[サイプラススペシャル]485 一貫生産のコア技術を追求 クルマの安全性能を支えるスゴイ技

長野県佐久市

吉田工業株式会社

ブレーキ内部のピストンやマスターシリンダーなど
吉田工業がつくるのは「重要保安部品」

高い安全性能が求められる自動車部品。
人命に直接関わるブレーキ用パーツを中心に、クルマの安全に欠かせない「重要保安部品」を手掛けているのが、佐久市の吉田工業です。

自動車部品の一貫生産が強み

高い精度の「削り」を実現

sec01_1.jpg ブレーキ機能部品や、ペダルを踏む力でブレーキ液を送る装置・マスターシリンダーなどクルマの「重要保安部品」とはどうやって作られるのでしょうか。
「金属の切削、研磨。つまり金属を削る技術を駆使して作っています」と、品質保証部長の田村洋平さん。
「ブレーキ内部に搭載されるピストンなど、クルマに内蔵される保安に欠かせない部品を生産しています。」
精密加工の拠点は、本社があるグリーンヒルプラント。高速で複雑な加工ができるNC自動旋盤がおよそ60台、さらに自動で工具交換ができるマシニングセンターも多数導入され、高精度な切削加工を行っています。

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自動化で生産効率UP!「アルミ鋳造」

sec02.jpg 切削や研磨と並ぶ、吉田工業のもう一つの強みが、溶かしたアルミを金型などに流し込む「重力鋳造」と呼ばれる鋳造技術です。
大量の部品を低コストで生産できる生産技術で、高い強度や硬度を持つアルミ部品を作っています。アルミ鋳造の拠点となっている佐久平プラントでは、この春、大型ロボットラインを稼働。これまで手作業に頼っていた鋳造工程の一部を自動化し、より生産効率を高めました。

一貫生産が「ウリ」メッキまで内省化

切削・研磨と鋳造に加え、吉田工業では錆び防止や装飾性を高める自動メッキラインも導入、製品の表面処理も内製化しています。
「アルミの外枠と内蔵のピストンをワンセットで弊社だけで生産できるという点が喜ばれている」と、製造部長の柳澤篤さん。鋳造から切削、表面加工。しかも開発試作から量産まで「一貫生産体制」でつくりあげる高品質部品が吉田工業のライバル企業に負けない強みになっています。

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枠にとらわれない発想こそ「吉田工業スタイル」

新展開は3Dプリンターを活用した試作品づくり

sec04_2.jpg 溶けた金属を「型」に流し込む鋳造は、量産に適した加工方法です。
吉田工業は最新技術を活用し、量産だけでなく「試作品」も鋳造でつくることを可能にしました。それが3Dプリンターによる「砂型積層」です。自動車部品に続く新たな柱を育てようと、いち早く3Dプリンターを活用した試作事業を展開。3Dデータから直接、砂型を造形することが可能になり納期やコストを大幅に短縮できるのがウリです。
「今まで肉厚3~4ミリが当たり前だったものが、今は2ミリを切るような製品もつくるよう、お客様からの要求があがっている。新しい技術を導入することで同じ自動車部品でも昔よりも高機能部品を手がけられるようにしていきたい」と、製造部副部長の塩原要介さん。

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工場の中におしゃれなレストラン!?

佐久平プラント内にはちょっと珍しい社員食堂があります。
去年夏オープンした、アメリカンスタイルのレストラン「Red Rocks(レッドロックス)」。
シェフの阪本仁さんは、社長がアメリカ留学当時に知り合った友人。工場の中にレストランを設ける社長のアイデアに賛同し開業、奥様と一緒に佐久に移住しました。
昼は社員食堂として活用、夕方以降は一般の方々が利用できる「工場内アメリカンスタイルレストラン」。枠にとらわれない自由な発想も、吉田工業スタイルです。

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一貫生産による高品質な自動車部品をベースに新たな挑戦

自社技術を活かした「逆提案」

先代社長の急逝を受け、経営を引き継いだ吉田寧裕社長(47歳)。積極的な設備投資と同時に、社員教育にも注力しています。
部長・副部長クラスの若手リーダー層を対象にした勉強会を毎週開催し、社員一人一人に成長と変化を求める姿勢を強調。EV化など自動車業界が大きく変化する中、社長は部品メーカーも新たな対応が迫られると話します。

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「まず、自社技術を用途開発していきたい。具体的には、試作、一部量産になっている自自社技術を活かしたEV、水素燃料電池車等の製品です。温めたり冷やしたりするサーマルコントロールに、アルミという素材は非常に向いている、そういったアルミ製品をお客様に逆提案していきたい。」

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海外展開も「人づくり」の一環

sec08.jpg 大手が製造拠点を海外に移転する動きを受け、吉田工業も2012年に中国の広東省、2015年にはタイに現地法人を設立。とくにタイ工場は県内の機械加工メーカー・現地の企業と連携し、3社がコア技術を活かす形で立ち上げました。
「海外は『市場』としてみている。成長分野を作っておくのが企業の使命であり、経営者の使命と思っている。もう一つ、成長性のある国へ行くとやはり元気が良くなるので、若いスタッフや経営層がそこで仕事をすることで、大きく成長していく点にも期待している。」

コア技術を活かした高品質の追求とグローバルな市場でも通用する技術の提案。一貫生産による高品質な自動車部品をベースに、自動車以外にも加工分野を拡大するなど、吉田工業は新分野への参入に意欲を燃やします。

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【取材日:2018年05月22日】

企業データ

吉田工業株式会社
長野県佐久市望月内匠2166番地1 TEL:0267-53-2151
http://www.yoshidanet.com/