[サイプラススペシャル]81 センサーだけをつくっている時代は終わった 面白いものをつくりたい

長野県佐久市

マイクロストーン

マイクロストーン株式会社は、1999年「どうしてもセンサーの開発研究をやりたかった」白鳥典彦社長(当時41歳)が6畳一間にパソコン1台で創業した。そして10年、資本金9958万円、従業員11名、売上1億5500万円(2009年6月期)、センサーの研究開発力では、自動車メーカーや半導体メーカーに高く評価されるまでに成長した。しかし、白鳥社長は「もう、センサーだけを作っている時代は終わりました。」とにこやかに語る。

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動きを制御するモーションセンサー

モーションセンサーは必需品

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 物が動く速度の変化を検知する加速度センサーは、様々な分野で使われ、日常生活に欠くことが出来ない製品である。例えば、自動車の車体の安定走行やエアバッグのための衝突検知、エレベーターの制御装置にも使われている。もっと身近なところでは、携帯電話やデジタルカメラの液晶画面がタテヨコを自動的に感知して表示が切り換わるのもこのセンサーの働きであり、ゲーム機のコントローラを振ることで操作できるようになったのも、このセンサーが小型化し、大量生産・低価格化が実現したからだ。

6軸モーションレコーダーの開発

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 マイクロストーンが手がけるのは、加速度センサー・回転を測るジャイロセンサーなどのモーションセンサーの開発とそれを利用した製品づくりである。自動車分野では、前後・左右・上下の3方向に対する速度の変化と回転動作を感知する6軸モーションレコーダーを開発。また、自動車の安全性を試す衝突実験時に使用されるジャイロセンサーは、実験用自動車や社内のダミー人形に搭載され、どのくらいの衝撃にたえられるのか、どの部分が一番衝撃を強く受けるのかなど、具体的なデータを記録する装置だ。実験データは、自動車の安全性の向上に役立てられている。このセンサーは国内ばかりではなく、海外の自動車メーカーにも採用された。

 また、地面の硬さを計測できる落下衝撃測定器は、公園で遊ぶ子供たちが高い遊具から落ちて大怪我をしないようにあらかじめ硬さを計測したいというニーズに応えた製品だ。

 モーションセンサーの需要は今後ますます高まるといわれているが、特にマイクロストーンが力を入れているのは、医療分野での応用だ。

目指すは質の高い日常生活

センサーは手段-人の動きを数値化する

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 「モーションセンサーは、リハビリテーションや生活習慣病の予防にもっと活用できる。」と製品開発に取り組む白鳥社長は、自社開発の腕時計型の高機能運動記録装置(商品名ViM)を右腕につけている。家族や自分の入院経験から、白鳥社長は「病院はすごく進んでいると思っていたが、リハビリテーションの期間中、摂取カロリーについての指導はあっても、消費カロリーについて何も指示がなかった。どの程度の運動が必要かも、教えてもらえなかった。」という。そんな思いが、このViMの開発の原動力でもあった。

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 「人の動きを調べると言ってビデオにとるでしょ、あれだけではナンセンスです。人の動きを捉えるためには、センサーで動きを数値化して、客観的な数字のデータを取ることが必要です。」このViMは、マイクロストーン製のモーションセンサーを内蔵し、人の腕の動きから行動パターンを「激しいスポーツ」とか「わずかな動き」など10パターンに分類し、15分間毎の運動の割合を時系列で記録する。そして、それぞれの動きのパターンから消費カロリーや歩数を算出、表示する。データは、パソコンに送り専用ソフトウェアで確認することもできる。まさに、一日の動きを数値化「見える化」する装置といえる。データは、リハビリテーションや、自分の健康維持のために適切な運動量や必要な摂取カロリーの算出に使われる。白鳥社長の「動き」の数値も、その基礎データとなる。

 白鳥社長が目指すのは、センサーを使ってより質の高い生活を提供すること、センサーはそのための手段でしかない。

ハードも、ソフトウェアも

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 もう一つ、このViMには大きな特徴がある。それは、ViMが「センサー」だけではないということだ。センサーだけでは、工学部の研究者は活用できても、医療現場で使いこなすことはむずかしい。「記録装置が欲しい」「リアルタイムでデータを確認したい」「無線でパソコンに飛ばせないか」「分析ソフトは?」センサーを使うためにはその周辺の技術の開発が必要だった。「センサー」というハードウェアの販売だけではなく、それを生かすソフトウェアも、開発・提供し、販売も手がける。いわば企業としての「総合力」が必要だ。装置単品だけではない大きな売上も、もちろん期待できる。

 また、運動軌跡の解析や、「動き」そのものをデジタルデータ化する装置の開発も行われている。実際に、ひざの動きを検知し、高齢者が歩けなくなる前に歩行指導を行うなど、医療現場での活用も始まっている。

面白いものをつくりたい。

光るウチワ

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 本社工場1階では、厚いビニールのカーテンで仕切った奥で、センサーの開発や研究が行われていた。センサーの評価装置、半導体製造装置も並ぶ。他社で断られた装置の開発のために、ここを訪れる担当者も少なくないという。それは、センサーを応用したこれまでにない製品を提供するいわば新しい市場を創りだす仕事でもある。

 2階では、マイクロストーンのもう一つの柱であるLEDと単4電池を搭載した柄や扇の部分が発光する「光るウチワ」の生産が行われていた。

 2004年のアテネオリンピックの閉会式で日本選手団が手に持って入場したり、2005年3月、長野県で開催されたスペシャルオリンピックスの会場でも2万本以上が使用された。近年は、大手音楽会社がイベント公式グッズとして採用している。キャンペーンやイベント、コンサートやライブ会場でも使われ、年間10万~15万本販売している。異業種交流で、ヒントを得て試作、特許も取得、今では売上の大きな柱となっている。

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人と物と情報が集まって

 白鳥社長は「限界を作るのは自分。面白いことをやりたい。」と語る。10年前、独立を決めてから創業までのわずかな時間に、定款を決め、会社設立に必要な書類も自分で書いたというが、出資金を募り、建物や生産設備の準備する段階では、行政や大学、各種研究機関の応援があったからこそここまできたと、振り返る。「経営」についても、地元の経営者から直接指導を受けたという。補助金や研究に関する情報も含め、「産学官」の力がマイクロストーンに結集したともいえる。社員のひとりひとりは、研究開発部員であり、自社製品の販売を担当する営業部員でもある。

 動きを検知するというセンサーという装置を使って、世界中の人にサービスを提供したい。68億の人に使ってもらえる商品を開発し、ひとりひとりの「感動ある人生」に貢献したい。白鳥社長の夢は大きく広がる。

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【取材日:2010年6月23日】

企業データ

マイクロストーン株式会社
長野県佐久市新子田1934 TEL:0267-66-0388
http://www.microstone.co.jp/