由を伺ったところ、こんな答えが返ってきた。しかも全く製造現場の経験がない中で、1985年に会社を立ち上げたのだ。しかも創業以来「売上目標を立てない」、「社内加工において段取り時の不良については数量データを取らない」など、通常のメーカーとは一線を画した企業経営を行なっている。
ユニコンの主要取引先は、安曇野市に主要工場を持つハーモニック・ドライブ・システムズ。火星探査機やスペースシャトルなどにも使われている、歯車型減速機の世界トップメーカーだ。ユニコンでは減速装置に使われる部品を製造していて、全社売上の約75%を占める。高い精度と耐久性が要求されるこれらの装置において、重要な役割を担っているのがユニコンの製品だ。
1μm単位の高い精度にこだわり続けることが、ユニコンのモットーだ。アルミや鉄などの金属は温度変化に影響を受けやすいため、ユニコンでは工場内の温度を24℃から25℃に保っている。そのため工場内には窓がなく、天井に設置したファンを回すことでムラのない温度を維持している。製品は何と4,000種類。他社が嫌がる難しい加工を積極的に受注していて、「ユニコンにお願いするしかない」という評価を得ることで、「ナンバーワンよりオンリーワン」を目指している。
ユニコンの工場には、高性能かつ最先端の設備が揃っている。創業以来かけた設備投資は35億円。高性能の設備が優秀な人材を育てるという観点から、設備投資に積極的だ。また高い精度を出す基本は正確な測定からという理由で、社内にある測定機器も高額な最高精度のものを揃えている。
匠の技や名人芸を生命線とするものづくり企業もあるが、ユニコンは全くその逆をいく。高い技術やノウハウをマニュアル化することと高性能の設備を揃えることで、誰もが同じように製品づくりが出来るシステムを構築している。工作機械の壁面に作業内容なども貼られていて、初めての人でもその機械の操作が可能だ。工場内の人事異動も活発で、様々な工程を全ての社員が出来るようにしている。
この機械は複合NC旋盤と呼ばれるもので、一つのマシーンで旋削・切削など最大6工程を行なうことが可能だ。1個あたりの加工時間は5分から30分と長くなるが、無人で5時間から12時間運転可能である。つまり、一見非効率にも思えるが、全てを機械が行なうため1人の人間が複数の仕事を並行して行なえるというメリットがある。仕上げられた部品は、加工前のものとは輝きも寸法も全く違ったものとなっている。
ものづくり企業には生産量やスピードが求められる。しかし百瀬社長の考えはそれだけではない。ユニコンは創業以来社員に「ノルマ」を課したことがない。段取り時の不良についても数量データを一切取らないことによって、失敗を恐れず新しいことにチャレンジすることが会社の財産になるという考えに基づいている。「欠点を直すよりも長所を伸ばす」という育成方針がその根幹にはある。
ユニコンでは新入社員にも積極的に現場に関わらせる。新しいことに挑戦したいという社員がいれば、全て許可している。先輩や上司がバックアップし、技術を向上させるという体制も整えており、若手の技能習得を助けている。過去に技能検定試験を受けた社員は、全員が合格しているという。
企業理念は「目先の利益より将来の利益」、「利益より信用を優先」。この理念に基づいて取引先の信頼を勝ち得ると共に、会社を継続して発展させてきた。「部品の輝きと人間の表情の輝きとは共通している」と百瀬社長は言う。社員が生き生きと働く環境を作ることで、製造した部品も輝きを増す。独自の手法で精密加工技術を極めることで、地域ひいては世界に貢献している。
株式会社ユニコン
長野県塩尻市大字広丘吉田563番地11 TEL:0263-86-4004
http://www12.ocn.ne.jp/~uni/index.htm