長野県北佐久郡立科町
カルエンタープライズ
カルエンタープライズは田んぼの畦や庭の雑草を刈る回転刃式の草刈機に、金属でなくナイロンコードを使用する製品を製造していて、この分野では国内のトップメーカーだ。ツイストを付けたりするなど工夫して切れ味を高めることで、低価格の海外メーカーとの差別化を図っている。昨年には「くるみの殻」を混ぜたナイロンコードを新たに開発して、ヨーロッパなどの海外から環境に優しい商品として注目を集めている。
「浅間山の素晴らしい景色に感動して、この地に本社を移すことを決めました。」と語るのは、社長の相澤和宏氏(80歳)。もともと相澤社長は生まれも育ちも東京で、昭和59年の創業当初は本社・工場とも東京に置いていた。しかし現在主力製品となっている草刈機用のナイロンコードの製造工場が手狭となったため、平成元年に立科町に本社と工場を移転して今日に至っている。
相澤社長は大学での専攻は経済学だったが、卒業後先輩が経営する農業機械メーカーに就職した。ナイロンコードと出会ったのは、視察に訪れたアメリカのカリフォルニア州。当時日本には金属製の回転刃しかなく、刃先で怪我をするケースも多かった。「安全なこのナイロンコードを日本でも広めたい」という想いから、カルエンタープライズを創業。社名の由来は「刈る」ではなく、「カリフォルニア」の「カル」を取って名付けたものだという。
本社を立科町に移転した当初は、地元の知名度はほとんどなかった。ある日安価な海外製を使っていた地元農家が、「地元で作っている製品だから一度試してみたい」と言ってカルエンタープライズのナイロンコードを使用してみた。すると性能の違いを実感して「こんなに素晴らしい製品ならば、今後も使いたい」と言ってくれた。相澤社長にとって、最も印象に残っている言葉だという。
草刈機用ナイロンコードの構造は、ナイロン製の釣り糸とほぼ同じ。安価な海外製品は釣り糸の構造からさほど変わっていない。しかし丸いコードでは当然切れ味もいまひとつ。そこでカルエンタープライズは角のついたナイロンコードで切れ味を高めた。更に回転の際に生じる遠心力をより有効活用するために、ツイストを加えたコードを製造。性能と耐久性を大幅に向上させた。
工場は本社とその周辺の3ヶ所に点在しているが、製造ラインはすべてオリジナル。ひとつとして同じ製造ラインはない。製造設備も自社で開発したものが多く、高品質を保ちつつコストを抑えて開発・製造している。「マイナーな業種なので、大手が参入してこない。そこが当社の強み。」と相澤社長は自信を覗かせる。
耐久性を高めるためにカルエンタープライズが独自に行っている工程が、ナイロンコードに湿度を加えること。工場に隣接する加湿庫で数時間湿度を加えることで、耐久性を向上させている。このような企業努力が実を結び、カルエンタープライズのナイロンコードは国産品の中では自社製品・OEM製品を合わせて国内9割のシェアを誇る。
6年前に開発した「メタリックコード」は、金属粉を配合したナイロンコードで、耐久性に優れ、今現在も高い評価が得られている。最近では国内外問わず環境に対する意識が高まってきているが、そんな中で昨年新たに開発したのがくるみの殻を配合したナイロンコード。自然素材のものとして、研究開発のすえ採用したのがくるみの殻だった。ヨーロッパの展示会に出品したところ好評で、ドイツやイタリアなどの国から本社に視察に訪れる会社もあったという。意匠権も取得していて、海外市場に打って出るきっかけになる製品として位置付けている。
カルエンタープライズのもうひとつの柱として育ている製品が、急勾配の果樹園などで活躍する集荷用モノレール。従来はエンジン式が主流だったが、排気ガスなどの環境基準の厳しい海外向けに電動式の開発を進めている。工場内の敷地にもレールを設置して、走行テストを行っている。来年には商品として市場に投入する予定だ。
現在回転刃式の草刈機の市場でナイロンコードタイプは約3割で、まだまだ伸びる余地は十分にある。ただ就農人口の高齢化など問題で、国内の状況は決して明るくない。「現在売上は順調に推移しているが、国内だけに依存していては市場の縮小は避けられない。海外に市場を開拓しなければ、将来は厳しい。」と語る相澤社長。環境に優れた製品を武器に、海外市場に打って出る準備を進めている。
カルエンタープライズ株式会社
長野県北佐久郡立科町山部1289-1 TEL:0267-56-2691
http://www.calenter.co.jp/