[サイプラススペシャル]103 東京スカイツリーのエレベーターの鋼板も供給 鋼板のデパート・鋼板のコンビニ

長野県茅野市

古賀オール

 「今話題の東京スカイツリーに設置されるエレベーターや階段等はウチが納めさせていただいた鋼板(こうはん)(=鉄の板)で造られた製品も使用されています。自動車、エアコン等の家電、住宅等いろいろの業界に弊社の鋼板が使用され、我社は鋼板のデパートみたいなものです。」重厚な鉄のイメージを、明るく語る古畑勝茂氏58才。全国に5つの拠点を持つ鋼板専門商社で加工メーカーでもある古賀オール株式会社の2代目社長である。社長の出身地の長野県にある甲信越支店・工場・流通センターを取材した。

今も昔も「鉄は基幹産業」

広い分野で暮らしとかかわる鉄

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 一口に"鉄"といっても、冷蔵庫・洗濯機などの家電製品や乗用車・新幹線車両など、日々の暮らしと直接かかわるものばかりでない。それらを作り出す産業用機械や、船舶・航空機、農業用機械や建築資材に至るまで、歴史を紐解くまでもなく、今も昔も私たちの暮らしを支えているのが"鉄"である。
 この鉄の板、鋼板と呼ばれる原材料を様々な産業分野に供給してきたのが古賀オール、1951年古賀鋼材商店としてスタートして60年、どの企業グループにも属さない鋼板の独立系専門商社として、さらには加工メーカーとしても発展してきた。

鉄の商社と加工センター

 鉄鋼は、一般的に高炉を持って鉄鉱石から鉄鋼を製造する製鉄会社と鉄鋼を使う産業界の間に商社や特約店などを介して流通する。この商社を「一次指定商社」という。使う側の規模や必要量に応じて「一次指定商社」が、製鉄会社から鉄鋼を購入、さらにその材料は加工センターで加工され、場合によっては2次3次の取扱店を通じて自動車や家電等の顧客へと渡る仕組みだ。通常は大手総合商社がこの流通をコントロールしている。
 古賀オールは、長年の取引で実績と信頼を重ねた結果、直接製鉄会社から鉄鋼を購入できる「一次指定商社」として認定されている。また、鉄鋼を加工するための工場設備も社内に整備している。一次指定商社と加工メーカーの2つの顔を持ち、流通から加工・供給まで、独自のポジションで製鉄会社と顧客=産業界を結びつける。品質、価格、納期など産業界のニーズを直接汲み上げ、製鉄会社に要望できる、それが古賀オール株式会社である。

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日本製はナンバーワン、しかしニーズがあれば

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 「鉄の宿命は錆びる事です。メッキ(メッキ鋼板)、塗装(塗装鋼板)等で防錆し、薄くすれば強度が落ちてしまうので、薄くても強度のある鋼板(抗張力鋼板)で対応します。そういう意味で日本の鉄はオンリーワン・ナンバーワンの技術をもっています。」第一線でものづくりの現場とかかわっている古畑社長だからこその言葉だ。

 しかし、鋼板は鉄鉱石から作られるものばかりではない。鉄スクラップを原料として電気炉で作られる鋼材や、輸入品もある。古賀オールもお客様のニーズにより、これらを購入し、社内で加工し、提供している。お客様の規模や業態に関係なく、ニーズと向かい合って鋼板を提供するという姿勢、信頼の原点がここにある。

鉄を「しごく」?!

これが鋼板の材料

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 鉄のイメージは「固い」「重い」。工場の入り口には、ロール状に丸まった鉄のかたまり(コイルと呼ぶ)が並ぶ。「これが鋼板の材料です。」

 ここ甲信越工場には、毎朝専用トレーラーで7~8台、最低でも毎日200tの鉄のかたまりが運び込まれる。諏訪インターから5分という地の利が生きる。そして、注文どおりの鋼板に加工され、お客様の工場に運び出されていく。
 「高炉メーカーでコイル状に巻かれ、工場に運び込まれた時には強い巻きグセがついています。しごくのが仕事です。」
 レベラーと呼ばれる、コイル状の鉄のかたまりを伸ばし平らにし、カットする大きな作業ラインに沿って歩きながら説明する古畑社長。「しごく」といっても材料は鉄、天井からは3 0トンはあるという大きなクレーンが下がる工場だ。とにかく広い。「広さですか?考えたこともなくて・・・。」
 「鉄は市況品でね、リーマンショックからすでに8割は回復してきましたよ。」クレーンの移動を知らせるサイレンの音は休むことなく響く。レベラーと鉄のかたまりの間に見え隠れする白いヘルメット、工場内には緊張感がひろがっている。

平らな鋼板をつくる

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 「平らでひずみのない鋼板をつくる高い技術」これが古賀オールの技術だ。コイル状の原料にある「巻きグセ」は顧客で生産される製品の加工の精度にも影響する。この巻きぐせはレベラーラインで鉄の板が大きなロールの間を通し、矯正する。いくつものローラーで上下からかける圧力が矯正のカギだ。上下の圧力は微妙に調整され均等ではない。更にラインの先でロータリーシャーと呼ばれるカッターで鉄の板をカットしていく。鉄の厚さによってクリアランスはかえるが、どんな厚さでもバリと呼ばれる切断面のギザギザは全くない。きれいに重ねられた板はカウントされ、梱包作業に進む。自動ラインだが、ポイントの箇所には常に人の眼が光る。
 カットは縦に裂く場合もあるそうだが、品質、公差、ロットなどの要望は複雑化する一方で、それぞれに早く、的確に対応するためには機械の調整やオペレーターの技術が必要、一朝一夕ではない人材育成が実効をあげている。

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進化よりも深化を

5年分の「ミルシート」

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 「鉄といっても材料です。今やお客さんが選ぶ時代。どこから買うか・素材・品質等、お客さんのニーズをキャッチして提案しなければなりません。」古畑社長は語る。ここ茅野の甲信越支店・工場・流通センターでは、周囲7県の地元の鋼材屋さんとも提携しながらの、加工を行う。顧客の幅は広いが、「お客様の顔も見えて、取引の密度も深まります。」
 古賀オールが扱う鋼板はすべて「ミルシート」(検査証明書)という鋼材の材質を証明する証明書がついている。それには、製造メーカー・発行日・製鋼№・寸法・質量・試験値等々が記入されている。これをデータベース化して管理し、取引先からの問い合わせがあればスムーズに報告できる。
 取引先からは、古賀オールだけは5年分を提出できたと信頼を頂いた。"お客様との密度"がさらに深まる事例だ。

大事な思いは「調和」

 「調和」は、古畑社長が大切にしている言葉だが、お客様との関係だけではない。「いい会社の条件はいい社員づくり、いい社員がそろっていることです。」工場の設備は常に先行投資を心がけるという古畑社長は、300名を超える社員教育への投資も惜しまない。ボトムアップには「モノを考える社員」が必要とコンサルティング会社に依頼して、積極的に研修を行っている。この研修で社員のモチベーションや組織力が格段にアップしたという。「気づき上手は仕事上手、社員に気づかされることは多くあります。それから、独立系専門商社といっても孤立ではありません。お客様の信頼に支えられているので。」
 古畑社長は「信頼」という言葉も好きに違いない。

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【取材日:2010年11月15日】

企業データ

古賀オール株式会社 甲信越支店・工場・流通センター 長野県茅野市宮川1388-2 TEL:0266-73-1331
http://www.koga-all.co.jp/