長野県上田市
HIOKI
せんたくバサミ?クワガタ?
黄色い「ツノ」がすごい技術
掌にすっぽり収まる黒いボディに液晶画面。何より目立つのは黄色い「ツノ」。クワガタのようにも見えるし、せんたくバサミのようにも見えるふしぎなカタチをしているこの機械こそ、HIOKIの電気計測器だ。このツノで電線をはさむと、線を切らずに電流を測ることができるという。
「YES!ものづくり」今回は、一部上場企業HIOKIをご紹介する。自然豊かな信州上田で作られる「はさむだけで測る」電気計測器の秘密に迫る。
長野県東部に位置する上田市。千曲川右岸には上田城の城下町として発展した市街地が広がる。その千曲川を渡り、「信州の鎌倉」と呼ばれる塩田平へ向かう途中、田園に囲まれた小高い丘の上に、日置電機・HIOKI本社がある。
HIOKIフォレストヒルズと名付けられた約3万坪の敷地。7階建ての白亜の本社工場のほかに、ナイター照明を備えたグラウンドやテニスコートを備え、まわりは緑豊かな森に囲まれている。まるで公園のような森林もHIOKIの特長で、シラカシ、コナラなどおよそ8万本の苗木は、社員ひとりひとりの手で植えられたという。
緑豊かな信州上田でつくられるHIOKIの計測器は、電気工事や設備の保守点検をはじめ、パソコンやスマホに使われる電子部品の検査や、電気自動車、太陽光発電のメンテナンスなど、あらゆる産業分野で活用される。
HIOKIの計測器の特長は黄色いクワガタだ。大きなせんたくバサミのような器具で電線をはさむと、そこに流れる電流を計測できる。
電気が流れると、その周りに磁界が発生する...、という中学の理科の授業で習う電流の基本原理を応用し、磁界、つまりまわりの磁力の強さを測ることで、中心の電線に流れる電流の強さを測っている。
HIOKIのすごい技術は、この「はさむだけで測定できる」クランプ測定器。電線を切らずに測定できるのでカンタンで安全だ。
特に直流など微細な電気の流れを測るためには、より高精度のセンサーが必要になる。
「この中にホール素子と呼ばれる小さな部品が入っていて、これがこちらに電気が流れた時に磁界を感じて測定できる」と、広報担当の鳴沢純子さん。
心臓ともいえる大事な部品...ホール素子は、すべて本社工場でつくられている。
総合カタログの表紙をめくると、「信州上田発電気計測器」の文字。さらに「HIOKI本社工場は、緑豊かな信州上田に【開発】【生産】【販売・サービス】の全部門を集約し、自社開発・自社生産で素早い対応を実現しています」と続く。本社工場にすべての部門が集結することで、ユーザーの要望に素早く対応できる柔軟な体制を備えている。
「お客様に安心して使っていただけるよう、ここで最終検査をしています」と、製造担当の宮沢綾子さん。案内された工場には、組み立てラインがなく、一人一人が、一台ずつ組み立てを行っていた。「ずっと同じ機種をつくるのでなく、その都度種類や量を変えてつくることができます。この体制があるからこそ対応できるのが「少量多品種」だ。全部で何と200種類900アイテムもの商品をそろえている。
新型自動車の研究開発にもHIOKIの技術が使われている。
「これからの新エネルギーに対する電気自動車ですとか、ソーラー発電の分野に活躍できるセンサーです」と、営業担当の石原日出男さん。切らずに電気を測る技術を応用することで、HIOKIは新しい産業にもなくてはならない技術を提供している。
1935年の創業から電気計測器の専門メーカーとしてものづくりを続けるHIOKI。78年の歴史の中で、かつての量産成長期から「質」への転換を図り「高付加価値」をキーワードに成長を続ける。700人を超える社員の実に1/3が開発担当、売上の1割を研究開発費が占める。
「ハイブリッドなども効率を上げるために、エネルギーを効率的に活用する。あるいは長寿命のバッテリー、長寿命の電子部品というものを測るために微小なものを程度良く測る、そういうニーズは非常に増えていると思う」と、町田正信社長。
「やはり、世の中のお客様に喜んでもらえるような商品をつくっていきたい。」研究開発型企業HIOKIは、信州の地にこだわり、最新の計測技術を発信し続けることでさらなる成長を目指す。
日置電機株式会社
長野県上田市小泉81 TEL:0268-28-0555
https://www.hioki.co.jp/