[サイプラススペシャル]192 砂型アルミニウム鋳造一筋に歩む 大小を問わず少量多品種の受注に対応

長野県下伊那郡高森町

金森軽合金

金森軽合金は、創業以来40年近く砂型アルミ鋳造一筋に歩んできた。大量の部品製造には金型が使用されるが、砂型鋳造は少量多品種の部品製造に適している。手間がかかる仕事だが、長年培った経験と技術で、簡単に他には真似出来ないノウハウを持つものづくり企業だ。

砂型アルミ鋳造を究める

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社長はこの道半世紀以上のベテラン職人

「ただただ自分が出来ることをやってきただけです」と語るのは、社長の金森悦三氏(72歳)。上郷村(現:飯田市上郷)の出身で、集団就職で上京した鋳物工場で砂型鋳造と出会い、その道を究めてきたまさに「叩き上げ」の職人だ。32歳で独立して、地元に戻って金森軽合金を創業。それ以来今日に至るまで、砂型アルミ鋳造一筋に歩んできた。


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少量多品種生産で納品

「アルミで作れるものは何でも作る」という社長の言葉通り、その製品は多種多様だ。1ヶ月当たりの取引企業の数は約150社、製造する部品の種類は、年間5000種類にも及ぶ。硬度計や産業用ロボットのフレームをはじめ、自動車や鉄道などの輸送機械、ひいてはたい焼きやたこ焼き製造機の型までと、ジャンルも幅広い。大きさも小指大のものから2トンクラスのものまで作ることが可能だ。


ベースとなる数多くの木型

砂型アルミ鋳造の基となるのは、基本形となる木型。この木型が全ての部品製造のスタートとなる。金森軽合金の倉庫には、過去に製造されたものから現在に至るまでの、数え切れない木型が納められている。倉庫に入らない大型のものは、工場の上部に収納されている。取引先からの要望に応えるために、積み上げられてきた会社の歴史を物語る。

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砂とアルミニウムから作られる多種多様な部品

アルミを砂型に流し込んで形成

砂型アルミ鋳造は、まずベースとなる木型で型抜きされた砂型にアルミニウムを流し込む。アルミは社内に5基ある溶鉱炉で、700度以上の温度に熱せられる。流し込む作業は全て手作業で、大型のものとなると4人がかりで数回に分けて流し込まれる。本社工場で使用されるアルミの量は1ヶ月約20トン。型を作る砂は、北海道で採取されたものを繰り返し使用している。

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常に難しいものに挑戦する姿勢

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多種多様な部品作りを可能にしているのが、取引先のニーズの応えるという企業姿勢だ。金森社長は「難しいものから絶対に逃げずに果敢に立ち向かっていく」と熱く語る。球場などで使用される生ビールのサーバーの部品作りは、アルミの型だけではなくその中にバネのパイプを入れるという困難な作業が要求されたが、苦心の末作り上げたという。


仕上げは全て手作業

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アルミ部品の仕上げ磨きは、全て手作業。磨き作業の現場では、黙々と作業が行なわれていた。磨かれる前と後では、肌触りが全く違うほど丁寧に磨かれる。「これだけは手でやるしかない。それしかやりようがない。」という金森社長。磨き上げることで、自分たちの作った製品にもより愛着が沸くという。

他には真似のできない技術を磨く

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金型製造と違う特性で勝負

「砂型と金型の違いは何か」という質問を、金森社長にしてみた。「作る個数が2000から3000のところで金型か砂型かを判断するが、金型は型を作る製造コストや時間がかかる。その点砂型は型が出来ればすぐ作れるので、自由がきく。少量生産には絶対砂型の方が向いている。」と自社の砂型鋳造に自信を持っている。


「困ったら金森に」

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砂型鋳造は経験を積まないと難しいうえに、砂や熱と格闘するためかなりの重労働だ。金森社長の世代以降はなり手が少なく、高齢化の中で多くの同業他社が廃業しているという。そんな中で金森社長は、手作業での職人技を磨きつつ、機械で仕上げる設備を増やしていくことで顧客ニーズに応えてきた。廃業した他社の仕事を引き継いだり、同業者が出来ないものでも「金森に持っていけば何とかしてくれる」という評価を得るまでになった。


真似の出来ない巧の技

金森軽合金では、今年インドで行なわれた展示会に出展するなど、海外への販路拡大も視野に入れている。砂型アルミ鋳造には高い技術力と長年の経験が必要とされるため、海外では容易に真似が出来ないという。日本のお家芸とも言える「手作りの職人技」を磨き上げてきたことによって、簡単には真似の出来ないものづくり企業として輝きを放っている。

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【取材日:2012年09月18日】

企業データ

有限会社 金森軽合金
長野県下伊那郡高森町牛牧2693-4 TEL:0265-35-6063
http://www.kmkc.jp/