[サイプラススペシャル]125 目指すは地域に密着した自立型のものづくり バッテリー充電器の総合メーカー

長野県長野市

アルプス計器

長野市の西の玄関口信州新町、北アルプスの山々を背景に緑豊かな自然が広がる。国道19号線を走ると、町の中心を流れる犀川をはさんで「アルプス計器」の文字が見えてくる。「この信州新町で地域に密着した自立型企業を目指します。小さな企業でも、超ニッチな市場で製品を造っていけば、100パーセント国内生産を維持できます。」語るのはバッテリー充電器の総合メーカーアルプス計器社長の黒岩孝喜氏62才。温厚な表情の中にものづくりへの熱い思いがこもる。

バッテリー充電器は縁の下の力持ち

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自動車やバイクに乗ろうとしたときにバッテリーが切れていてあわてた経験を持つ人も多いだろう。だがバッテリーが使われているのは自動車だけでない。「携帯電話など移動して使うものには必ずバッテリーが使われています。バッテリーを消費すると充電が必要。だから、充電器は、バッテリーを支える縁の下の力持ちなんです。」黒岩社長の説明はわかりやすい。

バッテリーは生き物

モバイル・コードレスなど、日々の生活の中でも、動きながら、電源の位置を意識しないで電気を使う機会は非常に多い。使う機械の大きさも使う場面も様々だが、そこにはバッテリーが存在する。今注目される電気自動車も太陽光発電の蓄電システムもバッテリーなしには機能しない。そのバッテリーを黒岩社長は「おなかも減るし、病気にもなる、年も取る、われわれ人間と同じ生き物」と語る。

バッテリーは使っていても使用しない状態でも放電し、充電量は減少し、劣化していく性質がある。しかし、充電量が減ったからといって破棄する安価な部品ではないし、鉛、硫酸を始め色々な化学物質が使われて化学反応するために扱い方や充電の方法を間違えれば、危険も生じる。バッテリーには効率よく安全性に配慮した充電システムが必要なのだ。バッテリーにエネルギーを補充して繰り返して使うことは、おなかが減ったり病気になった生き物の元気をどのように回復させるかということと同じなのだそうだ。まずはバッテリーの特性を知ること、バッテリー充電器の総合メーカーアルプス計器の製品造りの基礎はここにある。

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バッテリーに優しい充電器

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アルプス計器の充電器を始めとするバッテリー関連の主力製品の8割はOEMというが、自社ブランド「AUTOCRAFT」の製品も評価は高い。新品の時はわからないが、充電器の違いはバッテリーそのものの寿命の差になってあらわれるそうだ。「その違いがアルプス計器の隠し味です。バッテリーに優しい充電器なんです。」海外製品を含めたライバル社との違いを隠し味と語る黒岩社長、表情が思わず緩んだ。

アルプス計器の充電器を使うとバッテリーの機能や性能が2年たっても3年たっても落ちない。バッテリーそのものへのクレームも非常に少なく「我が社のバッテリーの充電器はアルプス計器のものを使用すること」そんな指定がバッテリーメーカーから出るほどだという。黒岩社長は、30年間の試行錯誤が「バッテリーに優しい充電器」を作り出したと自信を見せる。

スタートは工業用のパネルメーカー

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アルプス計器の創業は1965年、先代が工業用パネルメーカーの下請けとして起業した。その後、社名を「アルプス計器」に変更、計器という名前の通り工業用測定器・自動車用測定器の生産で自立した。主にアメリカやヨーロッパに向けたタコメーターや自動車エンジンテスターを造り、輸出中心に業績を拡大してきた。しかし、1985年のプラザ合意で円高が進むと業績は悪化、転換を迫られた。そのときにアメリカでアルプス計器の製品=技術力を知って、充電器の設計・製造を依頼してきたのが、国内の大手バッテリーメーカーだった。これが1982年のこと、充電器メーカーとしての第一歩を歩みだす。


社員ひとりひとりの感性で組み立てる AUTO CRAFT製品

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自動車用・建設機械用・農業機械用・船舶用とバッテリーの用途は広い。しかし、バッテリーの用途や種類が増えればそれだけ対応する充電器も必要になり、アルプス計器の充電器も今や300種類を越える。部品は協力会社から供給され、工場内は組み立てを中心とした作業だが、一日に何種類もの充電器を製造するまさに少量多品種の生産現場だ。部品の数も非常に多く、黒岩社長は「バッテリーという生き物にエネルギーを補充する充電器は社員の指先の感性で作り上げる製品」と表現する。

まずは社会人として通用する人材を育てる

市場のニーズに合った機能を持つ製品を必要な数だけつくるために「一番大事にしているのは社員です。多少無理をしても毎年新卒を採用して、まず社会人として自立する人材を育てています」。製品の品質を左右するのは、製品を作る「人」。図面に表せないノウハウも多い。「技術の継承も人の能力です。アルプス計器だけでなく、他社でも通用する人材を育て、地域に貢献する、地元に密着した自立型企業になることを目指しています」信州新町での40年以上の歴史を感じる言葉だ。

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バッテリーを使用しない期間でも100%の充電ができる

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「この充電器は、バッテリーを使用しない期間でも、バッテリーを劣化させません。そして使いたいときにはすぐに使える100%の充電を維持します。」自社ブランド「AUTOCRAFT」の中でも評価が高い「トリクル充電器」は注目の製品だ。バッテリーの電圧を監視していて充電量を調整する機能を持つ。充電を継続しても電圧をかけすぎてバッテリーの劣化を招くこともない。
消防車輌等の緊急車輌や、医療福祉分野での使用拡大が見込まれる。

ニッチな市場でナンバーワン・オンリーワン

「携帯電話のバッテリーのような大きな市場は当社の力では無理ですが、逆に小さな市場では力を発揮します」たとえば二輪車の充電器では国内シェアはナンバーワン、またガソリンスタンドで、給油時のバッテリーの点検に使用されるテスターは全国の6割から7割はアルプス計器の製品だ。

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バックアップ電源やエンジンスターター等のバッテリー周辺機器の製品開発にも力を入れている。バッテリーにベストマッチした充電制御システムの構築を目指す製品群は市場から必要とされるに違いない。ニッチな市場で一つ一つの需要は多くはないが、分野分野のトップシェアを確保して、実績を積み重ねるアルプス計器の戦略が見えてくる。

「リーマンショックの時でも充電器の市場は影響をほとんど受けませんでした。どんどん広がる需要の中で、市場を見つけられるかどうか、会社の今後は我々の努力次第です。」力強い言葉で黒岩社長は締めくくった。

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【取材日:2011年6月6日】

企業データ

アルプス計器 長野市信州新町大字竹房285 TEL:026-262-2111
http://www.alpskeiki.co.jp/