[コラム]ものづくりの視点

vol.42要素価格均等化の法則・・・土地を輸入する ??
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

技術力で格差をつける

 近年、フリータや派遣社員等に係る雇用や賃金のあり方について、大変大きな社会問題になっています。私の若い時は、年々賃金が上がり、かつ雇用の機会もありました。このような経験からみると、大変な時代になったと深く憂慮いたします。

 この原因の一つには、企業にとって日本の高い人件費と高い土地では、コストが高くなりすぎて海外企業との競争に勝てなくなり、国内での立地が困難になってきていることが挙げられます。企業は、安い人件費や安い土地等を求め、中国や東南アジア等へ海外移転をすることになります。

 このようなことを、人や土地が"貿易財化している"・・と言います。土地を輸入する・・???とでも言いましょうか。
 また、人件費や地価などのことを"経営の要素価格"と言い、人件費や地価の高い場所から、低い所に企業等が移転することにより 高いところは安く、安いところは高くなり、自然に均衡が取れていく・・・このようなことを"要素価格均等化の法則"と呼んでいます。

 近年は、これら要因に加え、インターネットの普及によって企業経営に係る世界中の情報が、瞬時に取り寄せられる時代となりました。企業の情報が、県内のみならず国内外と比較される厳しい環境となっています。
 また、商売上の商習慣や各種制度、税制、為替なども今までのローカルルールでは戦えず、諸外国と比較され、より有利な国に企業が移転する要因になっています。

 このように企業の移転や立地は、人件費や地価のみで決まるのではなく、他のいろいろな要素も加わって決まっていきます。しかし、県内に多くみられるコストに占める人件費の割合の大きな企業は、厳しい環境下におかれることとなり従業員の賃金を容易に上げられなくなってきています。

 このような状況の中で、企業の生きのこる道の一つが、高い技術力により格段に他企業との格差をつけて、高い人件費を支払える企業を目指すことと言えましょう。
 長野県テクノ財団は、技術力向上の面で徹底的に支援していきたいと思います。

【掲載日:2009年12月11日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。 http://www.tech.or.jp/

vol.41東京理科大学との連携協定
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

深まる技術交流、関係する先生方70名余

 

 先日、東京理科大学において、長野県テクノ財団のコーディネータ 10数名と大学のコーディネータ10数名の方々との連携会議を開催しました。各コーディネータの実績や得意分野をそれぞれ紹介し、大学の研究成果を県内企業へ、企業の求める技術情報を大学へと、その仲立ちをお願いしました。県内企業のビネスチャンスにつなげる為に、産学の技術交流を一層活発にすることを狙いに開催したものです。

 当財団では、県内のみならず、県外の大学の先生方に、県内企業との共同研究開発や各種研究会等の講師などを多数お願いしています。
 中でも東京理科大学には、大型の産学官連携プロジェクトの知的クラスター創成事業に信州大学とともに研究機関として参加していただき、数多くの成果が生まれています。当財団事業に関係する先生方は、県内企業との共同研究開発等を含めると約70名余にのぼっています。

 実は、私は7年ほど前に当財団に勤務していましたが、その折、東京理科大学と事業の打ち合わせをするうちに、その積極的な姿勢に感銘を受け、当財団との間で「連携協定」が結べないかと考えました。このような協定は、当時はまだ全国的にもあまり聞いたことがありませんでしたが、大学にお話すると新しい試みにも係わらず大変積極的で、話がトントン拍子に進み締結に至りました。
 私は、その後異動し、再度当財団に着任しますと、大規模な連携が予想を超えて進んでおり大変驚きました。

 今後も有力な大学との連携を一層密にして、県内企業との共同研究開発やビジネスチャンスにつなげていきたいと考えています。

【掲載日:2009年11月30日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。 http://www.tech.or.jp/

vol.40成果を生む甲信越静広域交流
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

交流がイノベーションを生む

 先日「甲信越静広域交流事業」が、上田市で40名余の参加を得て開催されました。山梨県、長野県、新潟県、静岡県の4県の当財団と同様な企業の技術開発等を支援する機関が共同主催団体となり、各県の持ち回りで開催しています。
 それぞれの県で、この集いに参加を希望する企業を募り、会員として組織しています。会員企業の技術的強みや市場などを互いに発表し合い、シーズ、ニーズのマッチングをし、共同研究開発等に結び付けようとするものです。

 今回の交流では、会員から共同開発した機器が販売された事例や、仕事面での受発注事例など多数の成果が発表されました。その中で「県内企業については、財団などの仲介でほとんど把握できているが、県外に目を向けると、知らない企業が多数あり、技術も多様で驚く。使える技術がある・・・」等の感想が多くの会員から出されました。回数を重ねてきて、人的交流も活発に行われ、会員間の人間関係も重層的に築かれてきているのが印象的でした。

 長野県テクノ財団では、ハイテク分野をテーマとする各種技術開発研究会等を約60テーマほど開催していますが、これらの会員はほとんどすべて県内の企業で占められています。しかしこの交流事業は、県外企業との交流を狙いとしている点で、極めて数少ない特色ある事業となっています。

 実は、私は、6年ほど前に当財団に勤務していた時、新潟県で当財団と同様な事業をしている「にいがた産業創造機構」と各種事業の相談などをしているうちに、お互いが他県の企業や保有する技術のことをほとんど知らないことに気づきました。そこで企業間の相互交流をしたら役立つのではないかと考え、「信越ハイテクコリドウ(回廊)」と名付けた企業交流事業を提案しました。
 私はそのあと異動してしまいましたが、久し振りに当財団に着任してみると、共同主催団体が2県から4県に広がり、かつ大変活発な事業に発展しており驚いた次第です。

 "交流がイノベーション(革新)を生む"とよく言われますが、当財団としてもさらに近県に呼びかけて、多様な交流事業を開催し、県内企業の技術力の向上やビジネスチャンスの拡大につなげていきたいと思います。

【掲載日:2009年11月13日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。
http://www.tech.or.jp/